太秦からの映画便り

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映写室 「9月11日」大宮浩一監督インタビュー(後編)

映写室 「9月11日」大宮浩一監督インタビュー(後編) 
  ―介護馬鹿たちが「9月11日」、広島に集まってトークショー―

<昨日の続き>
―それに、例えば私が介護すると、年齢的に近いから、老人に近未来の自分を見て、もっと悲壮感が漂いそうだけれど、若い人たちはいい意味で老人と遠い。自分の未来だって変えられると思っているから、悲壮感が無いですよね。介護する方の明るさになっている気がしました。お年寄りにとっても幸せだけれど、介護する人たちも自分の本領を発揮できる場があって、幸せなんだろうな、生きている実感があるんだろうなと思いました。質問というより感想ですが。
大宮:ええ、ええ。まさにその通りで。お年寄りとか障害のある方だとか、ハンディキャップのある人たちだからこそ、彼らは一緒にいれるのかも知れない。彼らも一本道で来たわけではないですからね。介護者たちも居場所を見つけて、此処にいてもいいんだと思え、幸せだと思うんですよ。この震災で、日本だけでなく世界中の人が自分も何かしたいと思ったと思う。この助け合いの精神は、本来皆が持っている、ベーシックな考えだと思います。現地に行かなくても、この思うというのが大切なんだと。この作品「9月11日」の介護にたずさわっている7人だけでなく、若い人たちがベースにあるそんな気持ちを、素直に自分の言葉で表現し、行動に起こす。それが静かな革命だと思う。何かを変えることが革命ではなく、今まで気持ちの中であったことを言葉に出して、外に出したのが凄く大切。持っているからこそ出てきたものですから。

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―昔の若者は、権力に歯向かい、体制を壊すとか、攻撃的に世の中を変えようとしたけれど、今の若者はしなやかに世の中を変えようとしているのかなと、思いました。
大宮:確かに、若者たちはしなやかですね。団塊の世代と彼らの中間世代の僕らは、何も出来なかったけれど、若い人たちに隔世遺伝が起こって、決して革命という言葉からイメージされるものではないけれど、変えようとしている。今までの価値観と違ってもいいんじゃあないかと、言い出したというか。
―少し意地悪な視点で言うと、彼らは、上の世代ががむしゃらに働き、豊かになった家庭や社会の申し子でもありますが。
大宮:世代的にはそうなんだけど、彼ら自身はバブルの頃に青春を過ごしながら、バブルの時代に乗り切れなくて、鬱々としていた若者たちなんです。その時は自分の思いを口に出す術が無かったけれど、15年ほど経って、色々な意味で行動を起こしだしたと言うか。
―別の豊かさを提示してくれたと?
大宮:今と言う、豊かさとは極端に違う時代に、物質的な豊かさとは逆の豊かさを見せてくれたわけですね。もちろん物の豊かさも必要でしょうし、それが全てとは思わないけれど。

―ところで「9月11日」と言うのは?
大宮:「9月11日」は映画のタイトルで、彼らのトークライブ自体は「Love & Peace Care 2010 in ヒロシマ~介護バカの集い~」と言うものです。去年はたまたま土曜日だったのもありますが、世界の価値観を変えた9月11日というエポックメイキングな日に、原爆で大きく価値観を変えざるを得なかった広島の地で、このイベントをやりたかったのでしょう。
―タイトルは、時間が無くてプロデューサーがつけたと言うことでしたね。
大宮:時間の問題もあり直球で行こうと。
―前作では介護の現場が映っていたので、正直なところ、(ここまで無理をしなくても、貴方の青春を大事にして)と、気ままな青春を送ってきたものとしては思いましたが、今回のような姿を拝見すると、心配しなくても、彼らは彼らで自分を持っていて、それを損なわないまま、介護の現場でも楽しんでいるんだなあと気付いた。凄く嬉しかったです。
大宮:そうなんですよ。彼らは介護という現場で別の自分を出しているわけではないんです。本当言って僕も、前作の時は、(疲れないのかなあ)という疑いを抱いたけれど、一方で(こいつらは本物かもしれないな)と言う思いもあった。今回はそれを確認したかったんです。お年寄りのいないところでこいつら何を語るんだろう? 同業者同士だからごまかしは効かないだろうしと思いましたね。

―皆さん普段から交流が多そうですね。
大宮:忙しいけど、ブログ等を通して交流してるようです。
―類は類を呼ぶと言うか、同じような考え方で介護してると?
大宮:大きな志は一緒だけれど、細かい部分の考え方はそれぞれ違う。違いは介護へのこだわりと言うより生き方でしょうね。
―前作の時に、ご両親の介護もあり、僕自身の問題でもあるとおっしゃっていましたが。
大宮:ええ、今父は山形の病院に入っていて、母は高齢者用の介護付き住宅です。まあ、やっぱり若い頃からの生活圏を離れないほうがいいですね。言葉の違いだけでも高齢者には大変なことですから。介護はする方もされる方も、死生観を問われます。治療法とか、何かあると僕が決断することになるんだけれど、若い頃に家を出たままで、実は両親の心情的な事をよく知らない。果たしてそんな息子が決断していいものかどうか、躊躇があります。近所の人の方がずっとオヤジの気持ちとかを解かってくれてる気がするんですよ。血の繋がりはあるけれど、一緒に暮していない僕と両親は、今となっては、はたして家族と言えるんだろうかと、考えてしまいます。それが介護と言う現場で出てくるんだけれど。

