太秦からの映画便り

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映写室「ハリウッド監督学入門」中田秀夫監督インタビュー(前編)

映写室「ハリウッド監督学入門」中田秀夫監督インタビュー(前編)  
―撮影開始を示す「グリーンライト」が点るまで―

 衰退を言われても、ハリウッドはやっぱりみんなの憧れ。どこの国の映画界も一番のニュースは、ハリウッド進出です。世界の才能が結集するそんな場所で、自作のリメイク版『ザ・リング2』を撮った中田秀夫監督は、何を見て何を感じたのか。このドキュメンタリーは、監督目線の「ハリウッドって何?」を、グリーンライト、カヴァレッジ、テスト・スクリーニングと言う3つの言葉をキーワードにして読み解いたもの。中田秀夫監督に、自作についてとハリウッドでの体験を伺いました。米国を目指す業界人への貴重なメッセージも!

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(3月27日大阪にて)

《中田秀夫監督インタビュー》
―憧れの世界ですが、ハリウッドにはどれ位滞在されたんですか。
中田秀夫監督(以下敬称略):いたのは3年間で、契約は5本したんだけれど、実際に撮れたのは『ザ・リング2』の1本でした。実質的に契約以上の仕事をしたのは3本で、『THE EYE』は何度も脚本を書き直し、カナダに先行ロケに行ったりしたけれど、思ったより上手くいかなくて、何時まで待っても撮影のゴーサイン(=グリーンライト)が出ない。これ以上ここに居ても仕方ないなと思った頃に、日本から『怪談』の話が来て、自分で決断して帰ってきたんです。でも3年もいたのに出来たのは1本かよと思った。ゴーサインを待って鬱々としただけでは駄目で、その思いを前向きにして作品に変えようと。自主制作だって1本は1本、1本作ってこれで2本にしてやれと思って作りました。

―日本とハリウッドの違いは何でしょう。
中田:まず規模が違いますよね。他には監督の立場で言うと、日本は監督がこれで行くと言えば、立ててくれてその通りにやれるが、ハリウッドではそうならない。日本でも契約上は監督が最終決定権を持っていないけれど、プロデューサーに相談しながらでも、クリエイティブな面ではイニシアティブを取る文化があります。ところがハリウッドは契約社会で、その契約書が本になるくらいぶ厚く、権限があちこちに分かれていて、監督に大きな権限を与えません。せいぜいが大企業の部長位の立場ですね。たとえば車を作る会社で言うと、監督は車の設計者で、その上には経営者陣の社長とか一杯いて、デザインしたからといってそのままでは製品にならない。市場調査やテスト走行等で色々直されていきます。自分で言いたくはないけれど、ハリウッドの監督は企業の歯車の1つでしかない。重要な役割かもしれないが、歯車だけにとっかえが利くというのが近いかもしれません。実際にとっかえられた監督は一人や二人ではないし、意見が衝突して引かないと喧嘩して辞めることになります。僕は新人監督として呼ばれて行ったので、そんな意味でも余計に地位が低いと感じました。

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―撮り方も違うんでしょうか。
中田:アメリカはどうにでも編集できるように、色々な角度やサイズで撮影して(=カヴァレッジ)、材料を沢山集めておきます。最終的には観客の意見を聞きながら、最大公約数の意見をモニターリングして(=テスト・スクリーニング)、工業製品を作るように、映画を商品として磨きをかけて作り上げるんです。
―日本のやり方と比べてどうでしょう。
中田:一概にどちらが良いとも言えないんですよね。僕はアメリカ流が間違っているとも思わない。映画は面白がってもらって何ぼ、売れて何ぼというのも真実なので、アメリカ的な視点を否定できないという思いが常にあります。フランスとかはハリウッドとは対照的で、完全な作家主義。脚本を書いた人が監督をしますし、監督が最後まで作品のイニシアティブを取ります。それに対して国が何億と言うお金を集めたり補助を出したり、1年撮ると次の1年は年金が認められるとか、映画製作という非生産的な事をするのを、資本主義社会の中で優遇して守っている。ただそのせいか、自分の好きなように撮って良いんだという甘えが生じて、作品が自己満足に陥りがちで、この頃のフランス映画の低迷にもなった。映画は商品として流通しないといけない物。ハリウッドのように世界に配給すると言う宿命を持っているとその点が特に大事になる。どちらか一方ではなく、監督にはこの2つをバランスよく捉える視点が必要だと思う。日本映画は比較的それが保ててきたんですが、邦画バブルでアメリカ的な方向に寄ってきた気がします。

