太秦からの映画便り

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映写室 「真木栗ノ穴」深川栄洋監督インタビュー(前編)

映写室 「真木栗ノ穴」深川栄洋監督インタビュー(前編)
   ―夢とうつつの境界をさ迷う―

 いつの時代の話なのかも、現実なのか妄想なのかと言うのも曖昧な、まるでこの1作そのものが架空の世界のような、不思議な作品に出会った。一枚一枚めくりながら文学作品を読んだ気分になる。原作は2001年に四谷ラウンド文学賞を受賞した山本亜紀子の「穴」で、出版社の解散で一度絶版になったものの、2004年角川ホラー文庫から再び出版され話題を集めた作品だ。メガホンを取ったのは、前作「狼少女」で熱狂的なファンを掴んだ深川栄洋監督。古びたアパートで妄想を広げていく主人公を、まるで自分のようだとまで言う監督に、この不思議な作品が出来るまでを伺いました。

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(11月5日大阪にて)

<その前に「真木栗ノ穴」とはこんな作品> 
 鎌倉の切り通しの向こうの古いアパートに住む真木栗勉は売れない作家だ。ある日官能小説を頼まれるが書けない。壁の穴から隣の部屋を覗くと、女を連れ込んだ男が情事を繰り広げていた。急いでそれをネタにして書き、今度は逆の部屋の情事を書きとめる。連載は評判をとるが、担当編集者は真木栗が本当に覗き見して書いているのではと疑い始める。一方真木栗は自分の書いた人物が次々と死んでいくのに気付く。

<深川栄洋監督インタビュー>
―余情漂う素敵な作品で、観ただけで充足したので本当は伺う事はないのです。ただどのようにも取れるラストを他の人がどう解釈したのかと興味があって、いつもはそんなことはしないのに、色々な方に聞いてしまいました。それも監督の意図なんだと後で読みましたが、そうは言っても、一つに集約できる物語が監督の中にはおありですよね。
深川栄洋監督(以下深川):ええ。色々な解釈があるといっても監督としては一つの方向に導かないといけないので、自分としては答えを持っていますが、それを言っていいもんかどうかは疑問なんです。この作品を撮っている時も、演じる人には演じる人の答えがありスタッフにはスタッフの答えがあるという状態でしたが、一つの答えを探る作業はしないほうが良いだろうと思って、そのあたりは曖昧なまま、それぞれに少しづつ差異を感じながら作りました。だから観客に対しても、一人一人と向き合って個人的にこうだったんですよねと言うのに相槌は打てるけれど、公的なところでこうだとは言わないほうが良いだろうと思っています。

―そう伺うと余計に伺いたくなりますが。
深川:DVDが出る頃には言ってもいいかなと思っていますが。絵を見ていても何処までが絵で何処からが額縁なのか解らない時がある。絵のつもりで見ていたらいつの間にかはみだして額縁も超え壁を見ていたりという具合に。そこにあることが大切で、境界が解っても意味がないかもしれない。この作品はその不思議さを楽しんで欲しいのです。
―そんなところを探る為に何度も見るのも良いかもしれませんね。
深川:ええ、2度、3度見ていただくと違ったものが見えてくるかもしれません。この本は書かれていない行間の部分が素敵なのですが、そこを広げるのに、役者さんにも助けられ、鎌倉の切りとおしと言う1000年も続いた風景にも助けられました。色々なものが相まって言葉にならない部分が膨らんだ世界です。

―西島さんがしっかり演出をされたと言っていましたが。
深川:僕は自主映画から出発しているので自分の現場しか経験がなく、他の方がどう演出されるのか知らないんですが、凄い細かいところまで演出したと思います。ただ西島さんだけを演出したわけではなく、他の役者さんにもしています。目指す所までたどりつけているかどうかの判断や、役としてのキャラクターを出すべきなのか、出さないほうが良いのかのさじ加減を、僕の判断に任せてもらいました。
―そんな風に丁寧に作られたものを観てどうでしたか。
深川:真木栗は僕だなあと思いました。生き方が下手で駄目なところが一緒なんです。僕は映画を作ってない時は酔っ払っているか妄想しているかで、若い頃はあんな安アパートに住んでましたし、真木栗のような生活をしていました。職業病なのかどうか、頭の中にあるのが想像したことなのか、実際に経験したことなのか、酔っ払ってみたことなのか、前の作品で経験したことなのか曖昧模糊としていたりしますし。

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―西島さんにもぴったりでしたが。
深川:原作を読んだ時にぱっと西島さんの顔が浮んだんです。ただしそれがいいんだか悪いんだかは解りません。あえてイメージと違う人に演じてもらって役を広げることもありますから。西島さんは表情が出にくい役者さんだなあと思います。今までの作品で演じている役の駄目なところが人間らしくて魅力的で、触れ幅のある作品を作りたかったんでぴったりだと思いました。偶然スケジュールの都合もついて、撮影の前に1時間くらい会って話したんですが、お互いに照れて目を合わせられないんです。
―お二人は似てらっしゃるんじゃあないですか。とくに目が同じです。
深川:撮影現場では似ていると言われました。お互いに話す事なんて無くて、照れていましたが、でも佇まいとかチャーミングな方だなあと思います。映画を作ってきて今回一番響き合える人に出会いました。

―その西島さん扮する真木栗が住んでいるアパートが素敵でした。
深川:今回はロケハンも上手くいって、偶然築40年と言うこの物語にぴったりの木造アパートが見つかったんです。もう壊すからと中を自由にさせてもらえて、壁を外したりと撮影しやすいように改装できたのも幸運でした。部屋の中は作家の部屋に興味があって、色々な作家の方の話を聞き参考にして作っています。雑然としていて周り中が本で一つの部屋で何でもする形ですが、貧しくても居心地良さそうですよね。西島さんはこの部屋に入ったとたん、作りたい映画が解ったと言ってくれました。
―監督だけでなく西島さんもお若いころは真木栗のような生活をされていたのかもしれませんね。こんなアパートが似合うと言うか、今公開中の「東南角部屋二階の女」でもそんな役をやっていますよね。
深川:そうかもしれませんね。経歴を拝見すると、西島さんは好んで小さい作品に自分の居場所を探っています。そういう志向があるから売れない役者や売れない小説家の役がしっくり来るのでしょう。育たれた環境だろうと思いますが、西島さんは何をやってもどんな役を演じても品があるんです。相手を傷つけるようなことをやっても何処かでその人間を信頼できるし、悪くなりきらない。この作品では覗き見をするんで、真木栗の視点を追って感情移入させられる観客は、真木栗に品がないと自分に返ってきて辛くなるのですが、西島さんの品位で救われています。(聞き手:犬塚芳美)       <明日に続く>
             
この作品は、12/6(土)より第七芸術劇場
        12/20(土)より神戸アートビレッジセンターで上映
        12月下旬より京都みなみ会館で上映予定
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| | 2012年02月08日(Wed)14:04 [EDIT]


 

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