太秦からの映画便り

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「破損した脳、感じる心―高次脳機能障害のリハビリ家族学」で思うこと

「破損した脳、感じる心―高次脳機能障害のリハビリ家族学」で思うこと  
 ―色々な方からの反応―

 自著が出て少し時間が経った。色々な方が感想をメールしてくださる。まだ情報が行き渡らず、今この本が届いているのは、主に知り合いだ。介護の当事者からも届いたけれど、「介護記」としてより、今のところは、エッセイとして読んで感想を下さった方が多い。なぜか、女性よりも男性から「泣いた」と言われる。それも介護には関係ない人ばかり。電話で「感動したよ!」と言いながら、私との話の途中で感極まって又泣き出した男友達は、何に泣いてくれたのだろう。繰り返し、「二人に会いに京都へ行くよ。応援するぞ!」と言ってくれた。
 鴨川で、毎夕定点観察で雲を映し続けるK先生は、リハビリの夫と時々雲見に参加して知り合ったという関係で、事故があったからこそ出会えた方だ。一年の半分は関東で過ごされるが、秋に入った軽井沢から軽やかな声で「いやあ、感動した! 二人の静謐な精神を感じる。それがすばらしい」と感想を伝えてくださった。
 そういう電話での激励も多いけれど、とりあえずは匿名で一部のメールを記してみたい。著者に向けての感想なので、ちょっと甘口のものばかりなのはご容赦を!なお、私のアップ記事にコメントをくださった分は、重複するのでここでは取り上げません。


<友人の編集者>
 今度の土・日にゆっくり読もうと思っていたのに、ちょっと時間の空いたときにぱらぱらページをめくると、とまらなくなり、結局、土・日まで待てず読んでしまいました。
良い本です。
役に立ちます。
感動と、勇気を与えてくれます。
何より、あなたと犬塚さんの、プライドと美意識の高さ、それが「生」の源泉になっていることの証明・・・(これは、これまでのこうした本・・・医療の当事者の体験に基づいた本・・・には、欠けていた視点ではないでしょうか?)が、素晴らしいと思います。
ちょうど、昨日のこと、テレビで、なかにし礼さんががん闘病に際し、「病気になったとたんに、人は個人ではなく「患者」という名の病気を治すための存在になってしまう、それではいけない、自分で考え、自分らしく病気に向かわねば」というようなことを話され、自分自身の未熟(?)だった入院体験と引き合わせて感動しました。あなたたちの体験は、まさに「自分」と向かい合った記録で、ある意味情熱的な恋愛小説のようにも感じました。
改めて、犬塚さん、ご快復、おめでとうございます!
芳美さん、よく頑張ったね!


<仏文学に精通した友人>
 すぐ一気に読ませていただきました。リハビリ内容だけでなく犬塚さん夫婦の2年間の日記ふうで、脳の不思議さをあらためて強く考えました。脳の学者本より当然はるかにリアルでこれこそ映画的!!
 あらためて犬塚さんの愛情力&生命力&観察力&文章力などに唖然!!
ワンさんのあとがきもとてもいいですよね~。
普通なら苦悩の介護紀になってしまいがちですが、客観的な本に出来上がってて驚きです。
表紙のイラストもユーモアセンスありで、もしかしたらもしかしたら話題のベストセラー本になるのではと??これからもさらなる二人三脚への道のりを歩まれてください。
 私は実は犬塚さんの夫婦像にさらに自分の過ちを気付かされましたが、これは哀しきかな手遅れ状態です。


<献本した脳神経学の権威、Y先生>
 あなたのご主人に対する愛情があふれかえっている書物で、感銘を受けました。
同病の方々やご家族にも希望を与えるご本だと思います。ますますのご回復を、心より願っております。


<学生時代の友人>
 本当に大変でしたね、知らなかったとは言え力になれず御免なさい。こんなことで芳美ちゃんの友達だって言えるんだろうかと自己嫌悪。本はとても読みやすいです。今日中に読み切ってしまいます。


<大人になっての同年の友人>
 やっと読了しました。老化現象で、白内障になり始めていると言われてます。
のっけから自分の事を書きましたが、それには訳があります。というのは、痛みだとかその閉塞感だとかに、とても弱くて、つい、自分の事のように感情移入して、夫さんの事故については、『何が起こったのだ!』という思いが伝播してしまってなかなか、辛かったのが正直な感想でした。

 ゆっくり読みながら、もし、私の夫に起きた事なら、私がまず、発狂寸前か、心中か…を考えたと思います。でも、またそれも、そう簡単に出来るものではありませんし、人は目の前の起きたことについては、何とか治したい!そのためなら、何でもやり尽くそうとするのは、人間本来の持っている本能なのかもしれませんね。

