太秦からの映画便り

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映写室 「バオバブの記憶」本橋成一監督インタビュー(後編)

映写室 「バオバブの記憶」本橋成一監督インタビュー(後編)
    ―大樹の周りに流れるゆったりとした時間―

(昨日の続き)
―伺えば伺うほど神秘的です。
本橋:実は樹齢4000年のこの樹を(と、写真集を見せて)撮りたかったんですが、ロケハンに行ったらもうなかった。この樹は実はお墓でした。アフリカには文字がないんで、文化は語り部等で伝えられ、グリオと言う吟遊詩人がその役目なんですが、彼らが亡くなるとバオバブの幹に穴をあけてそこに埋葬する。彼らは土の中に埋めると歌が唄えないと言うんですよ。でもこの樹がグリオの墓で有名になると、観光客がいっぱい来てその遺骨を持って帰ったりした。これじゃあいけないと、村人たちは穴から遺骨を集めて土の中に埋めたんです。そうしたら樹のほうが枯れてしまった。村の人に「どうして枯れたんでしょうねえ」と聞くと、「役目が終わって用事がなくなったからでしょう」とすまして答えるんですよ。

baobabu-1.jpg

―そんな話はモードゥ等若い世代も信じているんでしょうか。
本橋:部分的には受け継いでいます。モードゥは薪拾いに行ってもバオバブの枝は拾いませんからね。彼のお父さんがフランス語学校に行かなくても良いと言いますが、学校に行ったらテレビとか色々欲しいものが出てくる。でもこの村にいる限り手に入らないから、彼のような男の子は村を捨てて出稼ぎに行く事になります。物質的な豊かさを求めて、もっと豊かな他の多くの文化を捨てることになる。「お前は学校に行かなくて良いんだよ」というお父さんの言葉も、ある意味で正しいかもしれません。もっともそう言うお父さんは、雑穀の商売で稼いで、色々なものを手に入れているんですが。僕の育った頃は高度成長の時代で、物が増えるのが嬉しくて仕方がなかった。でもそういうのは切りがなくて、続けていたら大変なことになる。一つの豊かさを手に入れる陰で、別の豊かさを削っている。僕が写真を撮る時のテーマは大体そういうものです。外国、例えばヨーロッパに行くと駅は元々広場で人の集まる場所だった。でも今は単なる駅で5分前しか列車のドアが開きません。もうそろそろ、電車を10分速く走らせる豊かさよりも、10分遅く走らせる豊かさに気付くべきだと思うのです。僕の写真集「東京駅」もそんな変化を残したくて、新幹線の走る3年前から撮り始めました。

―少年の家には電気がありましたが、村全体ではどうですか。
本橋:家によって違いますが、10軒に1軒くらい電気が来ています。これが全部に引かれるようになり皆がテレビを見始めると、電力事情は大きく変わるでしょうね。ここにも原子力発電が必要になるかもしれない。
―女の人たちが皆さん綺麗な衣装を着ていましたが。
本橋:大体すぐに晴れ着を着たがりますね。小さいお祝いでも綺麗なものを持ってきます。
―それって村で織っているんですか。
本橋:違います。買ったものです。セネガルの重要な現金収入に落花生があって、この村でも落花生の栽培から現金が入ってきます。よその村は地下資源とか色々あって開発が進むけれど、この村にはないので、開発されず昔ながらの文化が残っているんです。もう少し内陸に入ると同じような暮らしが残っていますが、ダカールの近郊は開発されてしまいました。
―先生が村人より数段豊かに見えましたが。
本橋:彼女自身がダカールでそういう教育を受けたのもあるんでしょうが、夫がイタリアに出稼ぎに行っていて仕送りがあるんですよ。仕送りの度に家を建て増ししていました。でもたぶん不法滞在なんでしょうね、一度帰るともう行けないから帰ってこれない。考え方も進歩的で、例えば女性問題なら、ここを卒業しても女の子たちにメイド位しか仕事がないという現実は、何とかしないといけない等話していました。

