太秦からの映画便り

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映写室NO.190 ホルテンさんのはじめての冒険

映写室 NO.190 ホルテンさんのはじめての冒険    
 ―勤続40年の実直な運転手がラスト乗務に遅刻をしたら―

 <もうすぐ3月、年度替りは人生の区切り>に重なる。特に、サラリーマンなら誰にでもある定年は大きな節目だ。この頃はその前に辞める人も多いが、最後まで勤め上げての定年退職は感慨も深いと思う。だからこそ有終の美を飾りたい。ピシッと最後を決めたいと、この主人公も思っていた。なのに、時間厳守の列車の運転手が肝心の最後の乗務で遅刻とは!しかもそれが始めての遅刻だなんて、人生はままならない。
 <ノルウェーの首都オスロと>第2の都市ベルゲンを6時間半で結ぶ “ベルゲン急行”の運転手の、ちょっとしたことから始まった新しい数日を、温かく描いた物語です。もちろん20世紀の名列車と異名を取る、名物の車窓風景も楽しめる。

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(C) 2007 COPYRIGHT BulBul Film as ALL RIGHTS RESERVED

<荒筋>
 ホルテン(ポード・オーヴェ)さんは、67歳のノルウェー鉄道の運転手。この40年間線路沿いの自宅で決まった時間に起き、小鳥にえさをやり布を被せて出かけるが、そんな規則正しい生活も今週で終わりだ。最後の乗務の後は、列車をやめて始めて飛行機で帰ってこようと計画している。ささやかな新しいことだった。ところが仲間が退職を祝ってくれたパーティで、無理矢理2次会に誘われ、気が付くと寝過ごして…。


 <今までレールの上を走り続けてきたホルテンさんは>、文字通り定年退職のその日に脱線してしまった。仕方なく自分の足で歩き始めると、人生は意外なことばかり。一つのつまづきが又次のつまづきを呼ぶ展開は、短い時間を描きながら、人生そのものを見てるようでもあった。人はなかなか自分の足では歩けない。自分で歩いているようで、誰かの敷いたレールの上を走っているものだ。見通しの悪い初めての道を自分の足で歩けばよろけるのは当然、もちろん67歳の男に走る事は出来ない。職業病のように真っ直ぐ前だけ見てきたホルテンさんは、ゆっくりと人生の車窓を楽しむ事になった。

 <実直で愛すべき主人公は>デンマークを拠点に活躍するボード・オーヴェで、寡黙でも心のうちが雄弁に表情に表れるのが素晴らしく、困った顔がチャーミングなのだ。真面目なホルテンさんの行動は世間知らずゆえに時に大胆。どこかにユーモラスな匂いがして、観客は知らず知らず彼を見守るような保護者の気分になる。風変わりな人々や予測不可能な出来事に次々と遭遇する様がおかしいが、こんな事でもないと真面目なホルテンさんに冒険は出来ない。決して自分からではなく、他人に巻き込まれながら新しい人生を垣間見る戸惑いが、見るものにはほほえましく写る。

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(C) 2007 COPYRIGHT BulBul Film as ALL RIGHTS RESERVED

 <象徴的な出会いは、元外交官と称し>、目隠しで運転できるという不思議な才能をもった男シッセネールとの出会いだった。彼は「人生は手遅ればかりだが、逆に考えれば何だって何時だって間に合う」と言う。つかの間の出会いはホルテンさんを決定的に変える。
 規則というたがをはずした時、前に広がった凍った道は明日からの人生。思い思いの他の人に触発され、ホルテンさんも昔取った杵柄であるものを持ち出した。眼下に広がる美しい夜景、町を目指して飛びたつ心、第2の人生のスタートだった。

 <監督は『酔いどれ詩人になるまえに』などで知られる>ノルウェーのベント・ハーメルで、ユーモアを交えたシニカルな視点が冴え渡る。北欧人が発するユーモアは、押しつけがましくなく、心地よいのだ。北欧のほのかな光がつくる独特の世界も珍しい。(犬塚芳美)


この作品は
   2月21日(土)より、梅田ガーデンシネマ、シネ・リーブル神戸で上映
   近日京都シネマにて上映予定
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| | 2013年02月12日(Tue)07:26 [EDIT]


 

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―勤続40年の実直な運転手がラスト乗務に遅刻をしたら― (C) 2007 COPYRIGHT BulBul Film as ALL RI...
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journalist-net | 2009年02月18日(Wed) 08:12


 
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