太秦からの映画便り

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映写室 「遭難フリーター」岩淵弘樹監督インタビュー(後編)

映写室 「遭難フリーター」岩淵弘樹監督インタビュー(後編)   
―人生に遭難したのは自分のせい?時代のせい?―

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(c)2007.W-TV OFFICE

(昨日の続き)
―仕事の様子は映らないし、派遣の大変さより青春ぽい作品だと思ったんですが。
岩淵:工場の中は撮れないんです。撮り方も適当で、これを(と小さいカメラを見せて)横において、カメラを意識しないで日常を続けました。自己演出もしていません。とにかく生活の記録をとろうと思って、カメラは回し続けたんです。
―キャノン工場の派遣の方たちとの人間関係とか、そこの辺りを少し伺えますか。
岩淵:派遣の中の人間模様はさまざまで、関係性は作れないですね。それを避ける人もいますから。1日で辞める人も、給料日の翌日にもう来なくなる人もいます。23歳の僕が最年少でした。何で来たかはさまざまで、行く会社行く会社が潰れて(仕様がないよな)という人もいるし、水商売に失敗してやくざに追われている人もいる。俺のようにしようがなく来た人もいれば、派遣を選んできた人もいました。派遣の製造業はまさに単純作業、仕事をやってもスキルアップにはならない。いつかはここを出たい、出ないといけないと思いましたが、そんなことを思わない人も多いんです。出来るだけここにいたいと思う人もいて、状況が解ってないというか、ちょっと辛いですね。映画に映らない、撮影不可能だったそんな諸々は、本に書いています。(書籍版「遭難フリーター」太田出版)

―キャノンで働きながらも週末は東京に行っていましたよね。
岩淵:金曜の夜12時に仕事が終わって、土曜の朝5時か6時の電車で東京に出て行く。今考えてもなんであんなに東京に拘ったのか解らないし、あの頃の生活をもう一度やれといわれても無理だけれど、撮っている時は、自分の生活を記録するというテンションに引っ張られて続けてあんな事が出来ました。編集中もまだ熱が残っていて、当時の前のめりの姿勢が消えたのはこの1年位です。
―ラストの音楽が流れるシーンがいかにも青春映画ですが。
岩淵:ラストシーンを撮ったのは2月頃です。山形映画祭が5月なんで、それまでには作らなくちゃあと思っていて、時間的にもぎりぎりでした。あのシーンがあって、これで終わりだなあと、思いましたね。これが伝わるかどうかはともかく、ここに自分としての主張や希望を置きたかった。音を入れたのは意図的です。こんな生活もいつか終わりがあると思いたかったし、自分のそんな時代の終焉かと。と言ってもそのあとも派遣暮らしは続くんです。派遣が終わったのは先月で、でもそこも今度辞めますが。「〇〇〇〇」の仕事で、仙台の派遣村を取材したら、俺と同じ頃にキャノンで働いていた人もいたんです。ADの仕事を続けていたら、そんな人に出会える機会も増えるだろうけれど、その前段階でバラエティーもしないといけないのに迷っているところです。

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(c)2007.W-TV OFFICE

―最初からある程度の構成は考えていたんですか。
岩淵:いいえ。プロットがあったわけでもありませんし、ナレーションとかは後で入れたものです。だから後でどうにでも使えるように、どう使うかは考えずに撮っておきました。題名も最初は違っていたんですが、3人で喋っていて、「ブッチは自分で迷ってる感じだよね。自分で遭難したんだ」と言われて、「遭難フリーター」となりました。
―映画の中で勝ち組のはずのNHKの方が自分の大変さを話していますが。
岩淵:思ってもいない事でした。実はこのディレクターとは結構話をしていて信頼し合える仲になっていたんです。だからあんな事を言ったんでしょうが、本当は聞きたく無かった。貴方が貴方の意図で作るように、僕は僕で言いたい事を伝えるからと言いたいです。

―岩淵さんの同級生たちはどんな生活ですか。
岩淵:皆地元の大学を出て地元の企業に勤めてと、堅実です。でも3,4年経つと、なんで俺はこんな事をしているのかと後悔してくる。僕の事を自由で良いねというけれど、いや君らもボーナス貰って良いじゃあないかとこっちは思う。そのうち親が病気になったりと家の事情が出来て、そんなやつは続けられるし、皆何らかの続ける理由を探していると思います。僕は一般的ではないけれど、悩んでいるという意味では皆と一緒かもしれません。いい意味でも悪い意味でも僕はピーターパン症候群。だからといってピーターパンなのを恥じてはいない。
―今の日本に再チャレンジのチャンスはあると思いますか。
岩淵:年齢の壁がありますね。30,40代でこんな状態だと、何とか仕事が見つかるのが幸せというレベルで、2年かかって正社員になった人もいます。チャレンジがチャレンジになっていない。