 やはり、生き抜く事しか選択肢はなかったかもしれませんねぇ。けれど、芳美さんのようにアーティスト的な発想で何もかも『!』が出来る状態はなかったかもしれませんけれど。そして、パワフル!よくぞ、あなたが倒れなかった事!
さすがです。創造者たらんとする日常の積み重ねが功を奏したゆえんだと思います。すべてにおいて思いもつかない発想は凡庸な私には考えも及ばない事。

 あなたが本当の主治医ですね。患者が主人公!その患者の側に寄り添いその観点から発想したリハビリや言語獲得は、ただ、お勉強してマニュアル化された教科書を覚えているかどうかの問題ではないと思うのです。
 日常の夫さんを信じ、彼の感性を尊敬していたあなたからこそ、やり遂げたものです。
専門バカというドクターが多い中で、ある一点しか見えないドクターより、何もかも知り尽くした総合的に観て暮らしていた夫婦だからこその二人三脚だったように思います。
 起ちあがれ!と言えども本人がその気にならないとどんなに背中を押しても動かない人もあると思うのですが、同級生に会わせたあなたの一つの行動から、この奇跡は誕生したのでしょう!
奇跡は起こるのではなく、起こすものだと、福島での時にどなたかが言ってたのを思い出しました。


<全国紙、文化部記者さん>
 イヤー、何とこの感動を表現したらいいのでしょう。 たおやかでチャーミングな印象の犬塚さんのどこに、 ご主人の回復に向けた、体育会系も真っ青のバイタリティーが隠されていたのか!
素晴らしいです。
 高次脳機能障害という病を得た場合、家族としてどういう風に患者に接していけばよいのか、 多くの方にとって、非常に参考になるご著書と存じます。


<最近知り合った、とある会でお世話になっている言語療法士さん> 
 読んでしまうつもりはなかったのに、読んでしまいました。直後に思ったのは、とても勝手な感想で申しわけないのですが、「犬塚さんのリハビリの担当者をさせてもらいたかったな~」です。多分これだけ奥さんがご主人のことをわかった上で、がんばっているので、担当者は相当なプレッシャーだと思います。だからこそ、一緒に伴奏してリハビリ街道を走り抜けた後の景色をみたかったな~。セラピストにとっても、おそらく今までみたことのない景色に出会えたことだろうと思います。 患者さんにとっては、どんな医療者にあたるかで、随分身体的にも心理的にも変わるだろうと思います。一方で、医療者にとっても、自分の医療者としての総合力みたいなものは、どんな患者さんや家族に出会うかでも随分変わってくるように思います。
 おそらく、犬塚ご夫婦の場合、どこかの医療者の考え方を大きく変えたと思いますよ。
 本を読ませてもらって、色々思い出したり、感じたりしたのですが、脳損傷をおこしたその場所は再生しないと言われていますが、脳には使っていない場所がかなりたくさんあるようです。失った場所の働きを違う形で補うネットワークができたり、今まで眠っていた特殊な才能が大きく開花したりと、可塑性と可能性を秘めた臓器だそうです。左脳損傷を起こした数学者が、右脳が活性化したことで、今まで味わったことのない宇宙や自然との一体感を感じられるようになり、満ち足りているという内容のTV番組もありました。
 発症2ヶ月での犬塚さんの俳句を読んで、犬塚さんの脳の可塑性・可能性を確信しました。


<本業のお客様でもある方>
一晩で引き込まれてしまいました。
犬塚さんをリハビリに駆り立て、愛情もって介護させてしまう旦那様は愛すべき佳きパートナーなのですね。悲壮感より楽しく刺激的な生活を送ることを私も心がけたいと思います


 まずは、こういうメールをご紹介しました。余談だけれど、この情報化時代、情報を必要としている人に、届けたい情報を届ける難しさを実感している。実は私が一番届けたい、私たちとは無縁の医療従事者からのリアクションはまだありません。さりげなく忍び込ませた、脳の神秘を探る旅の道しるべ。そこへのプロの考察を期待しているのだけれど、今のところは誰もそこに触れてくれない。 
 何時だか映画宣伝の人が、あふれるほど情報があるからこそ、無意識で多くの情報をスルーする習慣を身に付けた世間に情報を渡そうと思ったら、あらゆるツールであふれるほど情報を流さないと届かないと嘆いていたのを思い出した。
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「破損した脳、感じる心―高次脳機能障害のリハビリ家族学」メディア情報

