太秦からの映画便り

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映写室 新NO.11「ボルト」&「屋根裏のポムネンカ」

映写室 新NO.11「ボルト」&「屋根裏のポムネンカ」
   ―対照的な作り方の2本の冒険アニメーション―

 夏休みのせいか、良質なアニメ作品の公開が続きます。今週取り上げるのは、新生ディズニーによるCGアニメーションと、芸術の国チェコが誇るストップモーション・アニメ。先週の「サマーウォーズ」の平面性とは違って、今週の2作はどちらも立体的。しかもどちらも冒険物語で、友情が起こした奇跡を描きます。ここまで進歩したと誇るような、ハイテク技術を酷使した「ボルト」も、65年の歴史を持つ、恐ろしくアナログな手法の「屋根裏のポムネンカ」も、作品の根底は友達を思う心。勇気を奮い立たせるのはいつも誰かへの熱い思いでした。手法と物語の両方で、クリエーターたちの創造力を楽しみたい。

《1.ボルト》新生ディズニー第1弾CGアニメーション
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(C) Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

 <犬と猫とハムスター3匹のロードムービー> ボルトは、TVドラマの中で少女を守るスーパー犬として活躍中だ。車よりも速く走れ、一吠えでそこら中を破壊する話を支える特殊効果を、自分の力だと思い込んでいる。間違えてニューヨークに来たら、スーパーパワーが出ない。あれは架空の話だと教えられても、にわかには信じられない。少女との絆を信じて、野良猫やハムスターと一緒にハリウッドを目指す。

 <…と、主人公のボルトは>世間知らずでちょっと間抜け。もっともハリウッドの撮影スタッフが、それを利用して作品の臨場感を保ってきたのもある。純粋と言うべきかも知れない。スーパーパワーは贋物でも、少女を思う気持ちは本物だ。少女はそれが解っているから辛い。でも自分を助けようと、“どんな時でも危険の中へまっしぐら”のボルトの姿が、番組を支えているのも解っている。犬だけれど、まるでナイト気取りのボルト。きっと誰の愛犬にもこんな物語があるのだろう。繊細に犬の心理が描かれ、愛犬家だったら堪らない作品だ。

 <騙されているとボルトに教えたりと>、世間並みのおせっかいを焼く野良猫、TVドラマのファンで、スーパーパワーを信じてボルトに憧れているハムスター、そんな2匹のキャラクターも可笑しい。特に元は飼い猫だったのに、人間に忘れられた過去を持つ野良猫の複雑さ。いじけ方や住処作り等、まるで人間の女性のようで、いじらしいのだ。透明なボールに入ってころころと転がって移動するハムスターの、向こう見ずさと義侠心も見逃せない。こちらはさしずめ次男坊ってところだろうか。
 <3匹が主人公だからか>、人間の姿は何とも不様。少女以外はCG作品独特のヌペーッとした顔と巨体が映る。もしかすると動物の目にはこんな風に人間が映るのかもと思ったくらいだ。技術が進んだとはいえ、人間の表情を描き分けるのは難しい。当分の間のCGアニメの人間描写は、体が特徴のこんなものなのかもしれない。

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(C) Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

 <一方で、3匹の走るシーンは>CGの威力を誇示する。草がなびき、車が横をすり抜けと、画像が飛び出してきて、まるでスクリーンが客席まで広がったよう。時々身を避けるのも楽しい。この企画自体、3Dを効果的に使える物語として生まれたものなのだろう。そのくせ、地図だとかエンディングだとか、従来の手描き塗り絵の手法を効果的に使用し、ほっとした味わいを加えてもいる。この手法で全編行くのも良いかもとも思ったくらいだ。このあたりが余裕だけれど、CGアニメのヒットを重ねたジョン・ラセターが帰ってきたディズニーは、これからも進化を続けるのだろう。
 
  全国で上映中、劇場により、2D,3Dあり
      (3Dは大人2000円、中・高・シニア等1500円の特別料金)


《2.屋根裏のポムネンカ》:伝統のチェコ人形アニメーション長編最新作

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 <主人公は屋根裏部屋の忘れられたガラクタたちだ> 古いトランクの中で、不思議な人形たちが暮らしている。ある日、青い目の人形ポムネンカが悪玉にさらわれた。仲間たちは彼女を助けに、箪笥から溢れるシーツの洪水、家具の山と、幾多の困難を乗り越え、屋根裏の向こうのまだ見ぬ世界へ飛び出す。