―映画が完成していかがですか。
岩淵:自分の日常を撮っただけなのにこんなに注目されてと思います。僕は何にも変わっていないから、何処か他人事なんですよ。でもこうして話を聞いてもらえるのも祭りで嬉しいです。テレビ番組のコメントを求められたりしますが、例えば派遣村とかどう思いますかと聞かれて、「自己責任だと思います」と言わせたいだけの取材もありますし、この騒ぎが終わったら隠居しようと思っています。
―全てはお祭りですか。
岩淵:ええ、中でも山形の映画祭で上映した時が自分的には最高で打ち上げ花火でした。自分の作品が映画館のお客様の前でかかっているというのが嬉しく、その残り火がずーっと続いている感じです。これからも映画を作りたいけれど、出来れば仕事としてやらないほうがいいという気がして。色々面倒くさいですから。

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(c)2007.W-TV OFFICE

―外国の映画祭でも上映されましたね。反応はいかがでしたか。
岩淵:香港の上映会に行きましたが、海外メディアは日本の若者がこんな事になっているのに驚いたようです。どうしてこんな事になっているかに興味があるようでした。
―作品を撮った後と前で何か変わりましたか。
岩淵:本質的には変わらないけれど、文字通り大人になったと思います。映画の中でもおっさんに「君は間違っている」とガツンと言われて、「じゃあ僕は一生フリーターで行きますよ」と言っていますが、そんな事とかも聞き流せるようになりました。
―流すだけですか?
岩淵:いえ、しっかり受け止めて後でへこんでいますよ。怒って解決したくないんです。そうだよなあと思いながらも、しょうがないんだよなあというのがある。この映画の中の甘えも含め、だらしなさも含め、図太さも含め、見る人にとっては不快かもしれないけれど、それぞれに捉えてもらうしかありません。

―チラシ等のイラストは真鍋昌平さんですが。
宣伝:1回断られて、岩淵が手紙を添えて送って、作品を観てもらったら気に入ってくださって描いていただけたんです。
岩淵:お忙しい方なのに感謝しています。マックを食っているとことかお願いしたんですが、こんな風に出来上がってきました。最初はちょっと違和感がありましたが、だんだんこんな風かなあと。複雑ですよ。
―え? 映画の世界にぴったりだと思いましたが。
岩淵:確かにこの通りかもしれないけれど、(ああ、自分はこんなふうか)と思ってみると複雑ですよ。自分の事ですから。それと僕は有名な方の客で良いのに、こうして描いてもらっておこがましいというか。音楽にしても僕がファンだった方に参加していただけて、嬉しいというよりおこがましさで一杯です。(聞き手:犬塚芳美)

《作品の感想とインタビュー後記:犬塚》 
 <アドバイザーの二人が>、主人公を「勝手に自分で迷って遭難している」と思って題名をつけたように、この作品を派遣ギリとか、ワーキングプアとか社会現象だけで捉えるのは片手落ち。彼の置かれた現状はそうでも、ここに溢れているのは、形のない自分らしさを貫くことが自分らしい生き方だと信じる、良くも悪くも図太くて頑固な若者の物語。遠い日の自分と何処か似ていて青春物語として見ました。若さというマグマは収まる時があるのか、収まった時に再チャレンジの道はあるのか、それがないと、聞き分けのいい訳知り顔の小粒な青年ばかりになると思うのですが。
 <自分で勝手に迷って遭難しながら>、そんな生き方を止められない若者の心理を、もっと掘り下げて聞きたかったのに言葉にならない。纏めきれない彼の回答からほのかに浮んでくるものがあるといいのですが。ところで、映像には心までは映らない。書籍版のほうに彼の姿がよく現れています。映画の後で、本を読もう!


この作品は、4月11日(土)よりシネマート心斎橋で上映
   11日は各回上映後、岩淵弘樹監督の舞台挨拶があります。
   時間等のお問い合わせは直接劇場まで(06-6282-0815)
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| | 2012年04月29日(Sun)05:10 [EDIT]


 

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journalist-net | 2009年04月07日(Tue) 07:36


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負け組みも勝ち組もない? 久しぶりの更新となりました・・・ (゚∀゚)アヒャヒャ 先日、『遭難フリーター』なる映画を観て来ました。  2時間も無い短い時間のなかで、派遣社員のリアルな日常がえがかれています。ハンディカメラで岩淵監督が自分自身を撮り続け
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学歴なんかふっ飛ばせ | 2009年04月21日(Tue) 13:14


 
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