「破損した脳、感じる心―高次脳機能障害のリハビリ家族学」メディア情報 
 ―大阪日日新聞 9月24日“潮騒”より―

 9月24日、大阪日日新聞の“潮騒”で、「破損した脳、感じる心―高次脳機能障害のリハビリ家族学」が取り上げられました。以下に転記します。

試写室や映画の取材でよく一緒になることがあるデザイナーの犬塚芳美さんが、このほど「破損した脳、感じる心 高次脳機能障害のリハビリ家族学」(亜紀書房、1600円+税)を出版した。酔って後頭部を強打し生死の境をさまよった夫の介護記である。

◆京都の映画人である夫君が、2年前に九死に一生を得て、壮絶なリハビリから退院し、自宅に戻るまでを妻の立場から「祈る」思いで綴った記録。医師、看護師や親戚、友人らの支援もあるが、唯一無二の存在とはこのことだろう。

◆一般に脳疾患の病気は怖いと言われるが、いつどこで躓いて転び、そうなるか分からない。それはまさかの「坂」であったと筆者も述懐し、時計の針をそれ以前に戻したいとつぶやく言葉は痛切である。

◆しかし彼女の絶望は一時的なもので、ほとんど前向きで自己流リハビリ術を駆使して、患者の心の回復を促進していく。特に俳句作りや塗り絵、散歩で思い出の場所を巡り、落語、ライブ、映画鑑賞などと大胆。「夫の正常性を疑わなかった」
◆臨死体験を経て「拉致されていたような気がする」と患者が事故から2年たって述懐。「身体が動かず、右も左もわからなかったが、ただ自分は無邪気に治ると思っていた」と当事者がつづった文章が穂っこ利している。夫君の生命力も感動的である。

(2012年9月24日 大阪日日新聞 “潮騒”より転記)

映写室 お知らせとお詫び

映写室 お知らせとお詫び
  ―長い間お休みいたしました― 

 去年の6月より個人的な事情で映写室の更新を休みました。長い休載の間、途中のフォローも無く、申し訳ありません。混乱は回復しつつあるものの、トラウマで日常生活への恐怖が残り、このページを開けなかったのです(!)。目下、色々な意味でリハビリ中。まだ今までのペースで更新するのは難しいのですが、少しずつ、以前のように、ぜひ見て欲しい作品を取り上げたいと思います。どうぞよろしく。(犬塚芳美)

夏の京都で、映画館と映画談議!

夏の京都で、映画館と映画談議!  
             
 祇園祭も真近、暑い夏の始まりです。
でも、(こんな時期こそ映画館!)という貴方、京都で映画談議しませんか。
 お話頂くのは、京都新聞でマキノ省三物語「オイッチニーのサン」を連載され、「京都 魅惑の町名―由来と謎をたずね歩く」という近著もある、映画通で有名な高野澄先生。そして今や生き字引のような存在、京都の映画産業の全盛期に、千本通を中心に映画館の看板絵を描き続けた竹尾昌典さん。そんな歴史の詰まった街に触発されて制作中の、柴田剛監督『堀川中立売』は若い息吹です。
 サプライズゲストも有り? 映画館と映画の好きな人、サカタニに集まれ!

 
“「オイッチニーのサン」で始まりま~す ” 
プログラム: 1.竹尾昌典さんの映画館の看板絵、スライドショー
         2.ただ今編集中、映画『堀川中立売』
         3.高野澄先生に伺う映画や京都のお話

日時: 7月12日(日)4時~5時半。(無料。先着60名まで)
              その後、飛び入り歓迎の懇親会(実費)があります。
会場: 集酉楽(syu-yu-raku) サカタニ(075-561-7974) http://www.sosake.jp/
アクセスと地図: 京阪七条より徒歩東1分。市バス七条京阪駅(206/208/100楽バス)
集酉楽地図
                          
主催: “映画館に行こう!”本制作委員会(T&F 075-721-1061)

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  「CINEMA,CINEMA,CINEMA 映画館に行こう!関西映画館情報」
          会場には執筆の面々集合。お会いしましょう!
          本の異論反論オブジェクト受け付けます。

※ご予約は、この記事へのコメントの書き込み(シークレット機能付)、
    あるいは(T&F 075-721-1061)、サカタニ(T 075-561-7974)まで。

映写室 「CINEMA,CINEMA,CINEMA映画館に行こう!関西映画館情報」出版のご案内

映写室 「CINEMA,CINEMA,CINEMA映画館に行こう!関西映画館情報」出版のご案内
    ―1冊丸ごと映画館と映画賛歌の本―

 関西版の映画館の本が2月14日、バレンタインデーに発売です。義理チョコはもうかっこ悪い。本気チョコも重すぎる。こんな本をプレゼントして、さり気ないお誘いのアピールは如何でしょう。一人ぼっちの自分の新しい明日の為のプレゼントも良いかもしれません。映画館には思わぬ出会いがあります。