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©Love, Peace&Care Connection

―でも今度の震災でも、血のつながり、DNAの段階の結びつきは強いなと感じましたが。
宣伝:血のつながりだけでは、何の意味も無いと自分の経験上思える。家族って、人のつながりだと考えたら、生前に如何にその人と過ごしたか、時間を共有しているかだから。血のつながりだけでは家族になれない。
―確かに。でもそれも子供側の論理で、親から見ると血のつながりだけで家族。親の側から見る家族と、子供の側から見る家族は違うかもしれませんね。
大宮・宣伝:確かにそれはそうです。いくら離れた時間が長くても、親には親の思いがありますね。今、介護ということに象徴的に出ているけれど、色々なシステムが限界に来ている。それを、介護だけとか、年金制度だけとかとって直しても駄目で、根本から全てを振り出しに戻さないといけない時期だと思う。小手先では乗り切れない。そんな時に、しなやかに静かな革命を起こしている若者たちを見て欲しかったのです。

―制作スタッフも若いですしね
大宮:ええ、若いスタッフからもらえるエネルギーは凄かったです。7人がそれぞれカメラを持って現地に集合したんだけれど、実はこのトークライブ、予想がつかない。始まってみるまで、どれだけ集まるか、どんなことを喋るのか解からなくて、ぶっつけ本番でした。でも一泊二日だもん、良いも悪いもないし行くぞという軽いノリで、若い者は楽しんでいました。色々エネルギーは貰ったけれど、それと同時に、僕の周りの映画に関わる若者たちに、お前らも介護バカを見習え、もっと映画バカになれよとも言いたい。バカというほど熱中すれば、どんな状況でも楽しみに出来るんです。(聞き手:犬塚芳美)

<「9月11日」の感想とインタビュー後記:犬塚> 
 舞台は若い介護者のトークイベントの一日。老人との日々を語る口調が何とも楽しそうで、こちらまで嬉しくなりました。こんなにも生き生きと自分の仕事を語れる人々が、他にいるでしょうか?老人を介護しながら、彼ら自身が毎日前進しているのを感じました。自分の居場所のある人たちの明るさ、人と関わることの充実感、全てが彼ら自身の自信に繋がっている気がします。しなやかな若者たちに完敗!


この作品は、4/9(土)から第七芸術劇場 にて公開
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映写室 「9月11日」大宮浩一監督インタビュー(前編)

映写室 「9月11日」大宮浩一監督インタビュー(前編)   
―介護馬鹿たちが「9月11日」、広島に集まってトークショー―

 「ただいま それぞれの居場所」の大宮浩一監督が、「Love & Peace Care 2010 in ヒロシマ~介護バカの集い~」というイベントを、そのまま映画にした。若者たちの「介護」を語る口調は、何とも楽しげ。(え、介護ってこんなに明るいの?)、(今時のこんな若者が、介護をしてるの?)と、イメージとのギャップに戸惑う。しなやかに世の中を変えているのを実感した。監督いわく静かな革命だ。閉塞的な今、ライブ感溢れる映像で、幸せな未来を予感して下さい。

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©Love, Peace&Care Connection

《その前に「9月11日」とは》
 2010年9月11日、広島に、全国から20~30代を中心にした介護職の若者たちが集まって、トークを繰り広げるという。「井戸端げんき」の伊藤さんに誘われた大宮浩一監督は、前作のスタッフと共に、それぞれカメラを持って広島に集結する。映画は撮影から3ヶ月あまりで公開(東京のケース)の運びとなった。

<トークイベントの出場者・全国のユニークな介護施設>
・藤渕安生(広島「通所介護事業所 玄玄」
 水商売、自衛官等経験後、介護サービスを立ち上げた母親の手伝いから介護業界に入る。このイベントの企画者。「玄玄」は広島郊外の住宅地の中。平屋の一軒家を利用し、定員14名で認知症の方が通ってくる。

・細川鉄平(大阪「祥の郷」)
 哲学科卒で、入浴介助のアルバイトがきっかけでこの業界に。事業指定取り消しとなった勤務施設を、利用者のために引き継ぐ。築35年の日本家屋を使ったデイサービスで、冬には自慢の庭に、沢山の野鳥が南天を食べにやってくる。

