太秦からの映画便り

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

映写室 「バオバブの記憶」本橋成一監督インタビュー(前編)

映写室 「バオバブの記憶」本橋成一監督インタビュー(前編)    
 ―35年前の出会いから―

 本橋監督が初めてバオバブを見たのは、今から35年前のこと。その時からこの樹に心を奪われ、「いつか映画に撮りたい」と温め続けた構想が実現した。セネガルの小さな村の、バオバブの樹とそんな樹と共に暮らす人々を映せば、後ろにはアフリカの珍しい風景が広がり緩やかな時の流れが浮かび上がる。68年「炭鉱(ヤマ)」での第5回太陽賞等多くの受賞暦を誇り、写真家としても有名な本橋成一監督に伺いました。

baobabu-kan.jpg
(3月24日 大阪にて)

<その前に「バオバブの記憶」とはこんなドキュメンタリー> 
 アフリカ大陸の西、セネガルの首都ダカールから車で2時間のトゥーバ・トゥール村には、沢山のバオバブの樹があり、人々はその樹と共に昔ながらの素朴な生活を続けている。12歳の少年、モードゥは20人もの大家族の次男。コーラン学校に通っているが、本当はフランス語学校へ行きたい。でも家の手伝いが忙しく、父は行かなくていいというのだ。牛を追い農作業を手伝い、バオバブの樹の下で遊び今日も一日が暮れる。


《本橋成一監督インタビュー》
―ドキュメンタリーなのに寓話の世界に迷い込んだような幻想的な世界が広がっていますが、それは監督の作風ですか。それともこの村の持つ空気感でしょうか。
本橋成一監督(以下敬称略):僕のドキュメンタリーは、元々ドキュメンタリーらしくないドキュメンタリーなんです。僕は基本的に劇映画とドキュメンタリーの違いがないと思っていて、面白いものを撮っていると物語的にもどこかで繋がっていく。「ナージャの村」も、「アレクセイと泉」もそんな風にして作りました。
―作風だけでなく、この土地自体が霊的な時間を纏っているように見えますが。
本橋:もちろんそうです。この映画の舞台になっている所は、本来の地球の時間で時が動いている。東京や大阪にいると時間の流れが速く、例えば冬でもトマトが出来るし、鶏は365日卵を産む。これは不自然な事で、自然や動物が本来持っている時間を人間が都合のいいように操作して早めていますよね。そんな事が何時までも続くわけがない。もうそろそろ限界で、このあたりで立ち止まって考えないといけません。バオバブは500年、1000年と人間の暮らしを見ています。一生の短い僕らが見れるのなんて高々知れているけれど、バオバブの樹に聞けば、本来の時間、本当に大切なものが解るんじゃあないかと思って撮りました。撮影の合間に大樹の下で休んでいると、自然に謙虚な気持ちになる。バオバブの見てみた記憶、過ごしてきたゆったりとした時間が伝わってきて心地良いんです。

―画面からもそんな雰囲気が伝わってきます。ところで樹齢500年とか1000年とかは、どうやって解るんですか?
本橋:長くなると祠が出来るんで年輪では解らない。1年に大体このくらい大きくなるというのがあって、それを元に計算するようです。バオバブは切られないから自然に枯れるまで生き続けて、樹齢1000年、2000年というのが沢山あります。
―バオバブを撮りたいと思われたのは、確かアフリカで、象がバオバブの樹を倒しているのを見たのがきっかけでしたね。
本橋:ええ。テレビ番組の撮影で東アフリカのツァボ国立公園に行った時、象がバオバブを倒していました。その年は十数年ぶりの干ばつで、象も水がなくて困って、幹や根に大量の水を含んでいるバオバブを倒して水分を得ようとしたのでしょうが、マサイの長老が、「こんな光景は見たことがない」とつぶやいたんです。自然界の動物は何でもとり尽くす事はしません。又来年も恩恵を受けたいから、再生できるように必ず残しておく。象とバオバブも、何千年、何万年と共生してきたのに、それが壊れてきていると気付きました。それから気になって、何かの撮影で行ったついでに、バオバブを撮ってくるようになりました。