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 書かれているのは、1冊丸ごと映画館と映画賛歌で、関西圏全87館の映画館の、劇場側と観客側からの映画館情報の他に、地域ごとの映画館の歴史、外国(ブラジル、アメリカ、チリ、タイ・バンコク、韓国・フランス・パリ等)の映画館情報、インタビューによる成人映画館の話、プロデューサー、監督、カメラマン、俳優さんによる映画つくりのプロのお話、映画宣伝や劇場経営の事、映画村ぶらり探訪記、初めてのユニバーサル・スタジオ・ジャパンと盛りだくさん。業界の裏側ものぞければ、見る立場の思いには(私もそう!)と共感を覚えるはず。ぜひ手にとって、映画館で観る映画の楽しさを思い出してください。お買い物のついでに、あるいはちょっと遠出して隣町の映画館へと、映画館の手前で立ち止まっている皆さんの背中を押せれば嬉しいです。
「出会いは映画館で!」皆さん映画館でお会いしましょう。
                          “映画館に行こう!“本制作委員会 

本の題名  
         CINEMA,CINEMA,CINEMA 映画館に行こう! 関西映画館情報
発行日   2009年2月14日(バレンタインデー)
定価    1300円(税別)  145ページ A5版
編著者   “映画館に行こう!”本制作委員会(代表 犬塚芳美)
出版社  創風社出版(〒791-8068 愛媛県松山市みどりヶ丘9-8)
         Tel :089-953-3153   Fax:089-953-3103

 ※都市部大型書店にはありますが、今映画館や一般書店とも取り扱いを交渉中。最寄の書店にない場合は、「地方・小出版流通センター扱い」でお申し込みいただくか、直接出版社へ、あるいは“映画館に行こう!”本制作委員会(T&F  075-721-1061)まで連絡ください。送料無料でお届けいたします。

詳しい本の説明

 昔の映写機の写真を配したカバーを取ると、黒い表紙の背に銀の文字。中の紙は深紅で、これは昔懐かしい暗幕のイメージです。さあ、幕も引いた。照明が落ちて、映画の始まり始まり…。皆さんお静かに。

目次
夢見の闇、心の洞窟へ(三室 勇)
下関スカラ座 シアター・ゼロ
映画館を愛し、育ててみよう(浅野 潜)
映画館が舞台の映画紹介

映画を作る人  
  「必殺」の名カメラマン石原興さんのお話
  「北辰斜めにさすところ」を作った廣田稔弁護士のお話
  「オイチニッーのサン」で牧野省三を描いた高野澄さんのお話
  奥田瑛二の見果てぬ夢(金城静穂)
  「新撰組血風録」で土方歳三を演じた栗塚旭さんのお話
映画を見せる人
  映画館の看板絵師、竹尾昌典さんのお話
  祇園会館元テケツ係、近藤好子さんのお話
  テケツからこんにちは(オガワカンチ)
  映画館って何?(岸野令子)
  RCSの佐藤英明さんのお話
  第七藝術劇場支配人、松村厚さんのお話
  映画宣伝の松井寛子さんのお話
  「ホームレス中学生」(北野洋子)
映画を見る人
  映画館で見る夢は(横谷佳子)・私の彼氏を紹介します(花蘇芳)・映画と旅と私(佐伯七三)・
  渋谷映画館(ヒロセマリコ)・受難の座席指定(Seiko)・アラビアのロレンス(池田良則)・
  子供も一緒に映画館♪(Kimico)・MY HOME THEATERS@京都2008(長谷川里江)・
  映画館と私(落合祥堯)・深呼吸の場所(林ひろ子)・映画館通いの私の1週間(小野寛)・
  若者達の映画館(佐渡満)・映画1本千円主義(船越聡)

各国映画館事情
  ブラジル(岡村淳)・アメリカ(想田和弘)・タイ(松永実)・チリ(国司)・韓国(川瀬俊治)  
  フランス・伝説のプチ・シネマは残った(山本三春)

成人映画について
  たかがピンク映画、されどピンク映画(太田耕耘キ)
  駒田慎司さんに伺うポルノ映画館の現状
  関西成人映画上映館

関西映画館情報  
    映画のお茶の間進出~それでも映画館!~(喜多匡希)

