太秦からの映画便り

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映写室 「真木栗ノ穴」深川栄洋監督インタビュー(後編)

映写室 「真木栗ノ穴」深川栄洋監督インタビュー(後編)     
 ―映画との出会いとこの作品との出会い―

<昨日の続き>
―確かにどんな役でも品位を感じますね。ところで真木栗はあるところで異界に入りますが、監督もこれをきっかけに異界に入れると言うところはありますか。
深川:僕の場合は映画の現場です。自分では感じていないんですが、現場に入ると人が変わると言われます。いつもは自分とも向き合っていないような男が、現場に入るととたんにスイッチが入ると言うか、人の人生と向き合い作品の世界と向き合って行ける。映画が僕の異界への入り口ですね。

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―監督になろうと思われたきっかけは何ですか。
深川:監督というより、最初は録音技師になりたかったんです。監督は無理だろうと思っていたんですね。小さい頃は映画を観たこともなかったんですが、17、8歳の頃付き合っていた人が映画好きで、自分のほうが先に観てああだこうだと言いたくて映画を観るようになりました。映画が好きになったのはそれからです。実家が表装や建具の職人さんが出入りするような和物系の内装屋で、高校の頃から手伝っていたんですが、卒業してそのまま手伝うのは嫌で、映画の専門学校に入って時間的な猶予を貰おうと思ったらこうなりました。

―だからこの作品も日本的な情緒があって、曖昧な時代の出し方がお上手なんですね。お若い監督なのに不思議でした。作った作品はその方に見せていますか。
深川:若い頃の話でそれから会っていないんで見せていません。でも彼女だったらどう思うだろうかとか、このシーンは見て欲しいとかいうのはあります。もちろん彼女だけではなく他の誰かに見て欲しいシーンと思って作るシーンはたくさんあります。
―何処かで観てらっしゃるんじゃあないでしょうか。監督は脚本もお書きになりますが、こんな風に原作のあるものとオリジナルとどちらがお好きですか。
深川:原作ものとかオリジナルとか拘ってなくて、何か面白そうなものがあれば映画を作りたいと思います。1つでも2つでも面白がりポイントを自分の中に見つけられたら、そこから面白く作っていける。この企画は最初プロデューサーにジャパニーズホラーを作ろうと言われて始まったんですが、脚本を貰った時しっくりこなかった。でも原作を読んだら良いんですよ。ここからが現実でここからが頭の中と言うのが曖昧模糊としているのが、魅力だと気付きました。この話はホラーじゃあなく人間ドラマが良いんだからそれを生かした作品を作りたいと思ったんで、プロデューサーにそんな風に話して納得してもらい、かなり原作に引き戻して作り直したんです。原作者が若い方で、女性ならではのせりふが面白くて、真木栗の周りのそれぞれの女性を上手く書き分けている。20代の担当編集者、マドンナの30代の女性、40代の女性、50代の女性と、それぞれに話す言葉や行動にリアリティがあって上手いなあと思いました。

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―キムラさんとの入浴シーンなんて、ついていくだけでも凄いのにお風呂に入ったから驚きますが。あのシーンの西島さんの困った表情で客席が沸いていました。
深川:あれおかしいですよね、ここまでやるかと。でも真木栗の性格や不安定な心理状態をさりげなく表していて、原作の上手いところです。キムラさんは単純に西島さんと一緒にお風呂に入れると喜んでいました。
―そんな風に、この作品には見えそうで見えないとか独特のエロスがありますが。
深川:今まで子供の映画が多かったのに、久しぶりに大人の映画のオファーが来たので、自分の性癖をさらけ出してでも大人の映画を作ろうと思いました。僕が美しいと思うもの、女性の美しさを丸みとかで表現しています。それと、そのものを映すより想像で広がる見えないエロスとかですね。この作品は真木栗の視点に合わせて、覗き見感覚でじわじわと思わせぶりに小出しにしています。トマトを落として拾ってあげたりと、視線を合わせそうなところでも合わせないで、合わせるだろうという観客の期待を感じながら、合わせられない思いを次のシーンに引っ張っていくとか、そうすると次までそのテンションが持続できますから。そんな焦らしのテクニックを意識的に随所に張り巡らしています。

