太秦からの映画便り

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映写室 「遭難フリーター」岩淵弘樹監督インタビュー(前編)

映写室 「遭難フリーター」岩淵弘樹監督インタビュー(前編)  
 ―人生に遭難したのは自分のせい?時代のせい?―

 実感がないまま、未曾有の不景気だと騒ぎ立てるマスコミを見ていたら、いつの間にか足元も深刻な事態になってきた。そんな現状を、派遣切り、格差社会、ワーキングプア等々言うが、ここに映っているのはそれとも少し違う。本人には深刻だけれど大人から見るとどこかゆるい若者の生態だ。この映画を厳しい現実と取るか、甘えた若者の生態と取るかは受けてしだい。でも「それでも自分らしく生きてやる」と言う、主人公の不敵さに自分の若い頃が重なる。片隅に置いたカメラの前で淡々と日常を続けたという、岩淵弘樹監督にお話を伺います。

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(3月16日 大阪にて)

<その前に「遭難フリーター」とはこんな作品>
 岩淵弘樹・23歳。平日は製造業派遣の大手からキャノンの工場に派遣され、時給1250円での単純作業。週末は早朝の電車で東京に出て日雇いの派遣を探す。学生時代に作った借金の返済もあり、時には1ヶ月の生活費が1万円。フリーターの権利を求めるデモに参加し、メディアの取材を受けるが、映った自分は何処か違う。大人に甘いと説教されると、「一生派遣を続けますよ」と反抗したくなる。


《岩淵弘樹監督インタビュー》
―大変な生活が映っていますが、そこから抜け出して就職されたそうですね。
岩淵弘樹監督(以下敬称略):就職したんですが、おととい辞めると言ってしまいました。
―え!(絶句!)何故?
岩淵:フジテレビの番組の製作会社にADとして入ったんですが、元々現代アートの番組のADと言う事だったのに、会社の経営上からもそれ1本では難しい。2,3本兼任しないと無理だと言われました。番組が重なってどんどんスケジュールが詰まって来始め、このキャンペーンも前から決まってて休むと言っていたのに、会議があるから無理と言われ、融通が利かなくなって「じゃあ、辞めます」と言ってしまったんです。現代アートだから受けたのに、「〇〇〇〇」とかの番組で、ディレクターとして構成会議に出ると、取材と言いながら最初に応えありきの姿勢でドキュメンタリーを作っていく。事前に用意した答えの為の番組なんておかしいじゃあないですか。それに失望したのもあるし、元々テレビ業界とかADに拘っていた訳じゃあないんで、自分の興味のない番組もしないといけないとなると、こんなこと我慢しながら生きる事に意味があるのかと思い出し、嫌になって辞めると言いました。我侭と言われればそれまでだし、仕事はそんなもんだとも言われるけれど、僕の甘さかも知れませんがこんな風にしか生きられないんです。

―この映画を観てご両親は何と?生き方とかについては?
岩淵:両親は嫌がってまだ見ていません。父はタイトルからして観たくないと言いました。生き方については何も言われないですが、僕がこんな風にフリーターなのにも怒っていて、ちゃんとした仕事について欲しいといつも言っています。
―のんびりと育てられたんでしょうね。
岩淵:50代半ばの両親と弟の4人家族で、父は地元で居酒屋をやっていて、ちゃんと暮らしている。弟は東京でフリーターをやりながらバンド活動をしています。両親が病気だったりとか家が大変な状態だったら、僕もこんな生活はしないと思うので、両親がちゃんとしていて大丈夫なのに甘えているのかもしれません。元々、2006年3月の卒業予定で、地元の出版社に就職が決まっていたのに、単位不足で卒業が9月に伸び、内定が取り消されました。それでしかたなく地元でアルバイトしていたんですが、東京に行きたかった。でも東京で就職活動しようにも、拠点を借りる敷礼金等がなくて出来ない。そんな時に埼玉でキャノンの派遣の仕事を見つけて、住む所もあると書いてあるから、これで東京に近づけると思ったんです。

