太秦からの映画便り

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映写室 「黒い土の少女」上映案内

映写室 「黒い土の少女」上映案内
    ―今年で2度目の「韓国アートフィルム・シーョケース」―

 反韓流と名うった「韓国アートフィルム・シーョケース」が関西の第七藝術劇場でも始まっています。2006年に続き今年で2回目で、アート系韓国映画の連続上映を行い、前回は「キムチを売る女」に衝撃を受けましたが、今回上映の4作品「黒い土の少女」、「俺たちの明日」、「永遠の魂」、「妻の愛人に会う」も、すでにベネチア、ロカルノ、東京等、世界各国の映画祭で好評を博したもの、韓国映画の多様さと水準の高さを思い知らされるはずです。ここでは「黒い土の少女」を紹介しましょう。

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<荒筋>
 ヨンリムはまだ9歳の少女。炭鉱夫の父と知的障害のある兄の3人で暮らし、母親のような役目も果たしている。だが父がじん肺症で仕事を首になり、保証金で買ったトラックも事故で傷めてしまう。やけになって昼間から飲んだくれる父、家にお金は無く買い物に行こうにも万引きをするしかない。もう駄目だと、小さな胸を傷めある決心をする。


 <主人公の少女ヨンリムを演じるのは>ユ・ヨンミ。韓国のテレビ界で活躍する名子役で、洗練と言うより朴訥な子供らしい自然体に、大人びた表情を時折滲ませ、この少女の孤独をリアルに伝える。こんな少女の健気な決心を、誰が想像できるだろう。
 <もう日本では見られない>素朴さを残した表情が、洗練された演技と対照的で、ユ・ヨンミは貴重な存在だ。赤いセーターがせめてもの子供らしさで、幼い彼女が家事を一人で引き受け、皆を助け励ます役目も担ってきていたのだ。希望をなくして酔いつぶれる父と、訳が解らずに無邪気なままの兄の横で、1人で思いつめていく様子がいじらしい。ほとんど見せないからよけいに、その子供らしい笑顔がまぶしかった。物語のトーンは彼女の心象風景を切り取るように、現実を描きながらその静謐さで現実を超えさせる。

 <石炭から石油へのエネルギーの転換は>、多くの人とかっての繁栄の町を過去へと置き去りにしていく。時代ほどには人も町も変われないもの。日本でも最近も「フラガール」とか、寂れていく炭鉱の街をテーマにした作品があるが、廃坑寸前の寂寥とした町の風景は、見ていても辛い。9歳の少女に未来が見えただろうか。孤独を募らせ、空想の世界に遊んで、ありえない物語をつむぎだしたとしても無理の無い事。時代の変化が大人の人生を狂わせるだけでなく、子供たちの人生や表情を曇らせるのが痛ましい。

 <韓国の映画だけれど>、過剰さよりは省略で想像させる手法で、物語と映像の静謐さが心に染みます。からっと乾いてどこかフランス映画の香りがすると思ったら、チョン・スイル監督はフランスで映画術を学び、この作品もフランスからの援助を受けて作られている。この時代の変化は万国共通のもの、石炭と石油程に劇的でなくても、地方のシャッター通りとか、時代が置き去りにするものは多い。人のいた気配、繁栄の残骸、人は無くしたものほど思い出す。本拠地をソウルではなく釜山においてちょっと韓国映画界の本流とは距離をとっているのもこだわりがあるのだろう。(犬塚芳美)

 この作品、および「俺たちの明日」、「永遠の魂」、「妻の愛人に会う」の上映については、
直接第七藝術劇場( 06-6302-2073)までお問い合わせください。


<「韓国アートフィルム・シーョケース」とは>
 韓流ブームで日本でも韓国映画のファンが増えたものの、商業ペースの作品だけの配給になってしまった。韓国の映画振興委員会はそんな現象に異を唱えて、韓国映画の多彩さを伝えようと、インディペンデント系作品に限りない情熱を持つ所と組んで、この開催につなげている。委員長はハンギョレ新聞社の記者で、映画雑誌「シネ21」の編集長を歴任、女性映画人会の理事でもあるアン・ジョンスクさんです。
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| | 2013年02月12日(Tue)08:50 [EDIT]


 

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