太秦からの映画便り

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映写室「ノン子36歳(家事手伝い)」熊切和嘉監督と星野源さんインタビュー(後編)

映写室「ノン子36歳(家事手伝い)」熊切和嘉監督と星野源さんインタビュー(後編) 
―駄目な人たちの何をやっても駄目になる話の向こうの微かな救い―

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(C)『ノン子36歳(家事手伝い)』FilmPartners

<昨日の続き>
―セックスシーンとかは
星野:僕は今までそういうシーンをやったことがなかったんで緊張しました。こんなシーンで普段の自分が出るのは嫌じゃあないですか、心配しましたが、それはなかったです。監督が演技をつけてくれてそれに従いました。坂井さんの服を脱がせられなくて諦めると、坂井さんが自分で脱ぎますが、別の筋書きがあったんですが上手く行かずたまたまそうなってしまったんです。でも妙にリアルですよね。撮影の前に(もし興奮したらどうしよう)と思って、暫く悩んだ後、先に謝っておこうと思って坂井さんに「興奮したらごめんなさい」と言ったら、「興奮してもらったほうが嬉しい。してもらわなかったらがっかりだよ。しょんぼりしちゃう」と言われて、ああいい人だなあと思いました。実際の撮影時はお坊さんの気分で、無我の境地でした。坂井さんは脱ぐのは今回が最初で最後だと言っていたんで、気合も入っています。それを邪魔してはいけないと思いました。撮影が始まると皆が覗いていて真ん中に僕らがいる。真剣な集団の真ん中で興奮しなかったし、芝居でそんな風に見せようと思いました。逆に隣の監督の「ハーハー」と言う息遣いが聞こえて、僕はトランシーバーになったようなもの。一体化というか監督からの念を受けて動きました。ここまで自分が空っぽになれたのは初めての経験です。僕が興奮しちゃうとツーマッチだったでしょう。
―監督の演技指導はいつもそんな風なのでしょうか。
熊切:場合によるとは思いますがたいてい念を送っています。マサルは特にで、ノン子にも念を送っていました。と言っても全員には送れません。さすがに宇田川には送れなかったですね。

―この作品はなかなか複雑なお話ですよね。
星野:どうしても駄目になってしまう人たちの駄目な話だなあと思いました。でも駄目な人にしか起きない奇跡が起こる。馬鹿な人たちだったのに最後には馬鹿な事をしない、マサルを一人残すと言うか、少しずつ成長しています。一言で現わすのは難しい映画だと思いますね。上手くいかなくて毎日一人で反省会をしていました。
―この映画もですが、監督の作品には一定の方向性が見えますが。
熊切:オリジナルで考えると、孤独な人がいて、隣にいる人も孤独で、二人がひと時一緒に過ごすと言った、どうしてもそんな話になってしまいます。僕は嫌われ者や悪者が好きなんです。破壊者の孤独と言うか、町の嫌われ者とか好きですね。何時もそんな人を主人公にしてしまう。
―この映画のきっかけは何ですか。
熊切:坂井さんで1本撮りたいと言う思いと、前作が少し話を広げ過ぎたんで、男と女の話というシンプルなものに戻って撮りたいと言う思いが結びついてこうなりました。この物語を思いついた5年前は、もっと突き放して考えていたんです。でも具体的に役者さんの顔が見えてきたら、そこに情が入ってトーンがいい具合に変わってきました。ラストシーンも、この物語はどうにもならない話で、どうにもならないことを受け入れると言う救いようのない話なのだけれど、唯一つノン子が笑えるようになったと言うのが救いになる。坂井さんの笑顔が好きなのでそれを入れたくてそうしたんです。

nonnko-kan.jpg

―この後マサルはどうするんでしょう。
熊切:別に設定はありません。
星野:監督とも話したんですが、しょんぼりしながら地元に帰るんじゃあないでしょうか。チェーンソーでガーッとやった後なんで、しょんぼりはしてるだろうけれど、それを悲観して死んだりもしない。あんなことを繰り返して生きていく人じゃあないでしょうか。台本を読んだ時は(自分に似ている。こんな鬱積した時期があるなあ)と思ったけれど、演じてみるとまるで自分とは違う人がいるなと思いました。中学とか高校の頃、チェーンソーを振り回したいような思いになっても、こんな人間なので実際の行動はなく、頭の中で済ましていました。僕が役者を始めたのは皆に誘われてですが、やってみると楽しい。元々学校や会社等の仕組みが嫌いで、連帯責任のあるサラリーマンとかにはなれないなと思っていました。熊切監督の事は『69』で共演した加瀬亮さんや菊池凛子さんから「いい監督だからいつか出れるといいね」と教えてもらっていたんです。今回「出たよ!」とメールで知らせたら、二人ともメールアドレスが変わっていて通じなくて。(笑い)

―近くで演出を見てご自分も監督をしたいとは思われませんでしたか。
星野:バンドのPVとかでは監督をやっています。熊切監督を身近で見ていると、場面ごとにガーッと皆を引っ張って行き楽しそうでした。大変なことが多いけれど、それまでしてやりたくなるもんなんだなあと言う印象を与えてもらえたんです。ただどんな芝居をしても見ていてくれると言う安心感をもらえたので、短いPVですら大変だった自分はまだまだだなあと思いました。今までも映画音楽という形で映画に関わってきましたが、音楽は出来上がった後での参加です。今回出演者として芝居をして、皆で作る現場の楽しさを知りました。
―坂井さんへの演技指導はいかがでしたか。
熊切:今までは、撮影中はともかく、普段は緊張して目をあわせられなかったんですが、今回は坂井さんが扮するノン子で引っ張る作品なので、今まで以上に色々話をしました。寄り添った感じがあります。これからも一緒の仕事があるといいなと僕としては思っています。(犬塚芳美)

《この作品の感想とインタビュー後記:犬塚》 
 熊切監督は皮膚感覚で映画を作ると仰いましたが、その皮膚感覚も痛いところを付いてくる。ノン子もマサルも本当に情けなくて夢までが一人よがり。でもデフォルメはしているけれど、こんなことってありそうだから辛い。こんなもんだと受け入れるべき現実はたいてい不本意なもの。落込んでいる時に見ると辛い映画ですが、そこに監督のしっかりとした力量を感じます。こんな現実があっても笑えるようにもなると言う、若さゆえの人生の肯定というか、もう少し年を重ねたらこの痛さは描けないだろうなあと、監督の若さゆえのクールな視点も感じました。自分の感性年齢や精神年齢を試すつもりで見てください。


 この作品は、2月14日(土)より、第七藝術劇場、京都シネマで上映
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