―バオバブは確か「星の王子さま」に出てくる木ですよね。砂漠にあるイメージですが。
本橋:ええ。インドでも見ましたが、サバンナ気候のところにあります。この村も気候変動は雨季と乾季で、雨季は4ヶ月、乾季は8ヶ月続きます。「星の王子さま」では根っこが地球を壊す悪い木だからと、王子さまは芽が出ると摘んでしまうんですが、実際のバオバブは大地の許しを得て芽が出ていると言われて、発芽率が低いのと、人が植えても枯れてしまうんでそうしてきたようですが、何処から生えようと抜かないし切らない。だから今までは道の真ん中に大木があったり、道路がバオバブの樹をよけてそこだけ曲がっていたりした。でも開発ラッシュで変わってきています。宅地造成等の土木工事に中国人が入っていますが、効率が大事な彼らはそんな文化を理解しない。現地の人は例えばブルドーザーで工事をする時、車輪の横に祈祷師を乗せて、「切っても良いですか」とバオバブの樹にお伺いを立てるらしいです。で、「3週間待て」と言うと本当に3週間待って、もう一度「如何でしょう」と聞くと、今度は「明日動く」と言う。これでやっと工事が出来るわけです。

baobabu-2.jpg


―樹に人格が宿っていると言うか、神秘的ですね。
本橋:バオバブは人間とのかかわりが深いんですよ。この樹を見つけると必ず近くに人間が住んでいます。南の島で1本の椰子の樹があると生きていけるというのに近く、バオバブには100通りくらいの用途があると言われ、例えば葉っぱは乾燥して粉にするし、種からは食料油をとるでしょう、幹は薬にもなるし、樹皮の繊維からはロープを作る。このあたりの井戸は深いんで、丈夫なバオバブの繊維で作ったロープでないと水が汲めなかった。ほとんどナイロンのロープになりなしたが、今もバオバブのロープを使っている井戸が1つあります。葉っぱから樹皮、実、殻、種と全てが役に立って、人間だけでなく生き物全てがこの樹のお世話になっている。
―樹齢の長さと共に神格化される所以ですね。
本橋:日本でも古木になると天然記念物になったりしますが、そうなると祭り上げられて人間との関わりが見えてこない。でもバオバブは違う。この樹ほど人間と関わっている樹は他にないですね。

―皮を剥ぐシーンがあってドキッとしましたが、枯れないんですね。
本橋:内側までは剥がないとか、剥ぐルールがあるんです。年上のものから教えれて、そのあたりのルールを代々受け継いでいく。この樹のもう一つの特徴は、皆の心の支えと言う部分で、精霊が宿っていると信じています。困った事があると樹の元に集まってお願いをするし、お願いのお返しでしょうがお供えをして、収穫の感謝祭もする。後、病を治すとも信じられています。例えばこの作品のプロデューサーは女性で、ずっと子供が出来なかったんだけど、映画に出てくる92歳の長老に、子供が出来るようにと相談すると、本当に出来ちゃった。そんな話を向こうで話すと、「良かったな、やっぱりあの長老は凄い」となる。そういう世界なんですよ。東京で過ごしていると(本当かな?)と思うけれど、向こうの時間の流れの中にいるとそんな事が信じられる。もちろん漢方の薬も貰うんですけどね、僕はそういうのを信じたいんです。この地では子供が生まれないのは致命的なので、バオバブの樹はそんな意味でも、名医なんです。(聞き手:犬塚芳美) 
                                 (明日に続く)

この作品は、4月18日(土)より第七藝術劇場で上映
        順次、京都シネマ・神戸アートビレッジセンターにて公開


※この映画を観て、環境や自分たちの今の生活を考えるきっかけにしてもらえたらと、初の試みで「エコサポートチケット」の販売があります。それは「バオバブの記憶」を下記劇場でご鑑賞の際、当日一般料金1,500円をお支払いいただくと、そのうち200円が「国際協力NGOセンター」(JANIC)の運営する「NGOサポート募金」を通じ、海外で環境保全などを行うNGO団体の活動に提供されるという仕組みです。
 ご協力下さった方には、「バオバブの記憶」本編のフイルムをリユースした特製オリジナルしおりをお渡しします。映画のどのシーンが写っているかは、その時のお楽しみ。詳しくはhttp://baobab.polepoletimes.jp/eco/をご覧ください。

スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 

トラックバック

TB*URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

映写室 「バオバブの記憶」本橋成一監督インタビュー(前編):犬塚芳美

  ―35年前の出会いから― (3月24日 大阪にて)  本橋監督が初めてバオバブを見たのは、今から35年前のこと。この樹に心を奪われ、「い...
[続きを読む]

journalist-net | 2009年04月16日(Thu) 07:43


 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。