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(c)2007.W-TV OFFICE

―元々映画を作っていたんですか。
岩淵:僕は東北芸術工科大学の映像コースの出身で、クラスが写真とか、CD、ビデオと分かれていて、ビデオは僕一人で一緒にやる人がいないんで、セルフ・ドキュメンタリーの形で卒業制作とか作っています。大学三年の時、身近な問題をなんか撮ることになって、習作で10分位のじいちゃんの映画を撮りました。じいちゃんは戦争体験とかも話すような面白い人なんですよ。と言っても、じいちゃんと言うと死を連想するんで、じいちゃんと死を結びつける為にお墓を撮りに行ったりとか、カメラの前で何かが起こっているようなドキュメンタリー本来の面白さがあるものではないです。山形で何ヶ月かに一度、ドキュメンタリーの監督を招いてワークショップがあるんですが、誰か自分の教わる監督を選ばないといけない。土屋豊さんの「新しい神様」を観て、自分に近いというか、解りやすいと言うか、現代的だなあと思って、土屋さんを選択しました。その土屋さんが雨宮処凛さんと一緒に山形に来た時、自分の書いた企画書を見せたりしたんです。その後の飲み会で、「毎日つまんない」と言ったら、雨宮さんが「そんなにつまらないなら一緒に行く?」と言うんで、家族に反対され友達にも全員反対されたけれど、人間の盾としてイラクに行きました。戦争反対とかそんなんじゃあなく、テレビの向こう側の世界が自分の命の問題になるとか、身近になる事へのスリルや刺激で行っただけです。でも実際に行ってみると、イラクの人たちはのんびりしていた。ただ劣化ウラン弾の被害者等に会うと、戦争は悲惨だなあとは思いましたが。帰国した後で自分のいた所が爆撃されるのをテレビで見たけれど、それでも反戦の映画を作ろうとは思わなかったです。帰ってからも東京で暮らしたいと思いながら、大学時代の借金もあって、地元で身動きが取れなかった。キャノンの派遣はそんな時に見つけた仕事でした。その頃は派遣という言葉もあまり使われてなかったんです。で、二人に派遣で埼玉に行くと言ったら、「面白そうだね。その生活を撮ればいいのに」と言われて、そのまま撮り始めました。いつか映画になったらいいなとは思いましたが、とりあえず自分の生活の記録として1年間撮ったんです。2007年の3月に撮影を止め、山形の映画祭にまにあわそうと、実家に帰って2・3ヶ月で編集をしました。構成とかは土屋さんとFAXで意見を送り合いながらの仕事です。

―その間にも世の中の雇用状況は益々厳しくなってきましたが。上映会での反応はいかがですか。
岩淵:労働組合の自主上映とか単発のものはありますが、まだ一般上映はないんです。ただ試写会で、「派遣村に行ったのは自分の責任だ」と言われたし、そういう見方をする人にはこの映画は説得力がないとも言われました。当時は、こういう生き方しか出来ないけれど、それでも生きるんだと言うつもりで作ったんですが、甘いというか軟弱というか、そういう生き方を選んでいるのも自分だと言われた。僕は何かに熱中するということがなく、何に対してもテンションが低いけれど、こんな風に続けられたんだから持続力はあるようです。

―借金の総額は?
岩淵:全部で600万円です。そのうち奨学金が400万で、後はサラ金等で200万円の借金があった。イラクに行ったり半年の留年で授業料も余分に要りましたから。奨学金分は40歳まで毎月1万7千円返す仕組みです。親には隠していたんですが、山形の映画祭で留守にしている間に実家に督促状が届いてばれました。思いっきり叱られ、何も言い返せなかったですね。で、じいちゃんの貯金とかや親からも借り、百数十万円の入った封筒を渡された。毎月月末になると金策に走り回って大変だったんだけど、その薄っぺらさに、俺はこんなものに振り回されていたんだなあと唖然としたというか、正体を見てショックでした。
―どれ位で暮らしていたんですか?
岩淵:ばれた後で、収入を全部いったん親元に送り、そこから6万僕の方に送ってくるという風に、親にお金を管理してもらうようになったんです。でもサラ金のことは親に話してないから、そこから返さないといけない。そうしたら1万位しか残らなくて、それで1ヶ月暮らしていました。(聞き手:犬塚芳美)
                      (明日に続く)

この作品は、4月11日(土)よりシネマート心斎橋で上映
   11日は各回上映後、岩淵弘樹監督の舞台挨拶があります。
   時間等のお問い合わせは直接劇場まで(06-6282-0815)
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