太秦からの映画便り

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状況劇場から劇団唐組へ

映写室 「シアトリカル」上映案内
   ―映るのは今も残る70年代―

 このドキュメンタリーは、2006年秋に唐十郎が「行商人ネモ」と言う新作の執筆に取り掛かってから、翌春に初日を迎えるまでを追ったものだ。と言っても、最後に唐が、全ては虚々実々と一連の出来事を示唆するように、ここに映るのがドキュメンタリーなのか、カメラを意識した芝居なのかは、判別がつかない。

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(c)いまじん 蒼玄社

 <誰かに成りすますのが仕事の役者>や、妄想を紡ぐのが仕事の作家の日常を追って、それが真実と思うほど御目出度くはないけれど、演じているとしても、それこそが染み付いた習性で、彼らの日常なのだろう。唐を中心とした濃密な人間関係や、執拗な練習風景、私生活も芝居の為と言う偏執した生活を、まるで舞台のように観た。
 唐の一言で食事すら右往左往する団員、家族のような合宿風景、長年行動を共にした役者たちの唐との阿吽の呼吸等、この濃密着度がまさに劇団唐組だ。「シアトリカル」とは演じるとか劇的という意味らしいが、唐の周りには、何処までが本気で何処からが(相手の反応を探る為の)芝居なのかも解からない混沌が漂い、この言葉こそが唐の生き方。だからこそ目を離せない。団員はそんな唐に魅せられ、離れ時を見失った共犯者で、一番の観客でもあるのだろう。唐と言う教祖に集う信者にも見えた。

 <監督が大島渚の次男、大島新で>「情熱大陸」等アーティストに迫ったテレビドキュメンタリーの演出を数多く手がけているだけに、この集団の日常を解かり易くまとめている。唐にフィルムを意識した演技があるとしても、大島新の手法そのものが、被写体を淡々と追うドキュメンタリー作家ではなく、自分の視点でドラマを紡いで見せる手法なのだと思う。だからこれは、大島新の「これが唐十郎だ!」論だ。

 <状況劇場で一世を風靡し>、今も演劇界に異彩を放ち続ける唐十郎。これを見て、消えたはずのアングラの怪しさ、70年代の残り香が唐の周りに今も色濃く漂っていることに驚いた。彼はどんな風に時を止めて生き、70年代とはいったい何だったのだろう。
 あの頃に青春を送り、少しでも時代にシンクロしたいと思った者なら、埃っぽい大きなテントの中で体育座りをして、若かりし日の唐やその仲間を憧れの眼差しで追いかけた記憶があるのではないか。芝居の内容は忘れても、独特のテンポといつも中心に唐がいて、客席に熱気があったことだけは鮮明に覚えている。あそこに座ると次の日から何かが変わりそうに思った。「状況劇場」には時代の混沌を抉り出し、観客をそこに突き進ませるエネルギーがあったのだ。唐は今もそれを体現し続けている。

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 <そんな、時を越えた圧倒的な唐の力に魅せられながら>、実はそれ以上に心に残ったのは、あまりに普通の団員たちだ。特に、辞めようかと悩む後輩に、「私は団員だから」とだけ答えて涙を流す女優が忘れられない。彼女の涙は何だったのだろう。
 <昔、登場するだけで客席が沸いた>個性的な俳優たちは、ここを飛び出しそれぞれ活躍している。唐のオーラを吸収し、自らの光に変え、今度は自分の光を守る為に、無意識に唐と距離をとったのだと思う。強い個性で自分の色に染め上げる唐。星の周りを回る小惑星が、引力のバランスをとりながら自らで居続けるのは難しい。今も残っているのは、彼のオーラを浴び、なお且つ役者として自らも輝き、一緒に一つの劇を作ると言う難しい危険な命題に挑む者たちだ。でも外野がハラハラしても、彼らにその声は届かないだろう。もちろんそれに挑み続けさせるのが、唐の引力だけではなく芝居への情熱と言うのは間違いない。

 <たっぷりと魅せられた1本だ> あの時代を知る誰かとこの映画について話したくなる。これが映画第一作目の大島新監督は、ドラマでもなくドキュメンタリーとも言いがたい新しい手法を映画でも築いたと思う。次回作の主役は誰だろうと、興味を持った。彼の身近にも怪物がいるのだから。


 関西では2月16日(土)より第七芸術劇場で上映
   時間等は直接劇場まで(06-6302-2073)
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コメント


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唐十郎の舞台さながらの鋭い視線の横顔、其処に人がいれば素顔をさらす事が出来ないのだろう。自分でも舞台と日常の区別が付かなくなっているのではないか。昔の俳優の顔が白粉やけしていた様に、本人が舞台やけしているんだろう。

素浪人 | URL | 2008年02月10日(Sun)09:07 [EDIT]


ぜひ見てください。ドキュメンタリーでここまで引き込まれるのもめずらしい位の濃密さ。その後で色々お話したいです。

映画のツボ | URL | 2008年02月10日(Sun)22:56 [EDIT]


 

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