太秦からの映画便り

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映写室「Beauty」片岡孝太郎さんインタビュー(後編)

映写室「Beauty」片岡孝太郎さんインタビュー(後編)     
 ―舞台の名コンビとノ映像作品―

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(C) 2007 Beauty Partnership

(昨日の続き)
―その見物客の中にお父様が映っていて驚きました。皆さんも興奮したのでは?
片岡:実はあそこの父のシーンだけは合成なんです。父の出演は出来ればお願いしたいと言われていて、一緒にはスケジュール的に無理で、何とか空けれた日に撮りました。隣に座っているのは後藤監督の奥様なんです。もし客席の真ん中にあんなふうに父が座っていたら、客席以上に僕が緊張して大変だったと思います。

―そうでしたか。私がその場にいたらお父様から目が離せないだろうと、皆さんの無視したような自然さが不思議だったんです。さすがの存在感で、この後は客席が映ると仁左衛門さんばかりを探してしまいました。歌舞伎の舞台は親族の共演が多いですが、映像でこうして従弟の愛之助さんと映るのはお父様にも感慨深いものがおありだったのではないでしょうか。そのあたり何か仰いましたか。孝太郎さんはお母様とよく似てらっしゃって、お二人のバランスも良くて。
片岡:僕が母に似ているのはよく言われます。従弟の愛之助君は又父に似ている。彼とは普段から舞台で男役・女役としてよく共演しますから、次はこう動くだろうなというのが、阿吽の呼吸で解る。向こうもそう思ってくれているだろうし、相手のしたいことが解るのはやり易いですね。父に言われたことは、相方として一緒に芝居をしていても、上手いことふっと懐に入ってくる人と、そうでない人がいると。そういう相手は大切にしないといけないんですが、僕の場合、舞台でも今は愛之助君が多いですし、後、市川染伍郎さんも多い。この2人だったら次に彼がどう動いてくるかが解ります。
―どちらとも美しいカップルです。ところで舞台と映像の違いはいかがでしたか。
片岡:歌舞伎だったら、鬘を被ってからはずすまで2時間位です。でも撮影だと朝から晩までと被っている時間が長い。鬘を長くつけていると、体力的にきついんですよ。疲れるというレベルでなく気を失うほどの疲労度なんです。

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(C) 2007 Beauty Partnership

―そんな二人の間に麻生さんが入られたわけですが。
片岡:共演者はある意味で敵です。敵を知ろうと思って、撮影の前にDVDを観たんですが、麻生さんは役によってぜんぜん感じが違う。凄い役者さんだなあと思いました。でも現場では気さくな人でしたね。この物語には舞踏のシーンもあって、麻生さんは大変だったと思います。夜中まで旅館で踊りの練習をしていました。
―半次と雪夫、歌子とこの作品は恋の物語でもありますが、3人の関係性はどうなのでしょう。
片岡:それについては3人で何度も話したんですが、正直答えが出ませんでした。解んないですね、この関係。相手役を超えた思いがあるとは思うけれど、子供時代の出会いにしても友情を超えそうで超えない。何かあるんだろうと思わせながら踏み込んでいかない。微妙なんですよ。ただ半次が歌子を好きだったのは事実で、雪夫との二人の思いに気付いていたから引き下がる。そこのあたり、実は僕にもそんな経験があって、しかも譲った相手が死んでいるので、自分の経験とオーバーラップしてしまいました。

―二人の間の感情は歌舞伎の世界そのもののようにも思いますが。舞台上で疑似恋愛はありますか。
片岡:しょっちゅうしています。相手役のいいところを一生懸命考えて、自分の中にそんな感情を膨らませるんです。後、僕は女形なんで、かさかさの手では相手に申し訳ないから、クリームを塗って手入れを怠らないとか、相手にもそんな感情を持ってもらえるように努力すると。舞台上の疑似恋愛は見てくださる方に何らかの形で伝わると思っています。
―そんな感情も舞台を降りるとすっと引くんでしょうか。
片岡:僕の場合は引きます。