 <物語に触発されて>、子供の頃を思い出した。小さい頃に遊んだお人形は、いま何処にあるのだろう? へこんだ薬缶やクッキーの入っていた綺麗なブリキ缶は何処に? いつの間にか筆箱から消えた定規にちびた鉛筆は? 昔の家だと、子供が放り出しても母親が蔵の片隅に思い出と一緒に保管していてくれたものだ。電球も無い梁がむき出しの屋根裏部屋に大きな箱に容れたままで上げて、仕舞った事さえ忘れられたりもする。このアニメーションは、そんな屋根裏のガラクタたちが住む世界を描いたもの。空想好きな子供が、無くしたおもちゃを思い出して見た一夜の夢の様でもある。
 <人形の大きさに身を縮めれば>、箪笥だってテーブルだって、私たちの日常は巨人の世界。視点を下げただけでお伽の国が始まる。ここに創造も加わり、映像だからこそ表現可能な、書くに書けない奇想天外で速い展開も、この作品の魅力の一つだ。


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 <芸術の薫り高くしているのは、物語だけでなく手法が大きい> 何しろこのスピード時代に、恐ろしく非効率な、アニメーターが1コマ1コマ人形を動かして撮るという、ストップモーション・アニメの手法で作られているのだ。出来上がるまでには、気の遠くなるような時間と、職人技的技術や作業の積み重ねがある。
 <作ったのは>、チェコ人形アニメでも最後の巨匠と言われる“イジー・バルタ”。映画祭等で絶賛されながら、手法に時間とお金がかかるせいか、何と23年目の新作になる。資金集めの為途中で止まっている作品もあるらしい。
 <お茶目でユーモラスなキャラクターたちは>、彼がチェコの街から集めたガラクタや古道具で作ったもの。国中いたるところにガラクタ市があるような、古いものを捨てない文化、伝統と薄暗がりのあるチェコの監督だからこそ出来た作品だと思う。使った人の手垢の残るガラクタは、誰もの想像力を豊かにする。私を使って! 私の過去を当ててみて! と言うガラクタたちの声に耳を傾けたバルタの工夫の数々、彼の中の子供心を炸裂させた映像や物語が楽しい。

 <驚くのが、ポムネンカの豊かな表情だ> カメラワークや光で人間よりも複雑に感情を覗かせる不思議さ。もちろんそれは、私たちの感情移入の賜物でもある。作品の深みは、制作者たちの工夫とそれに触発された観客の想像という、共同作業で始めて出現する世界。どちらか片方では成り立たない。だからこそストップモーション・アニメは世界中のクリエーターに愛される。ぎこちない動きのガラクタたちに命が見えた。映像も物語も詩情溢れて、宝石のような作品だ。

 この作品は、8/8(土)からシネマート心斎橋、京都シネマで上映、
          9/26(土)神戸アートビレッジセンター にて公開



 <さあ、先週から続いた対照的な3つのアニメ作品>、あなたのお気に入りのはどれだろう? どんな手法をとるにしても、アニメーションは見えないところでおびただしい時間と人手が費やされている。だからこそ可能なぶっ飛んだ発想や映像が特徴で、クリエーターの創造のままに、スクリーンの中に全く新しい世界が出現するのだ。その結果の、現実と想像の世界の境をなくした飛躍感が命だと思う。こうして書いていると、アニメ作品を深くするのは観客の加える想像力なのも痛感する。どの作品にも、大人ならではの楽しみ方があった。子供にここまで理解できるのかしらと思う深さもある。涼しい映画館で、この時代だからこそ味わえる、3つの贅沢をお楽しみ下さい。(犬塚芳美)
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コメント


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明石のシネコンでもボルトが上映されています。こちらはメガネをかけて見る3Dだそうで、料金も高めでした。「飛び出して見えておもしろい!」という意見と「目が疲れるから普通に2Dの方がいい」という意見があるみたいですね。今月末にまた映画館に行く予定なのですが、これにしようかハリポタにしようか…悩み中です。

ayako | URL | 2009年08月06日(Thu)23:59 [EDIT]


Re: タイトルなし

たしかに3Dは疲れるという方もいますね。字幕は無理なのか必ず吹き替えだし、選択が難しいところです。それと映画の日とか、レディースデーとかの割引に関係なく大人は2000円。一人ならともかく、両親と子供とかの家族で行くと、ちょっと辛い。でも3Dを一番喜ぶのは子供でもありそうなので悩ましいところです。
実はこのあともいい映画が目白押し。月末に1本を選ぶのは大変かも。うれしい悲鳴ですが・・・。

犬塚 | URL | 2009年08月07日(Fri)09:16 [EDIT]


 

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