太秦からの映画便り

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映写室 新NO.14女の子ものがたり

映写室 新NO.14女の子ものがたり   
 ―旅立ちの時を振り返る―

 <夏の終わりが見え始めた> 季節の移ろいに人生を重ねて、1年のうちでも一番メランコリックになる頃だ。こんな時は昔を思い出す。元気一杯で、夏の太陽のようにぎらぎらしていた思春期。それは故郷の情景や幼なじみの思い出とも重なる。あの原風景がある限り、又明日から頑張れそうな気がするものだ。
 <この作品の主人公も>、故郷に帰って元気を取り戻す。元気をくれたのは、精一杯に生きていたあの頃の自分や友達、そして今も変わらない山や海だ。私のそんな場所は何処だろうと、思わず心の中を覗いてしまう。友達だけれどライバル、ライバルだけれど友達。複雑な女性心理を描いて、まさに「女の子ものがたり」。誰もの中の少女性を擽る作品です。

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(C) 2009西原理恵子・小学館 / 「女の子ものがたり」製作委員会

 <36歳独身の菜都美は>スランプ気味の漫画家だ。散らかった部屋で寝そべっていると、12歳の頃の自分や友達が夢に出てくる。海と山のある小さな町で「お前はなんか違う。人と違う人生が送れるぞ」と繰り返した義父。編集者に「先生、友達いないでしょう?」と言われて、ふらりと故郷への旅に出る。そこには思い出の絵が…。

 <家が貧しくても皆に嫌われても>、3人でいれば楽しかった日々。青田の中の3人の少女の弾ける笑顔が眩しい。友達がいるのに親友を探して海へ流す瓶の手紙、デパートへの冒険、友達を巡る学校での諍いや放課後の遊びと、どれもリアリティがあって懐かしかった。
 <今の菜都美を深津絵里>、子供時代を実写版「ちびまる子ちゃん」で主役を演じた森迫永依、高校時代は大後寿々花と、年代別に3人の実力派が演じ分けている。最初の2人のどちらもに未来の大物感が漂い、配役が巧みだ。控えめながら秘めた意志を感じさせて、後を受け継いだ深津絵里がその余勢も借り、肩の力を抜いて心地良さそうに演じているのも、物語に当てはまる。

 <原作は「いけちゃんとぼく」とか>このところ映像化が続く、西原理恵子の自伝的漫画。人生の過剰さと痛い心情を笑いに変える直前で踏みとどまり、痛いままでリアルに描く作家の誕生秘話が興味深い。
 <自分を突き放したようなシニカルなあの視点は>、何時出来たのか? 選んだ友達は、向こうから近づいてくる裕福な少女ではなく、家庭的に恵まれず外見を取り繕ったりしない、いや取り繕いようもないような破綻した家庭で、ひりひりした心を抱えてそれでも逞しく生きる本音の人だ。良い人と悪い人がいるように、運の良い人と悪い人がいる。不器用で、ついつい入らなくてもいい溝に落ちてしまう不運を、情けなさで怒りながらも、見放せない優しさがあるのだと思う。もしかしたら自分は何とか落ちないで生きているから、無防備に落ちる人が自分たちの不運まで引き受けてくれているようで、余計に愛しいのかもしれない。思春期に出会った、何も悪くはないのに人生に躓いてしまう友達2人と義父へのシンパシーが、西原の独特の視点を作るのに大きく加担したようだ。

 <やくざな男と結婚して、人生の見通しも立たないうちから>子供を生み、世間の基準では惨めな人生に満足する友達。事業に失敗し田舎に引きこもったものの、やっぱり蒸発してしまう義父。自分たちは躓いているからこそ、田舎で燻ぶっているからこそ、ここを出て外へ行けと背中を押す彼ら。それも優しくではない。「お前の顔なんか見たくない。町を出て行け、帰ってくるな」と激しい口調で追い立てる。 
 <可能性のある友達を送り出そうと思う>気持ちもあるけれど、それだけではなく、彼女の批判的な視点が痛かったのも大きい。惨めさは自分でも解っていることなのだ。でも、自分にはそんな人生しか選べない。それで納得しているのを不幸だなんて思わないで欲しい。…と言う友人たちの苛立ちも解る。思春期は大人へと続く道。ここからはそれぞれの線路は離れて行くだけ、近くにいたら3人の友情は消えていたと思う。

