太秦からの映画便り

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映写室 NO.182バンク・ジョブ

映写室 NO.182バンク・ジョブ 
     ―封印された英国史上最大の銀行強盗事件の真実―

 貸し金庫の中の目も眩みそうなダイヤとぎっしりの札束、そして王室スキャンダルを巡って、諜報機関の暗躍や蠢く陰謀と奇想天外な話だけれど、9割が実話というのだから驚く。
 1971年の秋、ロンドンと英国全土を揺るがす大強盗事件が起こった。ニュースは数日間世間を騒がせたが、ある日を境にぷつりと情報が消える。この作品は、あの時いったい何があったのかと謎を追って、めっきり少なくなった当時の関係者の証言を元に衝撃の事実に迫ったものだ。日本と比べても仕方ないが、40数年後とはいえ、現女王の妹君の実名まで出したこんな映画が出来る英国は、色々な面で吹っ切れている。モデル出身のヒロインの着こなす70年代の華麗なファッションに見とれながらも、つわもの達の危機一髪の危険な作業に肝をひやした。

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(C) 2007 Baker Street Investors, LLC. All Rights Reserved.

<荒筋>
 中古車屋のテリーは、モデルのマルティーヌから「ロイズ銀行の警報が1週間ほど解除される。その間に地下の貸し金庫の強盗をしよう」と持ちかけられる。実はこの話には裏があって、麻薬密輸で捕まったマルティーヌが、特殊機関(MI-5)から釈放の交換条件に持ちかけられたもので、貸し金庫にはMI-5がどうしても取り返したい、リゾート先で乱交していたマーガレット王女の隠し撮り写真があった。そうとは知らず誘いに乗って仲間を集めたテリーは…。


<事件の背景はこうだ> 
 1971年9月11日の土曜日、あるアマチュア無線家が偶然セントラル・ロンドンから半径10マイルの何処かで進行中の銀行強盗の様子を傍受する。すぐにロンドン警視庁に通報され、該当の150行を調査するが特定できない。ロイズ銀行も訪れたが、まだ彼らが中にいたのに侵入した痕跡は見つからなかった。色々幸運な偶然が重なり、薄氷を踏むように危機を乗り越えて、ことが発覚したのは月曜日に銀行が開いてからのこと。貸し金庫268個の中身は消え去り、替わりに8トンの土砂があったという。

 <さあ、ここまでが皆が知っている事実で>、この後は独自に暴いた裏話も想像も加わる。数百万ポンドにも及ぶ現金と宝石類が奪われた大事件、当然大騒ぎになった。マスコミは連日トップニュースで報じるが、4日後英国政府から出されたD通告(国防機密報道禁止令)によって、突然全ての報道が打ち切られてしまう。D通告は歴史上数回しか発令されていないもので、隠したいことの大きさが伺えるが、たどり着いた真実のその複雑さと過激さ、さすがに「007」と言うスパイ映画の傑作を生み出した国だと舌を巻いた。にわかには信じられないが、映画そのもののような諜報活動が現実にあるのだろうか。この事件だけでなく、他の映画にも通じるMI-5の暗躍に目を見張る。

 <貸し金庫だけに>皆が秘密裏に預けたものばかりで、無くなった物の正確なところは解らない。でも時代とお国柄から私たちの想像を超えた豪華な金品がつまり、MI-5が守ろうとしたスキャンダラスな写真だけではなく、警察組織がひっくり返りそうな汚職のメモや英国要人の由々しき写真もあったらしいのだ。奪われた金品を狙うものと、スキャンダルの発覚を恐れるもの、雑多な勢力が犯人たちを追いかける。
 <追いつ追われつで、観ていても誰が味方で誰が敵か>解らず混乱するが、それはそのままこの犯人たちの心境でもあった。色々な事情を抱え一攫千金を狙って強盗に加わったメンバーは、最初自分たちの起こした事件の思わぬ広がりや裏の事情を知らない。観客が姑息な権力者側よりも銀行強盗側に感情移入するのは当然で、ハラハラドキドキが止まらない。強盗役誰もが情けなくも魅力的で、いつの間にか応援していた。

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(C) 2007 Baker Street Investors, LLC. All Rights Reserved.

 <隠し金庫に人は何を入れるか> 大事なもの隠したいものは人によって違う。金品よりももっと大事な秘密が納められていることもあるが、もちろん全てが明るみに出ることはない。該当者が見たら卒倒しそうだが、裁判沙汰等の話を聞かないのは、全ては真実だからか該当者が亡くなっているからか。金品すら、出所や税法上面倒になるのを恐れて、被害届けは出なかったと言う。

 <ところでロンドンと言うと>名探偵“シャーロック・ホームズ”だ。彼が住んでいたのはベイカー・ストリートだけれど、ロイズ銀行はベイカー・ストリートとマリルボーン・ストリートの交差点にあって、この事件はシャーロック・ホームズが解決した事件と不思議なほど手口が似ている。銀行強盗たちにはユーモアもあって、貸し金庫の壁には「「“シャーロック・ホームズ”にこの謎を解明させるがいい」と書き残していた。犯人の中に“シャーロック・ホームズ”の愛読者がいたことだけは確かだ。

 <こんな事件が今起こったらどうなるのだろう> 70年初頭は、王室にはまだまだタブーが多かった。時を経て、ダイアナ妃とチャールズ皇太子の双方のスキャンダラスな私生活は、本人自らが暴いたりもしている。もう王室に関しては諜報機関が必死で守るものはなくなったかもしれない。そんな時代の空気もこの映画の製作を可能にしたのだろう。
 プロデューサーは10年以上この企画を温め、関係者との接触に成功し彼らの証言から作品にリアリティを加えた。私たちは報道を信じるが、全てが報道されるわけではない。この映画の製作姿勢から、報道されなかった事にこそ真実があるのだと教えられる。(犬塚芳美)

 この作品は12月20日(土)より、シネマート心斎橋で上映
      来年度 1月17日(土)より京都シネマ、  
          1月24日(土)よりシネ・リーブル神戸で上映予定


《ちょっとディープに》 
 <この事件は、無線の傍受で発覚が始まったことから>“ウォーキートーキー事件”と呼ばれ、50年近くが経つというのにロンドンのある年齢以上の人は、誰もが覚えている。被害を受けたのが貸し金庫を持つような富裕層で、庶民に被害のない気楽さと謎の多さも、多くの人の関心と憶測を呼ぶのだろう。日本で言うとつい先日、事件から40年を経過して再び注目された “3億円事件”のようなものだろうか。
 <こちらのほうも少し前に>、犯人が当時の総理の息子と14歳の少女だったと言う大胆な推理を加えた映画が登場して、単純な私などは、原作者がこの少女なのではと興奮したが、この作品にも犯人しか知りえないようなことが描かれている。製作者の取材力と想像力の豊かさと言うものだけれど、もしや周辺の関係者がと想像を掻き立てられる。両方とも暴力的な犯罪ではないだけに、権力側のあわてぶりに天晴れとシンパシーを持つ者もいるのだ。一生遊んで暮らせるものを手に入れたわけで、ある種庶民の夢でもあったりする。
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