太秦からの映画便り

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映写室 新NO.10サマーウォーズ

映写室 新NO.10サマーウォーズ 
   ―大家族が挑む現実と仮想都市OZの危機―

 ネット社会はどんどん進化している。でもサイトの悪用や支配を目論むサイバーテロも、ますます巧妙になっていく。まるでいたちごっこだけれど、今や取り締まりにサイバーポリスが必要な段階に来たと、先日も専門家が言っていた。んん?、ネット音痴には何だか難しいが、そんな未知の領域を視覚化して、アニメーションならではの解り良さときれいな映像で体感させてくれるのがこの作品だ。
 <創ったのは「時をかける少女」の細田守監督>、前作に続いて今作も現実と仮想のミックスが見事。ネット社会とそのすぐ隣にある長閑な農村風景をリンクさせた、大家族の奮闘物語です。時代や状況は変わっても、危機を救うのはいつも助け合い、日ごろは疎ましい家族力がそんな時そこ生きてくる。現代はまさに「時をかける」ようなスピードの時代。一方でまだまだ残る昔ながらの日々の営み。この作品の持つ二つの世界感が、夏休みの子供たちと若者、好奇心旺盛な大人を虜にするでしょう。美しい映像はビジュアル系の方にも見逃せないと思う。

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(C) 2009 SUMMER WARS FILM PARTNERS

 <物語はこうだ> 高2の夏休みにOZの保守点検のバイトをしていた健二が、憧れの先輩夏希に頼まれ、フィアンセを装って田舎に行く。そこは長野の広大な屋敷で、90歳になるお祖母ちゃんの誕生日を祝って、一族郎党が集まると言う。嘘はばれたものの健二は皆に馴染んでいくが、不審な数学クイズのメールを受け取り、思わず解いたことからOZの世界と現実で災難が起こり始める。はたして地球の危機は救えるのか…?

 <スクリーンの中に広がっているのは未来だろうか>、少し前の事だろうか。ネットの進化から見ると少し先のことに思えるし、青い空や山々、縁側にずらりと並んだ朝顔の鉢や田園風景の長閑さ、人情を見ると、時計を巻き戻した気分にもなる。つまりそう遠くない未来ってことかな。仮想社会は進化しても、田舎の風景はそんなに変わらないもの。この作品は両者を魅力的に描き分けている。
 <画面から漂ってくる信州の清々しい空気>は、優しいタッチと色調で、まるで自分が其処にいるようで避暑気分を体感。長い廊下で繋がる古い陣内家の屋敷もリアルだ。時が止まったような、ゆったりとした世界に癒されていると、今度はクリアーな色の氾濫する仮想社会OZに引き入れられる。こちらは一瞬の隙を付いて巨大化するネットの凄まじさを視覚化したもの。今の世の中、両方が同時に存在するわけで、ネットとそれを操る人の住む現実との兼ね合いがテーマになっている。当たり前だけれど、ネット上の犯罪は常にそれを操る現実社会の住人の仕業ってわけだ。そこに、開発者の思惑を超えたシステムの知能が加担することもある。人を超えていく機械、何時もそれが問題だ。

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(C) 2009 SUMMER WARS FILM PARTNERS

 <何しろ健二は>、数学オリンピックの代表に漏れて落ち込んでいるような数学の天才。難しい数式クイズが来ると、ついつい解いてしまう。世界中にはそんな天才が他にもいるから、鍵穴を探している知能犯は、数学好きのそんな習性を利用しようと世界中にメールを送ったわけだ。そうして開いたOZの管理部、他への進入口もあり、ちょっといじっただけで、管理されている世界中の通信機能、防災、防衛、インフラ等が混雑する。このあたりぞっとするが、確かにそう遠くない近未来の姿だと思う。ネット管理社会の怖さでもあり一番の弱点だ。
 <もっともこの作品の楽しいのはそこからで>、SEの頭脳戦に似せて、ここに視覚的なゲームを絡ませてくる。システムの侵入を企む者、阻止する者、現実での疲労感も神経戦ならばこそだ。ネットの主役若者たちをサポートして、大人も右往左往。正義感の強い、武家の末裔の誇りをかけた大家族のそれぞれを巻き込んで、極上のエンターテインメントが始まっていく。このあたりのアナログなドタバタも圧巻だった。

