太秦からの映画便り

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映写室 新NO.5「守護天使」&「剱岳 点の記」&「真夏のオリオン」

映写室 新NO.5「守護天使」&「剱岳 点の記」&「真夏のオリオン」
     ―3人の男の戦い―

 今映画館に力作が目白押しです。こんな黄金期はめったにない。で欲張って、今週は上映中の中から邦画3本を選んでみました。題して、主人公は誰の為に、あるいは何の為に戦ったのか。どの作品からも時代を超えた優しい大和男子の戦う姿が浮かび上がります。


1.守護天使(一目惚れの為に見えない悪党と戦う)
 大ヒットした「キサラギ」の佐藤祐一監督の新作と聞いては、見逃せない方が多いはず。上村祐の原作をテンポ良い活劇に転じ、笑いながらも最後にはほろっとさせる。

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(C) 2009『守護天使』製作委員会

 <これは中年サラリーマンの純愛>の物語。須賀が鬼嫁から貰う一日の小遣いは500円きりで、大事なそれを落とした時拾ってくれたのは天使の様な高校生だった。一目で恋をして、彼女をこの世の全てから守ると決める。そんな思い込みを笑いながらも助けるのは、雀荘に住み着く同級生や引きこもりのイケメン。彼女の淫らなブログを見つけるが、何かの間違いだと信じない。そうする内にも魔の手が伸びてきて、彼女は天使なのか悪魔なのかと観客までが惑い始める。

 <…と、物語がとんでもない方向に>転がり行方が見えないのは「キサラギ」と一緒で、それがこの監督の醍醐味だ。思い込みの激しい中年男を演じるのはカンニング竹山。メタボな下着姿など生活感たっぷり。これじゃあ妻の鬼嫁ぶりも仕方ないと納得。こんな男に勝手な思い込みで後をつけられたら怖いのも当然で、年甲斐もない純情さが痛々しくなる。でも笑い話に変えてはいても、現実はこんなもの。人は外見ほどには心が年を取っていない。彼が体現しているのは、心の中と外見がアンバランスな、男女を問わない中年族の等身大の純情さと哀れさなのでした。何ともひりひりさせる。
 <一方、輝くようなピュアさ>で観客の目を釘付けにするのは、第50代ポッキープリンセスの忽須汐里。名門女子高生役を清楚な制服姿で演じて、これぞヒロイン!眩しい。でもそんな姿の裏にこそ、乱れた生態があるかもと疑わせるのも今の世情。後に解る悪党の姿や500円の小遣いと共に、現代社会の歪みを滲ませてくる。

 <圧巻は須賀の鬼嫁役の寺島しのぶ>と同級生役の佐々木蔵之助。二人は別格の吹っ切れ方と上手さ。舞台で鍛えた実力と迫力で、全体に喜劇性を加味して作品を別の次元に持っていきます。そんな寺島に監督が最後に差し出したプレゼントが心憎い。それはそのまま、へろへろになって働いているお父さんたちへの愛でもあるのですが、この温かさこそが監督の持ち味なのでしょう。カンニング竹山が愛しく見えてきます。

  テアトル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、
        109シネマズHAT神戸等全国で上映中



2.剱岳 点の記(地図作りの為に自然と戦う)
 黒澤作品の名カメラマン木村大作が、監督兼カメラマンとして難しい大自然の撮影に挑みます。危険な山を相手に繰り広げられる人間ドラマと共に、カメラ出身の監督ならではの、氷点下40度を超える立山連峰の映像美が見所。少し古風なリズムで描かれる登山隊の足取りは、昔ながらの手法で映した実写だからこそのもの。

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(C) 2009『劔岳 点の記』製作委員会

 <明治末期に日本地図を完成する為の最後の空白区>、剱岳に登って測量する話で、原作は新田次郎です。剱岳は険しい前人未到の山、陸軍の測量隊に対抗するように日本山岳会も初登頂を目指している。でも責任者の柴崎はそんな争いには興味が無い。案内人の長次郎は登山を淡々と確実にサポートする。不順な天候、険しい道と行く手は厳しい。
 <…と、そんな物語をゲートルを巻いて>わらじを履いてという、明治時代の服装と装備で再現している。これって危険なはずで、俳優たちを当時の過酷な状況に置き、それを映す撮影隊もまだ暗いうちかの機材を担いでの登山と、述べ200日以上のロケーションは疲労困憊だったらしい。そんな映画作りへの愚直なまでの姿勢が臨場感になって、登山隊に自分が混じって登っているような気分になる。この頑固さ、本物への拘り、若い監督には出来ない芸当。

 <飄々とした柴崎役の浅野忠信には>この時代のエリートの品格が見れるし、まるで本当に山に住んでいる男のような風情で長次郎になりきった香川照之の土臭さも見事。腰をかがめて淡々となすべきことをなす昔気質が、本人の役者魂に重なります。自然に飲み込まれそうな人間、それでも負けずに自然を乗り越える人間、両方が拮抗したところに出現する新しい世界。近頃はそうそう見れない、正統的過ぎるほどの正統さが貴重で、昔は良かったと愚痴りがちな大人の鑑賞に堪えうる作品です。全ての肩書きを廃したエンディングロールに監督のこの作品に込めた思いを見ました。

