太秦からの映画便り

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珍しいドキュメンタリー

映写室 「線路と娼婦とサッカーボール」上映案内:犬塚芳美 
―中米グアテマラからのドキュメンタリー―

 グアテマラ・シティの線路(リネア)沿いの貧民街の娼婦たちが、ハイヒールをスパイクに履き替え、サッカーを始める。「リネア・オールスターズ」と言うチームを作り、選手権大会の登録もした。注目されて差別等の社会問題を訴えるのだと言う。とうとう国際試合をするまでの道のりを描いて、貧しくても逞しい女性たちに元気をもらえる作品です。

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 <奇想天外な話でもこれはドキュメンタリー> 中米の強い日差しと共に、差別に負けず悲惨な私生活や素顔を晒した娼婦たちの天真爛漫さと前向きな思いが、この映画の明るさだ。貧しい国の中でも彼女たちは最下層。肉体の罪を重んじるカトリックの支配する社会からは蔑まれている。コーヒーと言う特産品がありながら、大国に翻弄されて破綻した経済のせいで、男たちは軒並み失業し飲んだくれて頼りにならない。社会に絶望し鬱積してるから、時には家族にすら性的関係を求める。告白から明らかになるが、このメンバーにもそんな被害者が多いのだ。
 <そんな悪夢から逃げ出した彼女たちは>、2ドル半という安いお金で体を売るけれど、誰の力も借りずヒモなしで働いていると、自分に誇りを持っている。仕送りをしたり家族を養ったりと、この仕事で一家の大黒柱だ。貧しさに負けず、差別されることに怒り、逞しく生きる娼婦達。「リネア・オールスターズ」のメンバーは12人でも、応援団は60人もいるんだとか。彼女たちの活躍は皆の希望になっていく。

 <サッカーなんてよく思いついたものだと呆れるけれど>、ボール一つで出来るサッカーは、貧しい国で盛んなスポーツ。とにかく逞しい。極彩色のセクシーな商売着も、やっとそろえたユニホームもはちきれそうな肉体で着る。最初はボールも蹴れないのにだんだん上手くなる頃には、こちらも観客と言うより応援団になっていた。初めてゴールした時なんて、嬉しくて映画なのを忘れて拍手しそうになる。最初の目的はもとかく、仲間と一緒にサッカーをし、厳しい現実を忘れる時間が喜びになっていく様子が伝わって来た。娼婦たちには弱い者同士一体になれる物が必要だったのかもしれない。
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 <対戦相手によっては汗でエイズがうつると言われたり>、喧嘩になったりの試合観戦にも力が入るけれど、それ以上に目を奪われたのが、サポーターのマリアだ。深い皴と痩せた体が人生を物語るよう。マリアは元娼婦で、恋人の暴力で片目になった不運な過去を嘆かず、小さな幸せに感謝して生きている。それでも娼婦たちを一生懸命応援するのは、後輩に自分のような人生を送らせたくないのだろうか。そんな思いを代弁するように挿入されるヴォーカルが心に染みた。

 <さあ、サッカーで彼女たちは変れたのかどうか>、それは映画を観ていただくとして、嬉しいのが、世間がなんと言おうと娼婦の母に感謝し、誇り、澄んだ瞳で夢を話す子供たち。子供が母親の苦労と悲しみを解っているのが未来への希望だ。そんな人々の逞しさと共に、情報の少ない中米グアテマラの風景や国情がむき出しで映るのもこの作品の見所。第56回ベルリン映画祭で観客賞を受賞しています。


  関西では、2月2日(土)より第七芸術劇場、
                 シネマート心斎橋(モーニングショー)で上映
    順 次、京都シネマ、神戸アートビレッジセンターで上映予定
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| | 2013年03月30日(Sat)12:15 [EDIT]


 

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