太秦からの映画便り

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映写室 新NO.12 南極料理人

映写室 新NO.12 南極料理人 
 ―究極の単身赴任地で!―

 毎日茹だる様な暑さ、せめて映像だけでも涼しげなものが見たい。今週はそんな要求にぴったりの作品を取り上げよう。舞台は白一色、雪、雪、氷。外を歩くと、口ひげの周りが息で凍ってきたりする。
 <原作は、1997年の南極ドームふじでの越冬隊に>、海上保安庁から派遣されて調理を担当した、西村淳さんの「面白南極料理人」。題名からも察せられるように、人間ドラマだけでなく、毎食並ぶ美味しそうな食事も見逃せない。
 <考えてみると極寒の地は究極の単身赴任地> 隊員だけでなく、送り出し待つ身の家族との間には複雑な物語がある。本当に寂しいのはどちらなのだろう。面白おかしい男たちの物語だけど、なんとも愛しい男と女の物語にもなっている。

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(C) 2009『南極料理人』製作委員会

 <沿岸部の昭和基地から約1000キロ離れた>南極ドームふじ基地は、標高3810メートル。平均気温マイナス54度Cで、ウィルスさえも生存できない。そんな極寒の地に、8人の男たちが1年半滞在する。研究の為、あるいは研究のサポートの為に、家族と離れ離れの任務だ。志願した者も任命された者もいる。楽しみは3度の食事と家族への電話だけれど、その電話も時には素気無く切られる有様。せめて食事で皆を慰めようと工夫を凝らすのが料理人。孤独感から備蓄食料を盗み食いする隊員もいて…。

 <この頃見ないから解らないが>、以前はNHKの紅白歌合戦の途中で、必ず南極昭和基地からの応援メッセージが届いたものだ。宗谷丸が氷に閉じ込められたというニュースもあったし、越冬隊の命をかけた大変な暮らしぶりのドラマも見た。その頃と困難は変わらなくても、成功が重なると関心は薄くなる。でも今年は南極条約署名50周年。しかも新南極観測船「しらせ」が出向するなど、定例化した南極越冬が再び注目を集めているのだ。
 <何しろ辺境の極寒地>、いくら嫌になっても喧嘩をしても帰る手段はない。8人が顔をつき合わせて基地の中で1年半を乗り切るしかないのだ。ここで描かれるのは、そんな男だけの集団生活の、まるで悪ガキのような右往左往ぶりだ。体験が元になっているだけに、8人それぞれのはみだし方にリアリティがあって、ほほえましくも可笑しい。苦労さへも面白おかしく描かれているのは、原作者の視点でもあり、脚本も担当した沖田修一監督の人間性でもあるのだろう。

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(C) 2009『南極料理人』製作委員会

 <それぞれのキャラの立った、絶妙のバランスの配役も見所だ> 妻に離婚を示唆されながら出発する主人公の料理人には堺雅人。家では娘に疎まれる情けないお父さんを、父性と母性を織り交ぜて演じている。しなやかな頑固さと言うのか、この料理人の両性有具的な個性がそのまま人気絶頂の堺の個性に思えた。毎回離婚騒ぎの果てに出発すると言うベテランの雪氷学者には生瀬勝久。目の動きだけでコミカルな雰囲気を出せるのはさすがで、終盤にはこの男の魅力と人生の奥深さを、又もや瞳の深さで見せる。ラーメンが好きでこっそり食べ尽くすタイチョーの気象学者にはきたろう。彼の場合存在そのものが和みで、でも瞳の奥にはカッコたるものも感じて、隊長ってこんな人が良いなあと。電話魔の若者には、今時の若者らしさが光る高良健吾。酒好きのドクター役の豊原孝補は、ハンサムを返上した、むさ苦しいどてら姿が楽しそう。
 <…とこんな具合に>、8人の暮らしは大人版男子寮状態。いじける者、抜け駆けする者、なだめる者と大人気なさが素敵だった。男の人はすぐに童心に帰れるものらしい。
 <可笑しいのが誰もが献立に一喜一憂する様で>、ここでは食事が唯一の気分転換。何があろうと皆で揃って同じものを食べるのが困難を乗り切る力、家族の原点のようだった。
 
 <私はバスの上から道路工事を>見るのが好きだ。其処にはせわしなく動く人も力一杯頑張っている人もいない。誰かが何かをしている間は、他の人はぼーっと見ているだけ。それでもその人がやり終わると次の誰かが自分の受け持ちの仕事を始める。こんな風にちんたらと働いているようで、作業自体が途切れることはない。最初は何ていい加減なのかと思ったが、繰り返し見ている間に、そんな風にしないと体力が持たない仕事なのだと気付く。どの人にも役割がありそれを淡々と行っている。
 <これが女の人の集団だったらこうはいかない> 例えば私だったら、後先考えず最初に頑張ってすぐにバテて、結局何日も休むことになるだろう。あるいは誰か一人だけが頑張り、他の人は白けているかも。要するに、短期ならともかく、女たちには長期の共同作業は出来ない気がする。男性の専売特許だ。

 <この南極観測隊は>そんな男性軍の美徳を発揮して、誰もが頑張り過ぎず、でも皆で頑張り、笑いながら大変なことを成し遂げてしまう。主題を超えて、私には男性の美徳を描いた作品に思えた。
 <もちろんそれ以前に>、夢にかける男達の純粋さもたっぷり描かれる。ユーモア、助け合い、友情、家族への愛と、全編男性による男性賛歌の映画なのだ。そんな姿勢が熱くて、実はこれだけ氷を見ながら涼しくはならなかった。この熱さで越冬を乗り切ったのだからそれも仕方がない。後ろに古典的な理想の女性像も垣間見えるけれど、ここまでやられたらそれも仕方ないか。31歳の沖田監督、今時の若者に似合わずなかなか硬派だ(犬塚芳美)

 この作品は、8月22日(土)よりテアトル梅田、TOHOシネマズ二条、 
                 シネ・リーブル神戸等でロードショー
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