・武井桂子(広島「デイサービス榎町」)
 大卒で病院勤務中、閉鎖的な環境に疑問を抱き4年前に開所。生後数ヶ月の赤子を連れ「一番困っている人が主役」という信条を引っ下げ神出鬼没。原爆ドームから西へ1キロのハンバーガー屋さんの入ったビルの4階。定員24名。

・高橋知宏(茨城「デイサービスセンター こてっちゃん家」)
 トラック運転手、花屋店員の後、阪神淡路大震災のボランティアがきっかけで介護職に。施設介護で浮きまくり、自分自身の居場所を求めて、築30年の民家で2009年に開所。自主事業のお泊りもあり、宅老所と名乗っている。

・池内大輔(愛媛「デイサービスセンター池さん」)
 大阪で水商売等を転々とした後、地元の老健に就職。システマチックな職場に辟易して、2004年、23歳で両親と共に開所。2009年には宅老所も併設する。利用者25名。田園風景の中で家族運営。ご近所からは大量の野菜が届く。

・石井英寿(千葉「いしいさん家」) 
 大学の福祉科卒後、老健に就職。画一的な介護に疑問をもち、同僚だった妻と共に2006年住宅地の民家で開所。前作「ただいま…」に出演し、ユニークさで一躍有名に。目の前のニーズに応えていつの間にかお泊りも始まった。

・伊藤英樹(千葉「井戸端げんき」)
 大卒後、フリーター、引きこもり、福祉施設職員を繰り返す。行き詰まりを感じていた8年前に、父親の介護をきっかけに、常識にとらわれない介護の形を実践する場として開所。前作「ただいま…」に出演する宅老所界のカリスマ。


《大宮浩一監督インタビュー》
―皆さん楽しそうで元気を頂きました。大宮監督の前作「ただいま それぞれの居場所」で取り上げた介護施設の方が沢山出演していますね。
大宮浩一監督(以下敬称略):ええ。元々僕がこの企画を知ったのは、前作で取り上げた「井戸端げんき」の伊藤さんに誘われたからなんです。最初は観客の一人として聞きに行くつもりだったけれど、そのうちカメラを持っていこうかなと思い出し、前作でお世話になったスタッフに話したら、若い彼らが、じゃあ一緒に行って映画を目指して撮影しましょうと言い出し、現地集合で7台のカメラとスタッフが集結しました。

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―急転直下に決まったと?
大宮:撮るまでには期間があったんですが、撮影するのは9月11日、1日だけのイベントなので、失敗しても後で撮り直しが出来ない。まさに一発勝負でドキュメンタリーでもこういうのは珍しいんです。じっくり作る作品も必要だけれど、ある意味勢いが必要な場合もあると、今回気付きました。だから、今回はなるべく早くお客さんに届けたいとも思い、後の仕上げも回転を早めたんです。東京は12月初旬に公開したので、撮影から公開まで3ヶ月と言うことになりますね。

―映像もレア感とライブ感一杯ですね。
大宮:ええ、介護をやってる人たちだけれど、彼らはいわゆる介護スタッフじゃあない。既成の介護というイメージではないのを紹介したかった。そういう意味で、楽しげなあの雰囲気を出来るだけ伝えたかったんです。
―イケメン揃いでしかも皆カツゼツがいい。そのままホストになれそう、驚きました。
大宮:ビジュアル系が揃っていますよね。トークが聞きやすいのは、喋り方もさることながら、彼らに相手の話をきちんと聞く姿勢が出来ているのが大きい。仕事柄もあるんでしょうけどね。人の話を聞くというのは、我々の日常の中で一番基本であるはずなのに、実はそういうところで手を抜いている。ちゃんと聞いてないのに、聞いたような気がして、うなずいていると言うか。前作の時、彼らはどうしてお年寄りの話をこんなにきちんと受け止められるのかと思ったけれど、今回実際に喋っている姿を見て、訓練とかではなく、彼らが元々持っている人間性なのだと思いました。
―元々介護バカになれる適性を持っていたと。ところで、この介護バカと言う言葉、映画を見るとぴったりなのですが、製作者がつけたのではなく、彼ら自身が使っている言葉なんですね?
大宮:そうなんですよ。若い人に限らず、自分を何々バカと言えるほど、夢中になれるものを持っている人たちって、まぶしいと言うか。仕事バカじゃあないんですよ。

―前作の時も、彼らにとって介護が仕事ではなく生き方になっていると言っていましたが、生活の一部なんでしょうね。介護の現場って、全体的にはもっと年上の人が多いと思うけれど、この人たちは殆ど30代。世代的には孫がお祖父ちゃんお祖母ちゃんをお世話してる感じですね。実際の家庭の中で家族制度が崩壊しているのに、この人たちは外でそれを作っているというか。
大宮:まさにそうですね。家族と言うのは人と人との関係性だと思うのですが、これこそが家族かもしれないなと思います。今の世の中を見ていると、家族の形が血縁関係だけではなくなっている気がします。(聞き手:犬塚芳美) <明日に続く>

  この作品は4/9(土)から第七芸術劇場 にて公開

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