太秦からの映画便り

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映写室 新NO.6「MW―ムウ―」&「ディア・ドクター」

映写室 新NO.6「MW―ムウ―」&「ディア・ドクター」   
 ―止まらない邦画の快進撃― 

 日常を切り取り、揺れ動く心情をドキュメンタリータッチで描く分野で、邦画は世界でも他の追随を許さない領域に達していますが、このところ予算的に到底敵わない大スペクタクルでも、テンポの良い演出でハリウッド作品とは違った広がりを見せています。先週に続いて今週も、そんな全く違うタイプの邦画2本を紹介しましょう。どちらもミステリーで、「MW―ムウ―」は今年生誕80周年にあたる手塚治虫の原作を映画化したもの。「ディア・ドクター」は、「ゆれる」の西川美和のオリジナル脚本で、山間の村の医師の失踪で始まる物語。どちらも善だとか悪だとか、単純には割り切れない人間の2面性をあぶり出します。

1.「MW―ムウ―」 
 冒頭の軍隊を総動員したというダイナミックなカーチェイスが圧巻で、始まりはタイで起こった誘拐事件だった。被害者を追うと日本でのもう一つの殺人事件に結びつく。犠牲者は全員が同じ島の出身で、しかも皆、望月という国会議員の後援会員だった。この一致は何?と探り始めた新聞記者は、事故死した先輩記者がこの島の特集をしていたことに突き当たる。

mw-m.jpg
C) 2009 MW PRODUCTION COMMITTEE

 <こうして事件のキーワードが>沖之真船島だと解るのだけれど、先輩の死の背後にある闇の大きさを察したこの記者の戦慄が伝わってくるようだ。
 <明晰な頭脳で次々と復讐を企む結城に扮する玉木宏>、先週紹介した『真夏のオリオン』では、一人の命も粗末に出来ない艦長を大きな瞳に愛を込めて演じたが、今回は同じ瞳に冷酷な光だけを込めて演じる。見せない感情を探って仮面を剥いでみたくなるのは、あまりにも人間離れしているから。遠くを見つめる瞳が現実の何をも映していない。まるで空(くう)で、何かに心と体を犯されたサイボーグのようだ。そうは言っても伝わってくる感情、玉木が表現するのはいわばサイボーグの感情で、動かさないことで伝える感情の冷たさが見所だと思う。
 <一方牧師の賀来は>、結城の狂気を恐れながらも止める事も出来ず、自分の運命までも翻弄されてますます祈りに逃げ込む。原作では二人の間に肉体関係があってもっと複雑なドラマが展開するけれど、映画ではそこまでは踏み込まない。同じ苦しみを背負った者同士、離れられない一卵性双生児のような運命なのだろう。精神的な結びつきに焦点を絞った映画版のほうが、二人の過去が重くなるかも。賀来は何を祈っていたのか、山田孝之が内省的な青年の苦悩を瞳だけで表現する。玉木と対照的に、相手を思いつめたように見つめる瞳が印象的だ。結城の狂気は賀来の救いで、賀来の慈愛もまた結城の救い。まるで合わせ鏡のようにお互いの隠した感情を表現し合う二人。惹かれながら反発しあう様に悲しみがあって、役柄だけでなく役者としても相性が良いのだろう。

 <ところで、松本サリン事件から今年で15年> 家族が被害者になりながら犯人扱いされた、河野さんの無念さはどれほどのものだろう。どんどん過熱する報道の後、証拠不十分で釈放されても世間一般の疑いは消えなかった。それは地下鉄サリン事件でオウムの犯行が解るまで続いたけれど、私は河野さんを疑った事などない。実は政府を疑っていて、自衛隊とは思わなかったけれど、米軍の駐屯地での毒ガス実験ではと、とんでもない事を想像していた。生成の化学反応式が流失しても真似た事件が起きなかったように、サリンなんて簡単に出来るものではない。特殊な装置と神様が特別な人にだけ与える才能が必要なのだ。そう考えたら発生源は自然に狭まってくる。
 <あの事件はオウムだったけれど>、私と同じ様な事をもっと真剣に想像した人がいたと思う。化学のプロだったらなおさらだ。そんな事件が起こった時、事件は表に出るのだろうか。政府や米軍を信じても良いのだろうか? 手塚治虫の「MW―ムウ―」は松本サリン事件の20年近く前に作られている。真相を追うミステリーだけれど、結城と賀来の二人、いやもっと広く人間とは?の答えを追い求めるミステリーでもあるのだ。