 <魅惑的なのが、アニメに命を吹き込む声優たちの声質のバランスだ> まず、見ている時はそれと解らなかったお祖母ちゃんの声は富司純子。16代続く陣内家の当主として君臨する者の言葉の重みの確かな表現、せりふの間にも格段の余情と品位があって、威厳だけでなく優しさも耳に残る。この作品を若者だけでなく大人の物語にもしている功労者だ。いつもは美しい佇まいに目を奪われるが、言葉にもこんなに説得力があるのだと表現力を思い知らされた。

 <夏希の初恋の相手でOZ事件でもキーマンとなる、>叔父の陣内侘助役の斉藤歩の声が、一人篭った様に響く。これも良い。他と混じらず際立っているのは、ミステリアスな役柄の上からも正解だ。現実とは違う別の空間から響いてくるみたい。主人公の健二には、天才子役からすっかり成長した神木隆之介が、育ちが良い繊細な少年として命を吹き込んでいる。声の頼りなげなところがそのまま健二のキャラクターだ。夏希の大勢の従兄弟たち、叔父さん叔母さんたちの賑やかさも見事で、雑然とした様はまるでお盆に集まった親戚一同。夏の集りはいつもこんな風に騒々しい。

 <そんな多彩な声やキャラクターデザインと共に>目を見張るのは、やっぱり非現実のOZの世界のビジュアルだろう。溢れる色、色、色。これほどクリアーでポップな映像は初めてだ。目まぐるしく変わる色と動きを楽しみながら、ネットの増殖を視覚的に理解できる。ちょっとしたきっかけで、すぐに片方に流されてしまうのは、私たちネット世代の浅はかさ。よく言われる“炎上”を視覚化したらこんな風になるのだろう。憎悪だから本当はもっとおどろおどろしい色の表現が適しているのかもしれないけれど、カラフルにすることでゲーム感覚になったのが親しみやすさだ。

 <…と、家族の団結と言う古典的なテーマを内蔵しながら>、こんな具合に楽しみどころは満載。夏休みを映画館で過ごせば、バーチャル避暑とバーチャルアドベンチャーが体験できる。さあ、この作品が一番受けるのはどの年代にだろうと、私の関心は其処にも。映画に触発されて、こちらの楽しみ方も多彩になる。(犬塚芳美)

  この作品は、8月1日(土)より梅田ブルク7 MOVIX京都 109シネマズHAT神戸 
他全国ロードショー
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コメント


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満席で入れなかった!

ここの情熱的な映画評を読んで出かけたのに満席。お昼前でもう夜までがアウトでした。空振りでは帰れず「アマルフィー」に変更。その後「ハリー・ポッター」を見て今帰ってきました。その2本も前列まで埋まっていました。夏休みと映画の日と土曜日が重なると大変でした。

kawa | URL | 2009年08月01日(Sat)21:14 [EDIT]


Re: 満席で入れなかった!

> お昼前でもう夜までがアウトでした。夏休みと映画の日と土曜日が重なると大変でした。

映画館が満席なのは嬉しいですね!それにしても夜までアウトとは凄い人気。良い作品なので、良い興行成績を収めて又創って欲しい。色々な所で、この作品「見て!見て!」を連発しています。通路に座ってみたいけど、それは許してもらえない。これで喧嘩した人もいるはずですよ。
始まったばかりなので、めげずに又行って下さいね。

犬塚 | URL | 2009年08月01日(Sat)23:04 [EDIT]


行ってきました!

今日は入れました。2日続けて映画三昧です。でもいい映画を見ると良い夢が見れる。今夜は信州の田舎に行くのかOZの仮想都市に迷い込むのか・・・。

kawa | URL | 2009年08月02日(Sun)23:15 [EDIT]


Re: 行ってきました!

> 今日は入れました。2日続けて映画三昧です。

うらやましいです。学生時代の癖か、私も1本見ても満足できない。2本くらい続けてみるとやっと見た!と実感できます。
さあ、どんな夢を見ましたか?
仮想都市にも行ってみたいです。

犬塚 | URL | 2009年08月03日(Mon)09:39 [EDIT]


見ごたえのある映画でした。色々疑問も起り質問があります。背景は写真の画像処理じゃあないのか?静止画が写真のように精巧なのに動く絵になるととたんに漫画っぽくなる。

素浪人 | URL | 2009年08月08日(Sat)21:24 [EDIT]