Ⅰ大阪版  大阪市内20館、 大阪府下17館 
  “おもろい街”大阪の映画館(池田知隆)
       コラム:主役よりも脇役が好き!(寺田)、映画に対する想い(西村美希)
Ⅱ兵庫県版  東部17館、 西部9館
  神戸の映画館事情(小山康之)
       コラム:映画と写真(ケイ・イシカワ)
Ⅲ京都府版  中央9館、 兵庫・京都北部3館
  私の映画館ライフ -京都の映画館物語―(砂岸あろ)
       コラム:映画館という贅沢な空間(稲岡ヒーコ)
Ⅳ滋賀県版  滋賀県館7館
  出会いは映画館で(安田直紀)
       コラム:思い出の白蛇伝(奈千巴)
Ⅴ奈良県版 奈良県館7館
  銀幕に胸躍る 奈良旧市街の映画館事情を中心に(うだしげき)

静穂と佳子の 映画村ぶらり探訪記(金城静穂・酒谷佳子)
初めてのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(文:青木朋子 イラスト・地図:青木耕也)
映画館でもらったクッキーについて(今西富幸)
後書き(犬塚芳美)


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珍しいドキュメンタリー

映写室 「線路と娼婦とサッカーボール」上映案内
 ―中米グアテマラからのドキュメンタリー―

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 <グアテマラ・シティの線路(リネア)沿い>の貧民街の娼婦たちが、ハイヒールをスパイクに履き替え、サッカーを始める。「リネア・オールスターズ」と言うチームを作り、選手権大会の登録もした。注目されて差別等の社会問題を訴えるのだと言う。とうとう国際試合をするまでの道のりを描いて、貧しくても逞しい女性たちに元気をもらえる作品です。

 <奇想天外な話でもこれはドキュメンタリー> 中米の強い日差しと共に、差別に負けず悲惨な私生活や素顔を晒した娼婦たちの天真爛漫さと前向きな思いが、この映画の明るさだ。貧しい国の中でも彼女たちは最下層。肉体の罪を重んじるカトリックの支配する社会からは蔑まれている。コーヒーと言う特産品がありながら、大国に翻弄されて破綻した経済のせいで、男たちは軒並み失業し飲んだくれて頼りにならない。社会に絶望し鬱積してるから、時には家族にすら性的関係を求める。告白から明らかになるが、このメンバーにもそんな被害者が多いのだ。
 <そんな悪夢から逃げ出した彼女たちは>、2ドル半という安いお金で体を売るけれど、誰の力も借りずヒモなしで働いていると、自分に誇りを持っている。仕送りをしたり家族を養ったりと、この仕事で一家の大黒柱だ。貧しさに負けず、差別されることに怒り、逞しく生きる娼婦達。「リネア・オールスターズ」のメンバーは12人でも、応援団は60人もいるんだとか。彼女たちの活躍は皆の希望になっていく。

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 <サッカーなんてよく思いついたものだと呆れるけれど>、ボール一つで出来るサッカーは、貧しい国で盛んなスポーツ。とにかく逞しい。極彩色のセクシーな商売着も、やっとそろえたユニホームもはちきれそうな肉体で着る。最初はボールも蹴れないのにだんだん上手くなる頃には、こちらも観客と言うより応援団になっていた。初めてゴールした時なんて、嬉しくて映画なのを忘れて拍手しそうになる。最初の目的はもとかく、仲間と一緒にサッカーをし、厳しい現実を忘れる時間が喜びになっていく様子が伝わって来た。娼婦たちには弱い者同士一体になれる物が必要だったのかもしれない。

 <対戦相手によっては汗でエイズがうつると言われたり>、喧嘩になったりの試合観戦にも力が入るけれど、それ以上に目を奪われたのが、サポーターのマリアだ。深い皴と痩せた体が人生を物語るよう。マリアは元娼婦で、恋人の暴力で片目になった不運な過去を嘆かず、小さな幸せに感謝して生きている。それでも娼婦たちを一生懸命応援するのは、後輩に自分のような人生を送らせたくないのだろうか。そんな思いを代弁するように挿入されるヴォーカルが心に染みた。

 <さあ、サッカーで彼女たちは変れたのかどうか>、それは映画を観ていただくとして、嬉しいのが、世間がなんと言おうと娼婦の母に感謝し、誇り、澄んだ瞳で夢を話す子供たち。子供が母親の苦労と悲しみを解っているのが未来への希望だ。そんな人々の逞しさと共に、情報の少ない中米グアテマラの風景や国情がむき出しで映るのもこの作品の見所。第56回ベルリン映画祭で観客賞を受賞しています。


   関西では、2月2日(土)より第七芸術劇場、
                    シネマート心斎橋(モーニングショー)で上映
   順 次、京都シネマ、神戸アートビレッジセンターで上映予定

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