          全国で上映中


3.真夏のオリオン(無駄な死から部下を守りたくて、敵と戦う)
 敗戦の色濃い太平洋戦争末期に、太平洋上で命がもったいないと回天を使わず頭脳戦を仕掛けた実在の潜水艦長をモデルにした物語で、池上司の原作を潜水艦ものが得意な福井春敏が脚色して、「山桜」の篠原哲雄が監督しています。構成の巧みさが光り、大掛かりな物語を予算の少ない邦画がそれを感じさせずに見せ切った見事さ。戦闘シーンの大迫力だけでなく、じっくりと描かれるそれぞれの人物が魅力的です。

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(C) 2009「真夏のオリオン」パートナーズ 

 <このところ色々な作品で活躍する>玉木宏が艦長役で、親友にはケミストリーの堂珍嘉邦、時を隔てた2役で北川景子が登場する。艦長が若すぎる気もしたけれど、それすらもこの艦長の大胆さや人間的な魅力にしたのは玉木の力。大きな瞳がとらえどころがなくてカリスマ性をかもし出す。堂珍の瞳も憂いを含んでこの時代の悲劇性を代弁。二人の友情が時にハラハラさせるのも、軍人らしくなくて物語を解りやすくする。そして特筆物が北川景子の美しさ。男優中心の物語の中、少ない出番で爽やかな風を吹かす。艦長の思いのままに、映らない時すらも匂やかだった。
 <こんな具合に中心を>古風にも見えながら今の時代感のある若い俳優に任せて、脇を今や中堅の吉田栄作や吹越満、益岡徹が固める。皆渋い。特に久しぶりに見る吉田栄作の、でしゃばらないのに確かな存在感が忘れられない。目を見張った。少し前なら一世代違っていただろう配役が見事なハーモニーで、監督と共に日本映画界の順調な世代交代を証明。これも邦画バブルと言われるほどたくさん作られた賜物だと思う。

 <古い物語に当時の時代性と>それと相反する今の空気を同時に流す事は難しい。でもそれをしないと、映画の世界観から若い観客は置いてきぼりをくってしまう。この作品は両方を上手くクリアーしているのが見易さになっているのだ。軍隊らしくない長髪だとか、節度はあっても過剰に軍隊っぽくない喋り方とかで、適度な今が加味されて、戦争物語に普遍性が出て時代を超えさせた手法。「山桜」に続いて、篠原監督の丁寧な人物描写とバランス感覚、時代感覚に魅了された作品です。

   全国で上映中

 こうして見ると、3つの作品のそれぞれの主人公は、結局の所、自分の信条の為、プライドをかけて他の誰でもない自分と戦ったとも思えるわけで、他人の評価など気にしない。そんな潔さが胸を打ちます。(犬塚芳美)
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コメント


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迷います

当初、「剣岳」は見たいな~と思っていました。
「真夏のオリオン」はお涙頂戴系?と思っていたのであまり興味がなく、「守護天使」は今回初めて知りました。
でも、このブログを読むとなぜか全部見たくなってしまいました。本当に今、邦画が熱いですね!

ayako | URL | 2009年06月25日(Thu)22:07 [EDIT]


Re: 迷います

> 当初、「剣岳」は見たいな~と思っていました。
実写が主体なので、合成に慣れた目にはテンポがいくらかゆったり。でも山歩き(?と、言うんだろうか?これを。今日結構年配の方から昇ってきたと言われたんです。最近は鎖がつないであるとか)の好きな方なら、自分が登るつもりで見れると思います。

> 「真夏のオリオン」はお涙頂戴系?と思っていたのであまり興味がなく、
とんでもないです。ただし私もそういう感じかもと思って斜めに観たんだけど、篠原監督の実力は凄い!それに尽きます。ラスト等わざとらしい所もテンポを出すのに使っている。今脂が乗っている監督です。以前『クリアネス』でインタビューしていて、上から目線よりも、俳優とフラットな関係を作ってやる気を引き出す、しかも自分の分析を言葉に出来る頭の良い監督だなあと思ったのですが、このときの私の目に(?)狂いはなかった。篠原監督作品追いかけますよ。

>「守護天使」は今回初めて知りました。
実は、たいてい先行して紹介しているんだけれど、出来が良いこの作品を皆が取り上げないので、これってないよねと、足踏みして邦画3本立てにしました。あれだけ「キサラギ」がヒットしたんだから、もっと話題になるとおもったんですが。配給会社がちょっと小さいのかも。(でも丁寧な良い配給会社ゃさんですよ)
> でも、このブログを読むとなぜか全部見たくなってしまいました。本当に今、邦画が熱いですね!
有り難うございます。ぜひ映画館へ!この作品群かどうかはともかく、若い方は特に邦画に集中するようですね。

犬塚 | URL | 2009年06月25日(Thu)23:22 [EDIT]


こんにちは。本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。

藍色 | URL | 2010年04月21日(Wed)02:37 [EDIT]


Re: タイトルなし

> こんにちは。本の感想記事を
> トラックバックさせていただきました。

こんにちは。実はやり方がよく解からなくて。やってみますね。

犬塚 | URL | 2010年04月21日(Wed)08:13 [EDIT]


 

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粋な提案 | 2010年04月21日(Wed) 02:06


 
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