―恋愛、歌舞伎、戦争と色々なシーンがありましたが、一番楽しかったのは何処ですか。
片岡:半次の引退興行のシーンですね。苦労もしたんですが、ふだんから変身願望があるので、いつもやらない男役でしかも年寄りの役というのが演じ甲斐がありました。年寄りの芝居は、体力的な力は無いけれど形がいい。僕らは力が入ってそれが自然と形に出てしまうけれど、年寄りのそれは力みが無い分何ともいえない味があります。あのシーンは、長袴を履いていますが、あれはよっぽど足が強くないと裁ききれずに転んじゃう。実際よろけるんですが、よろける風情も渋くて良いですよね。歌舞伎役者は小さい頃は女役・男役と両方やっていて、だんだん振り分けられていくんですが、いつもは女役だけれど、祖父も父も男役です。今回両方をやりましたが、祖父たちが出来て僕ができないと言うのは悔しいんで、いつもとは違う男役が出来たのも喜びでした。

―田舎暮らしのご経験はありませんよね。
片岡:ありません。だから撮影に行くと新鮮で嬉しかったですね。星空が綺麗で、3階建ても無いようなところなんで、東京に帰ってくるとビルに囲まれた世界が嫌になりました。ただ本当に不便なところで、ダム沿いの道を行くんですが、「今日は通れます」と書いてあるような、しょっちゅう落石で通行止めになる、落石で人が亡くなっているようなところなんです。シベリアのシーンは、最初は本当にシベリアに行こうかと言っていたんですが、予算の関係で霧が峰で撮りました。それでもマイナス15度。服が凍るんです。カイロを手袋の中、靴の中、帽子の中と体中のありとあらゆるところに張りました。キャンピングカーを控え室にして、トイレも近くのスキー場まで車で連れて行ってもらうような過酷なものです。このシーンはリアリティを出す為に弁当も食べずお腹をすかしていたんですが、愛之助君と温かいものでも食べたいなあと言って、「トイレに行きたいといってスキー場に連れて行ってもらって、あそこでカレーを食べよう」と相談し、こっそり食堂でカレーを食べたんですが、美味しかったですね。それでも半分は残しました。

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―完成した作品をご覧になっていかがでしたか。
片岡:台詞が少ないのを心配していましたが、スクリーンで見ると少なくても伝わっているなと、安心しました。日本の原風景を映した素敵な作品に仕上がっているので、多くの方に見ていただきたいですね。
―台詞が少ないことに見たほうは気が付かない。歌舞伎役者としていつも体や表情で感情を表現する訓練をされているので、お二人の映像が台詞以上に雄弁でした。後藤監督がそのあたりを充分計算して作られているんだと思います。(聞き手:犬塚芳美)

《作品の感想とインタビュー後記:犬塚》
 <3人の恋模様>、特に半次と雪夫のそれが美しく描かれています。恋なのか友情なのか摩訶不思議な人を慕う気持ち。誰かを思う心に男女の境界や区別はない、魂の共振し合う相手への思いは時に恋のようなものというのが、私の感想です。そんな二人を、男役・女役としていつも舞台で共演しているお二人に託した監督の思惑。戦争をはさんだある時代のある村のこの物語が、時代、土地、性別を超えた普遍的な物語に広がっていく所以でしょうか。
 <後藤監督の出身地、伊那路村の美しい>風景もこの物語のもう一つの主役です。13年前から故郷に住む監督が伝統芸能の宝庫のような村を、誇らしげに案内している。その村歌舞伎の形で、物語を彩る歌舞伎も見逃せません。本歌舞伎で演じられる代表的な演目から、伊那地方だけに伝わる演目までの数々の美しい舞台は、ぜひスクリーンでお楽しみください。

この作品は、4月11日(土)より第七藝術劇場で上映
        11日17:00よりの回上映後に
           後藤俊夫監督と片岡孝太郎さんの舞台挨拶予定
      5月、京都みなみ会館にて公開予定
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| | 2012年06月13日(Wed)21:30 [EDIT]


 

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journalist-net | 2009年04月10日(Fri) 07:47


 
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