 7月4日より全国でロードショー

2.ディア・ドクター
dear doctor
(C) 2009『Dear Doctor』製作委員会

 棚田の美しい山間の小さな村を舞台に、脱ぎ捨てられた白衣の主、笑福亭鶴瓶が扮する医師の伊野を探って物語は始まる。彼は何故失踪したのか? 研修医の相馬、余貴美子が扮するベテラン看護婦の大竹、八千草薫扮する1人暮らしの老婦人等の証言から浮かび上がる伊野は、誰もに慕われ、強かでもありと人間らしい姿。でも彼の過去は誰も知らない。

 <こうして徐々に彼が偽医者なのが解ってくるが>、観ているほうは逆に、彼の周りのどの辺りがそれに気付いていたのか、解らなくなる。多くの事が観客に委ねられている。怪しいと言えば皆怪しい。村長だって最初はともかく、最後のほうは思い込みだけかどうか。緊急患者の処置での対応、看護婦はどうだったのだろう? 新米医師等にベテランの看護婦さんがさり気無く手助けするのはよく聞く話だけれど、彼女の場合一家の生活がかかっている。善意だけではないのかもしれない。余貴美子の意味ありげな目配せや一つ一つのセリフに、図太さや母親としての凄みを感じた。
 伊野医師は小さな嘘を転がし続けた男。好運なその場しのぎが成功し続け、皆の期待に合わせるようにずるずると医師を続けただけなのだろう。引き返したくても引き返せない。ここまで続けたのも、自分が首を突っ込んでしまったことへの、彼なりの責任感かもとも思う。

 <後姿に風情があって>、寝巻きのシーンなどセリフ以上に物語をつむぐ八千草薫、いつも素敵だけれど、この映画での八千草薫はいっそう輝いている。もしも自分が不治の病にかかったらどんな終末期を送りたいか。彼女の体全体が問いかけてくるのだ。それが自分ではなくて家族だったらどんな風に見送りたいか。今度は娘が考え込む。
 田舎の嫌らしさ、暮しにくさをリアルに描いてなんだか辛い。辛らつな目だけれど、最後に付け加えたと言うラストシーン、その向こうには優しさがあるのが西川美和だ。(犬塚芳美)

  梅田ガーデンシネマ、京都シネマ等全国で上映中
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間違い指摘

> この二人、『手紙』でも兄弟役で共演していた

それは玉木宏ではなく、玉山鉄二です。
「手紙」での玉山の起用は山田に似ているからという理由です。

通りすがり | URL | 2009年07月01日(Wed)06:23 [EDIT]


Re: 間違い指摘

> > この二人、『手紙』でも兄弟役で共演していた
>
> それは玉木宏ではなく、玉山鉄二です。
> 「手紙」での玉山の起用は山田に似ているからという理由です。

すみません、すっかり勘違いしていました。あの時も似ていないなあと思ったんだけれど、起用の理由が似ているだったとは!
ご指摘ありがとうございます。

犬塚 | URL | 2009年07月01日(Wed)09:53 [EDIT]


Re: 間違い指摘

本文をそのままにして訂正をいれようと思ったのですが、あまりにみっともないので削除しました。悪しからず!助かりました。

犬塚 | URL | 2009年07月01日(Wed)10:01 [EDIT]


 

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