太秦からの映画便り

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映写室「ハリウッド監督学入門」中田秀夫監督インタビュー(後編)

映写室「ハリウッド監督学入門」中田秀夫監督インタビュー(後編) 
 ―監督と編集マンの相性―

(昨日の続き)

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―アンケートの言葉に揺らぎますか。
中田:僕はそこまで観客におもねたくないです。ただおもねなくても、8割方が良いねと言ってくれたら、それはそれで武器に出来る。でも向こうは欲が深いから、制作側は8割で満足しないで、いや9割とか言ってきますからね。それでもある程度聞かないと、嫌々ばかり言っていたら「監督休んでて」と言われてしまいます。モニターリングの言葉に揺らがなかったかと言えば、ちょっと安っぽいといわれて削ったところがあって、そんなことしないほうが良かったと後で後悔しました。
―カヴァレッジの方は『怪談』でもされたと伺いますが。
中田:ええ、全てではありませんが、ラブシーンでここからここまでとか区切って、俳優さんとスタッフに言って使いました。これが良いのは、俳優の気持ちをカットで切らないと言うのと、時間的に速い事。ただカメラを2台使うと、映る場所が広いんで照明とかが制限されるし、足場を組むのに時間がかかります。

―向こうはそれぞれの役割が日本と違ったようですね。
中田:現場は250人位が動いていて、それぞれの役割分担が決まっています。これにも映っていますが、色々な違いが面白かったですね。向こうで光っているものがあって僕が拾いに行ったら、監督だから何も言われないけれど、日本のように何でも自分でする監督と良い様には思われない。何しろ向こうはディレクターズ・チェアーを運ぶ人まで決まっていますから、その人の仕事を奪うことになるんです。
―凄いですね。ところでその椅子にハリウッドで始めて座った感想は。
中田:椅子そのものには特に感動はありません。それより、カメラが2台も入っているので、狭い現場では椅子が置けない。隣の部屋のモニターの前に座らざるをえなかったりして、それが不満でした。僕はカメラの側にいてカメラと現場の両方を見たい。監督は自分の映画の最初の観客だと思うし、その楽しみだけは誰にも譲りたくないんです。それと、俳優と同じ室内にいて同じ空気を吸って、こちらから見てるぞというのを念で伝えると、俳優も良い演技が出来ると思っているんですよ。

―カメラが2台だとそれが難しいですね。
中田:アメリカは材料を沢山持つのが良い事だ、選ぶのは後で良いという方針です。日本だと監督が設計図を描いて、削った部分は撮らなくていい。監督に権限があるんです。ところがアメリカでは編集者に権限がある。映画だけでなく雑誌とかのインタビューでも、「あんたの視点で聞かなくて良い。全て聞け」と言われるそうです。僕も最初色々なアングルやサイズを考えていたんだけれど、最後までそれを通せない。不満なんだけれど、向こうのシステムではそうなる。だったら現場を自分が満足できるレベルにしておけば、どの角度から映されて、どう編集されてもいいと思うことにしました。撮影中は、週末で休みになるとホテルに編集マンが来て、編集したものを見せてくれるんです。で、意見を言い合って又直したりを繰り返して仕上げて行く。全く休みがない状態で正直に言ってこれは本当にきつかった。
―編集者との相性が重要ですね。
中田:ええ、編集者選びは慎重になります。監督と編集マンの相性が悪いと辛いですね。逆に監督と編集は相性がいいけれど、会社と合わないとなると編集マンが切られてしまう。時々あるんですが、エンドクレジットで編集に何人ものるのは、そんな事があったということです。

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―そんな困難を乗り越え、『ザ・リング2』とこの『ハリウッド監督学入門』を撮られました。監督は日本の映画人の憧れですが、ハリウッドでどうやれば自分流を貫けるか、アドバイスをお願いします。
中田:何時、何処でもケツを捲くる覚悟、負けん気の強さを持っていることでしょうか。大体ハリウッドは、大ヒット作を1本持っていれば10年はやって行けます。自分流を貫くのも可能で、シャラマン監督は『シックスセンス』があるからカヴァレッジを撮らなくていいんだと言われますしね。ハリウッドはビジネス優先なので、何時自分の首が飛ぶかと戦々恐々の不安神経症の人だらけ。如何に自分の立場を守るかばかり考える人の中では、僕のように一人で行って、何かあったらケツまくって帰ってやろうと思える人は強い。僕の場合、記憶としては日本で作った『リング』が大きく、それが名刺代わりになりましたが、『ザ・リング2』がもっとヒットして記録を作っていれば、今もハリウッドで撮れていたと思います。両方がないと自分も満足できないし、そこにも残れない。ハリウッドで監督を続けるには、記録と記憶の両方に残る作品が必要だという事です。

―ハリウッドは企画不足と言われますが、一方で、持ち込まれる脚本が年間3万本を超えるとも聞きます。
中田:色々な企画があっても撮影のゴーサインはなかなか出ない。膨大な資金集めのせいで、製作に名を連ねた何十の投資家や投資銀行のサインがないと、前に進まないのです。そのグリーンライトを待つのに時間をとられるので、僕のようにある程度の年齢になると2の足を踏んでしまう。行くんだったら若いうちがいいですね。英語力も必要です。僕がドキュメンタリーを撮った(=『ジョセフ・ロージー 4つの名を持つ男』‘98)ロージーは、生涯で33本撮っています。彼は44歳から20本位を一気にガーッと撮った。あれ以来僕に彼の霊が付いているんで、小さい作品も入れて僕もそれ位撮りたいんですよ。明後日からイギリスに行きます。今回は脚本の打ち合わせですが、『チャット・ルーム』と言う演劇が原作の作品がほぼ決まって、来年初頭からは日本の映画撮影に入る予定です。(聞き手:犬塚芳美)

  この作品は5月16日(土)より、第七藝術劇場で
     6月京都シネマ、7月11日(土)神戸アートビレッジセンターで上映予定


《インタビュー後記:犬塚》 
 <憧れのハリウッド、しかも監督学って何?> この作品はそんな好奇心に答えるように、ハリウッドと邦画界のシステムの違いを検証して、監督自身が普段は表に出ない大物のハリウッドの映画人にインタビューした作品です。素直に驚く素顔にはこの監督の人間らしさが滲み出る。ハリウッドを狙う業界人は必見で、業界人の卵や、業界を覗き見したい映画ファンも見のがせません。関西でのマイナー作品製作から這い上がった日本人プロデューサーのプール付き自宅は、ハリウッドで成功する事の大きさを示しているのでしょうか。
 <監督への憧れと好奇心とで>そわそわしながらのインタビューでしたが、映画の中の監督がバミューダー姿の自然体であったように、この席の監督もいたって自然体、映画青年がそのまま大人になったような姿勢に魅了されました。途中からオフレコの大物スターや大監督の愛のこもったハリウッド見聞禄が続いて(書けないのが残念!)、まるで自分が覗いて来た様に華やかなハリウッドの裏側を感じました。
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