太秦からの映画便り

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映写室 『いのちの作法』小池征人監督インタビュー(後編)

映写室 『いのちの作法』小池征人監督インタビュー(後編)  
 ―ハンディの重さが命の重さ―

(昨日の続き)
―田舎では何処も若者が都会に出て行ったまま帰らず困っています。沢内の若者達はどうですか。
小池:もちろんこの町にもそんな問題はあります。東京とかの大都会だけでなく、盛岡とかの県都に出て行く。でもここでは人が流出するのを憂う以上に、外から人を呼び込もうと考えている。それが里親制度であり障害者の施設や老人医療を町の中に置くことで、よそから人が来たり雇用等が増えるのを模索しています。

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―施設の子供たちが沢内に来るシーンがありましたね。
小池:ええ。ラッキーだったのは夏に増田君という青年に出会ったことで、施設の子供たちの里親になると聞いてこれは映画になるなと思いました。よその人間が行ってそこの人間が当たり前に思っていることを再見する。そういう意味では両方の二人三脚で生れた作品です。ホームステイでも、子供たちを世話するのは老婆でしょ。虐待等で傷ついて人間不信になっている子供たちにかける言葉が温かくてね。一番人間力を持っているのが老人なんですよ。そんな老人が一杯いるのも、50年前から生命行政に力を入れてきたからでしょう。元々命というのは2つの命から誕生する。1人では生きられないんです。1人で頑張れるのは10年くらいじゃあないかなあ。後は上手に迷惑を掛け合って命をつないでいけば良いんですよ。

―そう考えるとこれから年を取るのが怖くなくなりました。その代り今私が出来る事はお手伝いしないといけませんね。
小池:そうそう、そうやって順番に迷惑を掛け合っていこうと言う事です。
―「雪見そり」のシーンは、雪が消えてしまわないかとハラハラして見ました。
小池:豪雪地帯なのに撮影の頃は雪がなくてね。いつもは厄介者の雪を町の皆が降れ降れと祈ってくれるんですよ。あのシーンは、太田さんのお孫さんが「雪見そりに乗せてあげたいなあ」とポロッと言うんで、「やろうよ」とけしかけて始まったんです。13年前に実際にあったらしいんですが、作り手の欲望と現地の人の心の隅にある小さな願望とがシンクロして生れたシーンです。悪く言えばやらせだけれど、それで良い。考えてみると映っているのは弱者の集団なんだけれど、弱者というのは大事なテーマで、表現法によってはそれがヒーローになるんです。

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―とりわけ心に残るのが、90歳を超えた父親が施設で暮らすお嬢さんを訪ねるシーンです。お嬢さんの恥ずかしそうな、逆に父親を気遣うような瞳が忘れられません。世間一般だと、障害のある子供を残しては死ねないと悲惨な決断をしかねない境遇ですが、所長さんの「大丈夫、任せて」が頼もしくもらい泣きしました。
小池:素晴らしいですよね。これが沢内の宝です。あの老人は20数年前から共同作業所とかに関わった方で、娘に会いに行きたいというから一緒に行きました。だからあそこに行っても皆知り合いばかりなんです。誰々ちゃんのお父さんが来たよと、皆が言ってね。実はここはその前のシーンの「ハンディの重さが命の重さだ」というところから繋がっています。その後に僕は万感の思いで「沢内に生まれ、沢内に生き、沢内に託す100年の生涯」というナレーションを書きました。命を地域で守っていますよということで、こんな支えあう小さな社会を一杯作りましょうと言いたいんです。

―完成を見て地元の反響はいかがですか。
小池:撮影中から地元では何度も報道されて注目されていました。今のところ岩手を中心に上映会で2万人くらいが見ていますが、映画を見てうちの親でも出来るとか、里親候補が増えているようです。子供だけでなく老人も引き受けていこうと言う試みも始まりました。命なんて一人では守れません。人間だけでも守れない。命そのものは依存しあって続くもので、しかも自然と共存しあって続くものです。この映画の温かいメッセージが届いて、人と人との良い関係性が生まれればと思います。(聞き手:犬塚芳美)

<作品の感想とインタビュー後記:犬塚>
 興味の向くままに記録映画の理念についても伺いました。それにしても、このドキュメンタリーがうたい上げる、「すこやかに生まれ、すこやかに育ち、すこやかに老いる」とは何て温かい言葉でしょう。母の胎内に命を宿し、生まれて育って社会を支えて、やがて老いて回りに支えられながら命を全うすると言う、そんな当たり前の事がこの頃は難しい。自己責任ばかりが強調されて、ある年齢になると、動けなくなったらどうしようと不安を募らせるし、生きにくい世の中に将来を悲観し、自ら命を絶つ人もいる。これっておかしい。どんな状態であれ、命こそ大切にされるべきだと思いませんか。迷惑を掛け合えばいいんですよと繰り返す小池監督に、生きる勇気をいただきました。
 さてこの作品、挿入される音楽も心に響きます。いつもは伴奏に回るウクレレが、何処か懐かしい音色で格調高く命の煌きを主旋律で奏でる。演奏している森拓治さんの生演奏があちこちの上映会であったとかで、「映画の応援団です」と監督が嬉しそうに話されました。


12月27日(土)より第七芸術劇場で公開。一般1200円
(元旦を除いて1月9日まで10時30分、14時40分開始の2回上映。以降時間変更)
順次、京都シネマ、神戸アートビレッジセンターにて公開予定
 
      
1月3,4日にはこのドキュメンタリーの音楽を担当した森拓治さんのウクレレ生演奏と小池監督の舞台挨拶があります。詳細は劇場(06-6302-2073)まで
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