太秦からの映画便り

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映写室 「ポチの告白」高橋玄監督インタビュー(後編)

映写室 「ポチの告白」高橋玄監督インタビュー(後編)    
―若い人たち、戦う相手を間違わないで―

(昨日の続き)
―凄いシーンですが、ラストは最初からあんなふうに予定していたんですか。
高橋:最初は法廷の中でやろうと思っていました。でも法廷であんなふうにはっきりと言い切れる人間だったら、こんな事にはなっていないだろう。だったら負け犬の遠吠え的にするしかないと思って、独房の中で独り言を言うというあんな設定になりました。一人芝居が聞かせますが、菅田さんは外国のプロデューサーの受けが良くて、上手いだけでなく存在感がありますよね。ハリウッド作品にもよく出ているし、日本よりも向こうの監督が使いたがる国際派です。

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(C) 2008 GRAND CAFE PICTURES Corporation

―何処までが本気なのか解らないのが不気味で、大体包帯で首が吊れるとは思えませんから。
高橋:そんな風にも見えますが、実は包帯をほどいたのには別の意味もあって、そもそも喉を切ったのも嘘だったのではと。解いた後に傷が無いでしょう。おまけにご飯を下さいと言うわけで、こんなになっても権力の施しを受けて生き延びようとしている。そのあたりを菅田さんが、絶妙の、どちらにも取れる複雑さを見せて演じているんですよ。
―そこまでは想像出来ませんでした。ところでクライマックスのあのシーンを舞台にしても面白いでしょうね。
高橋:この作品は実は映画の企画になる前に、舞台の寸劇のコントにどうかと思っていたんです。派出所の前で警官たちがハチャメチャをするという設定でした。ラストの一人芝居も舞台になりますが、やっぱりそれまでの道のりがあって初めてあのシーンが生きると言うのもあります。

―監督の演出法はどんななんでしょう。
高橋:リハーサルが長いんで色々設定してるように思われますが、自分の思う方向に役者さんを動かす方法ではありません。むしろ、役者さんに自分の思いつかないことをやって欲しい。元々役者さんと言うのは彼らが自分で思っているほどは幅が無いものです。色々な役をやってもやっぱりその人でしかない。だけど全く同じでありながら、別のように見えると言うのが役者で、本人は代わらなくてもそれなりに別の世界を作ってくれれば良いんです。例えば幼稚園の先生が紙芝居を読む。声音を変えてもその先生には違いないけれど、一瞬紙芝居の世界に入り込めるでしょう。演技と言うのはあんな感じです。僕のリハーサルが長いのは、何かの型にはめる為ではなく、役者さんの構えていたものを剥ぎ取っていく仕事です。ベテランの俳優さんほど、演技とは着る事ではなく脱ぐ事だと言うのが解っている。その人の持っている素の部分までたどり着ければいいと。役者さんにすると手のひらで踊らされているようなものかもしれませんが、元々役に嵌る様に配役しているんですから。

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(C) 2008 GRAND CAFE PICTURES Corporation

―野村さんも素敵でした。出光さんの非情だけれど人情家でもあると言う複雑さも見ごたえがあります。
高橋:野村さんは優男に見えるけれど、精神的にタフでものすごく芯が強い。役柄が彼の人となりと重なります。出光さんは技巧派で、アドリブに見えて全て作りこんだものです。元々舞台俳優なので、客席を見回しその日の客席に合った演技をすると言うのが習慣になっている。逆に言うと、あの年代の役者さんはそういう風に育っているから、計算しないと出来ないんです。計算しつくし、練習しつくし、その挙句にアドリブのように見せるんです。今の若い俳優さんの素は、単に何も出来ないだけで、そこは全く違います。
―撮影で難しかったのは何処でしょうか。
高橋:法廷のシーンが大変でした。スタジオに大セットを組めれば良いがそんな予算は無い。あれは大学の模擬法廷を借りて撮影したんですが、機材の搬入から搬出まで8時間、実質6時間で撮りました。東京地裁には窓が無いんだけれど、教室だからあるんです。それが映らない様に、幾つかのシーンを人を大移動させながらの撮影で、綿密に絵コンテを描いて計算していくんですが、リアルさを出そうにもこの制約の中ではそれが難しかったですね。もっともこの話は警視庁だけれど、何処にでも当てはまるように、敢えて特定できる固有名詞は避けています。

―裁判があまりに短時間で驚きましたが、あれも事実に即しますか。
高橋:実際にあんなものです。裁判と言っても儀式として形式的に開いてるだけで、皆も芝居をしているんですよ。あそこに出てくる役名そのままの人も実際にいますが、寺澤さんが(その人はもっとこうだ)とか、実物に似せるように演技指導しました。でも本人を特定できるとしても、公務員の公務中のことなんで、肖像権の侵害にはならない。クレームをつけようにも法律的に成立しないんです。寺澤さんが法学部出身の人なので、そのあたりのせめぎ合いをよく解っている。文句のつけようが無い。
―知的な戦略が張りめぐられた作品なんですね。ただ「YASUKUNI 靖国」のように、クレームが付くのも、この作品の宣伝としては効果的かと思いますが。
高橋:宣伝のことは宣伝のほうに任せていますから、僕では解りません。この作品も「タブーに挑む」と言う切り口が解りやすいかもしれないけれど、そもそも僕がタブーだと思っていない。例えば近親相姦ならタブーだけれど、天皇にしても、警察にしても実際にあるんだから、現実にあるものを批判するのはタブーじゃあないと思っています。ポチという名前にもこめられていますが、ドーベルマンでもない犬を怖がるのはおかしい。何故警察官が犯罪をやっているのに文句を言わないのか。ピストルを持っているが彼らは公務員でしかない。逆に税金を払っているこちらに任命権があるようなもので、そんな当たり前のことを認識しようと言うことです。

―どんな人に観て欲しいでしょう。
高橋:これから社会人になる若い人たちに観て欲しいですね。例えば暴走族とかに、戦うべき相手をちゃんと見ろといいたいんです。暴力を行使する相手が弱い者と言うのはおかしい。若い警官が見たとして、個人で上の命令を聞かなかったら、単に上司の命令にそむくことになる。それではいけないんですよ。警察が悪いと言うのも善悪と言う意味ではなく、法律を守っていないと言うことで、それを守らせるのはこちら側の責任でもあると。僕は元々アウトローの知り合いが多い。こういう実態を映画にして、警察の事を皆に知ってほしいと思いました。(聞き手:犬塚芳美)

この作品は3月21日(土)より第七藝術劇場で上映
     4月中旬より、京都みなみ会館で上映予定


 *なお、22日(日)13:45の回上映前、
          野村宏伸さん、高橋玄監督、寺澤有さんの舞台挨拶あり
     上映後(17:10頃より)堂ビル4階新橋飯店オレンジルームにて、
          上記の御3方のトークショ-開催
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journalist-net | 2009年03月20日(Fri) 07:34


 
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