Re: タイトルなし

>背景は写真の画像処理じゃあないのか?静止画が写真のように精巧なのに動く絵になるととたんに漫画っぽくなる。

うーん、どうなのでしょう?丁寧に書いているのだと思っていました。
確かに人物が一番平面的でしたが、想像力を刺激する為にわざとそうしているのかと。写真を画像処理してその上にさらに加工している可能性もありますね。
色々資料を探しましたがそこまでの記述はなくて。もう一度見たい作品なのでぜひ確認してみたいと思います。

犬塚 | URL | 2009年08月09日(Sun)09:33 [EDIT]


複雑で引き込まれました

冨司純子の声がよかった。ネットに弱いと仮想都市が解りにくいが引き込まれました。真っ青の空がきれいで子供の頃の夏休みを思い出しました。

薫 | URL | 2009年08月13日(Thu)00:01 [EDIT]


Re: 複雑で引き込まれました

> 冨司純子の声がよかった。真っ青の空がきれいで子供の頃の夏休みを思い出しました。

上映中はおばあちゃんに惹かれながら最初冨司純子と解らなかったけれど、後で見てさすがだなあと思いました。これって正しい声優のお仕事の仕方でしょう?
信州ののどかな夏景色が素敵ですよね。抜けるような空と白い入道雲、縁側の朝顔と正しい日本の夏です。こうやって何年たっても思い出すんだから、子供の頃に色々体験しておくのは大切だと、改めて思いました。

犬塚 | URL | 2009年08月13日(Thu)08:57 [EDIT]


よかった~♪

夏休み当初から「連れてって~!」と言われていたんですが、やっと、観てきました。
昼過ぎにネットで検索して、席はほとんど空いていたので上映1時間前に到着・・・したにもかかわらずsold out★
仕方なく18時から。

夕方スタートだったせいなのか、部活帰り風の高校生が大多数でした。
あとは、うちと同じ親子連れ。
オトコのコが6割だったかな?
そして、やはし、最前列まで満席。

帰り道に「誰になりたい?」と聞いてみたら
「カズマ~!」と中3・小3息子ふたりとも同じ答えでした。
2番目は侘助。3番は陣内万助(カズマの師匠)だそうです。
めずらしく、答えがそろってました。
「健二は?」「それ誰やった?」「主人公!」「あ~・・・。別に。」
いつもながら、わが息子の視線の先には・・・?


仮想世界と現実を上手に混ぜてあるな~って思いました。
子どもたちが魅かれるのがわかる!
家族みんなで戦うときに、子どもはDS、大人はケータイ・PCとそれぞれがいろんなメディアを手にしていて、それもいろんな機種が上手に混ぜてあって、リアルに楽しめました。
でも、現実と混同しないように上手にアニメで処理してあったようにも思えました。

家族っていいなぁ。
大人の役割、子どもの役割、年寄りの役割。
大人だってオトコと女、お母さんと娘の立場と。
それぞれの場面でのセリフや行動力。
思春期のオトコのコ女の子が、みんな素敵でした。



 kimico | URL | 2009年08月15日(Sat)20:49 [EDIT]


Re: よかった~♪

> 帰り道に「誰になりたい?」と聞いてみたら
> 「カズマ~!」と中3・小3息子ふたりとも同じ答えでした。
> 2番目は侘助。3番は陣内万助(カズマの師匠)だそうです。

そうかあ、やっぱ子供たち(?中3はもう子供とは言わないかも。少年かな)の代表はカズマですよね。下から見上げるような視線のオタク度といい、ネット社会での実力といい、悪がきぶりも素敵だった。二人の息子さんの姿が目に浮かぶようです。
主役の健二は、濃い陣内家の人々に驚いて成長する物語だから、尊敬を勝ち取るのはちょっと難しいかも。ニヒルな侘助も素敵でした。なんか色っぽくて。とても幸せな気分になるアニメでした。

ところで、満席というのは嬉しいですね。色々な方に「いいよー」を連発しているのだけれど、大人の、特に女の方にはアニメアレルギーが多くて・・・。子供のものだと思って、なかなか動いてくださらない。アニメの語源はアニマ、つまり命のことで、絵に命を吹き込んだものということになります。それは手法で動いているように見せることでもあるし、物語で命を吹き込むことでもある。とても深いと思うのですが。
でも世間では人気のようで嬉しいですね!

犬塚 | URL | 2009年08月15日(Sat)23:40 [EDIT]


 

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ヘイローウォーズ | 2009年07月29日(Wed) 05:26


 
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