―かなりそれにやられました。それに雨上がりのような全体のしっとり感も素敵ですが、撮影時のお天気は。
深川:全て快晴でした。撮影もタイトでハイペースで撮ったのですが、しっとりした風情が映っているとしたら、作品の世界観を理解して下さった撮影の高間さんの力量です。今回は撮影監督と凄く響き合ったんですよ。高間さんは僕が役者さんと話しているのを聞いて、僕の演出意図の全てを理解してくれ、撮影3日目で信頼し合えました。こんなことは初めてです。今までの作品では戦ったこともあるし、指示通りに動いてくれたこともありますが、今回はまるで僕の分身が撮影をしているようでした。父親ほども年齢が離れているのに、全く年の差を感じなかったです。

―凄いですね。役者さんも皆さんいい味わいですが、背中の曲がった不動産屋のおじいちゃんが印象に残っています。異界への案内人として適任ですね。
深川:あの方は僕の最初の作品に出ていただいたので、何か恩返しがしたくて今回あんな形で出ていただきました。90幾つの方ですが独特のいい雰囲気が出ていると思います。残念ながらこの撮影の後で亡くなられてしまったんです。役者さん、スタッフと色々な幸運な出会いでこの作品の不思議な世界が出来ていますので、ぜひ御覧ください。 (聞き手:犬塚芳美)

 この作品は、12/6(土)より第七芸術劇場
         12/20(土)より神戸アートビレッジセンターで上映
         12月下旬より京都みなみ会館で上映予定


<作品の感想とインタビュー後記:犬塚> 
 だらしない西島さんがため息が出るほどかっこいいし、女の人たちもそれぞれに美しい。邦画ならではのしっとりとした情感に魅了される作品です。こんな文化を持つ日本人なのを誇りたくなりました。小さい世界を大切にして丁寧に作られたのが解るし、少し前の昭和の匂いもする。こんな繊細なバランスを貫いたのはどんな監督だろうと思ったら、飄々としたお若い監督が登場して、成熟した演出術との対比に驚きました。しかも内的世界を話してくださる言葉には、老成された無頼漢の匂いもします。ご実家で出入りの職人さんたちから見聞きされたことが血肉になっているのでしょう。邦画が量産される今、時々は腹立たしいような作品にも出会うのですが、こんな監督を見出せた時は、たくさん作れるのはやっぱり良いことだと思い直しました。ところで熟達の技ともいえるこの世界観を堪能しながらも、だからこそ、この作品の一番の関心はやっぱり結末の解釈です。現場の皆の解釈の差異を利用しながら作るという大胆さもすごいじゃあないですか。いつか機会があったらそこら辺りをじっくり伺いたものです。
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コメント


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こんにちは

応援、ポチ、ポチ。頑張って下さい!!!また来ますね!!!遊びに来てください!!!

元塾講師による悩みスッキリ塾!の中里 | URL | 2008年12月05日(Fri)06:33 [EDIT]


拍手は嬉しいですね。

又いらしてください。

犬塚 | URL | 2008年12月06日(Sat)08:22 [EDIT]


丁寧なレポートを有難うございます

深川フリークです。深川監督は日本映画を支える若き巨匠だと思っています。皆さんぜひごらん下さい。

tamura | URL | 2008年12月08日(Mon)08:51 [EDIT]


素敵な監督ですね!

私もすっかりファンになってしまいました。前作も曖昧模糊とした所が魅力の作品だったのですね。作風は監督の確信犯なのでしょう。私も周り中にこの作品を進めています。

犬塚 | URL | 2008年12月08日(Mon)19:22 [EDIT]


 

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