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―子供たちが多いから先生は忙しいですよね。
本橋:彼の家も20人家族で子供が一杯います。ただし実は隣の子供が紛れ込んでいたりもする。行き来が自由で、大勢の中の中で家の子他所の子の区別もなく、皆に可愛がられてすくすく育つんです。ぽんと預ければ誰かが育ててくれるんだから、これなら安心して生める。僕らの社会よりよっぽど進んだ社会かもしれません。
―第一夫人と第二夫人が同居していて仲が良いのも不思議ですが。
本橋:そうでないと女性があぶれて暮らしていけないと言うのが根底にあるんでしょうが、回教は4人まで妻帯出来る。ただし平等に扱わないといけないんで、経済的にも大変です。ここは2人ですが凄く仲が良い。だいたい、自分が年を取って家事がしんどくなると、「ウチの旦那にいい娘を」と第一夫人が言い出し、おめがねにかなった自分の言うことを聞く娘を第二夫人に迎えさせる。そうして自分は夫と第二夫人の両方をコントロールできるというわけです。もっともこの仕組みも最初に女性が嫌だと言えばそれまで。結婚の時に重婚しない事を宣言さすことも出来ます。又5パーセントはキリスト教徒ですから、そちらは重婚は出来ません。

―ナレーションが橋爪功さんでしたね。
本橋:原稿は僕がぜんぶ書いて、僕の代わりに語ってもらう訳ですから、僕が器用に喋れないので、少しもたもたした人がいいと思っていたんです。僕というより、プロデューサーが橋爪さんのファンでお願いしました。
―いつもの橋爪さんよりさらに朴訥とした語り口で、最初誰だか解からなかった。いい味わいだなあと思ってラストの字幕を見たら橋爪さんでした。
本橋:そうでしたか。最初に色々状況を説明してお願いしたので、役者さんですからこちらの意を汲んでそのように喋って下さったんでしょう。橋爪さんでよかったと思います。
―撮影は一之瀬正史さんですね。
本橋:ええ、彼はドキュメンタリーのフィルムを回させたら、NO.1の実力者です。僕はフィルムが好きで、手間隙もかかるし、お金もかかるけれど、何ともいえない味わいがあるから大切にしたくて拘りました。贅沢な映画になっています。
―柔らかい映像が素敵でした。ところで又バオバブや少年に会いに行かれますか?
本橋:ええ、この作品を見てもらいに行きます。村では大騒ぎになるでしょうねえ。(聞き手:犬塚芳美)


この作品は、4月18日(土)より第七藝術劇場で上映
       順次、京都シネマ・神戸アートビレッジセンターにて公開


<インタビュー後記:犬塚>
 監督の専門が写真だけあって、全てのシーンが1枚1枚絵になる美しさ。しかも大樹に守られた村のゆったりとした時間が映り、スクリーンに広がっています。旅情をそそられ、バオバブに会いに行きたくなりました。学校に行きたいと訴える少年のはにかんだ瞳が忘れられません。


※この映画を観て、環境や自分たちの今の生活を考えるきっかけにしてもらえたらと思い、初の試みとして、「エコサポートチケット」の販売をします。
これは「バオバブの記憶」を下記劇場でご鑑賞の際、当日一般料金1,500円をお支払いいただくと、そのうち200円が「国際協力NGOセンター」(JANIC)の運営する「NGOサポート募金」を通じ、海外で環境保全などを行うNGO団体の活動に提供されるという仕組みです。
ご協力下さった方には、「バオバブの記憶」本編のフイルムをリユースした特製オリジナルしおりをお渡しします。映画のどのシーンが写っているかは、その時のお楽しみ。詳しくはhttp://baobab.polepoletimes.jp/eco/をご覧ください。
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映写室 「バオバブの記憶」本橋成一監督インタビュー(後編):犬塚芳美

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journalist-net | 2009年04月17日(Fri) 07:50


 
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