―そんな中田監督がハリウッドで撮った『ザ・リング2』はどうでしたか。
中田:自分としては楽しみながらベストを尽くして撮りました。企画の最初から関わっていないので、無い物ねだりですが、内容的にもっと最初から関わりたかったというのはありますが。商売的に言うと、万々歳ではないけれど、チョいプラスになっているはずです。そうは言ってもハリウッド作品なので、僕の作品の中では記録的に一番。世界中の人に届けたいと思うならハリウッドを目指すべきですね。ただ監督というのは厄介でそれだけでは満足できない。このドキュメンタリーは『ザ・リング2』と対極の作品だけれど、観てくれた人と話が弾むんですよ。楽しいです。
―『ザ・リング2』のテスト・スクリーリングは。
中田:3回やって、ロス以外の街、近郊都市で4百人位集めて、『リング』とは言わず「ヒットしたホラー映画の続編だ」とだけ伝えて、色々な年齢層から選んだ一般の人に観てもらいました。で、アンケートを取った後で20人位に絞って、もっと突っ込んで意見を聞くんです。僕らは後ろで聞いているんですが、これも作り手に信念が無いと、振り回されてしまってまずい。場所や人を均等に選ぶといっても完璧じゃあないし、当然誤差が出るのにそれに振り回されるのはどうも。それにホラーなんて嫌いな人は全く駄目なわけで、怖がるように作っているのに、怖いから嫌いだと言われてもねえ。そもそも怖くなかったらホラーが成り立たない。そんな風にして聞き出した、観客の解らないというラスト10分間を、スタッフや俳優さんを呼び戻して最初から撮り直すのがハリウッド。日本では時間とお金に余裕がないので、テスト・スクリーリングは難しいと思います。(聞き手:犬塚芳美)
                続きは明日  

  この作品は5月16日(土)より、第七藝術劇場で
   6月京都シネマ、7月11日(土)神戸アートビレッジセンターで上映予定
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コメント


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監督のファンです。興味深く拝読しました。いまだに「仄暗い水の底から」以上に怖いものは見たことが無い。ご活躍が楽しみです。

通りすがり | URL | 2009年05月17日(Sun)09:23 [EDIT]


Re: タイトルなし

> 監督のファンです。興味深く拝読しました。いまだに「仄暗い水の底から」以上に怖いものは見たことが無い。ご活躍が楽しみです。

実は私はホラーが駄目で、中田監督の評判を知りながら一連の作品は見ていません。でも「L change the World」で魅せられていっぺんにファンになりました。さらにこのインタビューでお人柄に触れ、今後はホラーも厭いません。何事にも真摯な姿は素敵ですね。

犬塚 | URL | 2009年05月17日(Sun)22:34 [EDIT]


写真がいいです

ジェスチャーの大きさを捕らえたいい写真です。いつもこんな具合に身振り手振りで演出してらっしやるのでしょう。

通りすがり | URL | 2009年05月18日(Mon)09:01 [EDIT]


Re: 写真がいいです

> ジェスチャーの大きさを捕らえたいい写真です。いつもこんな具合に身振り手振りで演出してらっしやるのでしょう。

これがどんなお話の時だったのか忘れましたが、ポスター等も大きなアクションで写っている所を見ると、いつもこんな風にされるのかも。お顔が和やかですが、クリント・イーストウッドに出会った感動や、二コール・キッドマンと握手した時に驚いた背の高さとかも、生き生きとうれしそうに話してくださって、さすがにハリウッドだなあとうっとり。それを話してくださる監督が気さくなので余計に感動しました。

犬塚 | URL | 2009年05月18日(Mon)23:25 [EDIT]


 

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journalist-net | 2009年05月14日(Thu) 21:49


 
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