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(C) 2009西原理恵子・小学館 / 「女の子ものがたり」製作委員会

 <人生には別れの時がある> 西原を作家にしたのは、才能だけでなく義父や友人との苦味を伴う別れでもあったようだ。思春期に彼らと共に見聞きした、単純な夢や取り繕うことの虚しさを誰よりも心に刻んだ、だからこその孤独を抱える作家だと思う。デフォルメした画の優しさと相反するようなテーマの暴力性は、まるで甘くなりがちな自分の中の少女性を恥じているみたい。どうして甘さを恥じるのだろう? 甘さに虚飾を感じるのだろうか? …と、サイバラファンの私はどうしても映画をディープに見てしまう。そんな作家の少女時代が、苦味を伴って浮かび上がり、自分のその頃と重ねていた。

 <ところで、田舎に描き残した設定の>象徴的な絵が出てくる。もちろん描いたのは原作者の西原で、少女がずっと続く道の前で、歩き出しかねて心細そうに今の場所を振り返っている構図だ。道の向こうは地球の果てまで続いている。未来が見えたのだ。こんな風に人生には、心細くても前に踏出さないといけない時がある。故郷の良さは、そんな時にいつでも帰っておいでと迎えてくれる大らかさ。都会で消耗の激しい流通の中で頑張るサイバラが、多分時々思い出す情景だと思う。心の中に仕舞った自分の原点を愛と感謝を込めて差し出した作品だ。

 <余談だけれど、ロケ地は四国愛媛県> スクリーンにも漂っている爽やかさやぬるさ等、この地の空気を知る筆者には、余計に作品の世界感が迫ってくる。最後に流れる持田香織のボーカルが又良いのだ。物語の世界を歌が更に広げて行き、彼女の声はまさに女の子の声だと、テーマとの一貫性に思い至った。(犬塚芳美)
 この作品は、8月29日(土)よりシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、
               京都シネマ、シネ・リーブル神戸等で上映


  関連イベント、タイアップ多数あり:詳細は公式サイトで
      http://onnanoko-story.jp/index.html 
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コメント


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女子と言うよりオヤジ頭の(?)ワタクシは、
「女の子」という響きに近寄りがたいような
憧れと畏れを抱いてしまい、
タイトルだけを見ると「恥ずかしくて見に行けるか、てやんでぃ!」となるのですが、
原作がかのサイバラさんとなると、急に違うものに見えてくるから不思議です。

でも、何でまたこんなタイトルにしたのでしょう?(笑
チケット売場で「女の子ものがたり1枚!」
と言うときの恥ずかしさ…
サイバラ女史はそれも計算しているのかも…?
そんなアホことを考えてしまうの私はつくづく小物です。

ayako | URL | 2009年08月28日(Fri)23:40 [EDIT]


Re: タイトルなし

> タイトルだけを見ると「恥ずかしくて見に行けるか、てやんでぃ!」となるのですが、
> 原作がかのサイバラさんとなると、急に違うものに見えてくるから不思議です。

言われて見るとベタなタイトルですね。友人(映画好きの男の人)からも、「良いらしいけれど、まあ観ないだろう」と言うメールが来ていました。確かに男性や大人は口に出してチケットを買うの辛いかも。気恥ずかしさが目に浮かぶようです。

私の場合其処のあたり、あまり考えずに、(あ、サイバラさんの漫画が又映画になった。しかも自伝的?)といそいそ試写に出かけたわけですが・・・。多分映画会社の方も(企画を出したのは当然サイバラファンだろうから)、内容のほうに目が行って、題名の気恥ずかしさに気付かなかったのでは。
サイバラさんだと絶対甘くならないですものね。もっとも、「女の子」と言う言葉自体にサイバラさんは甘さを感じていないのかもしれません。「ぼくんち」とか大好きで。

犬塚 | URL | 2009年08月29日(Sat)00:04 [EDIT]


見てきました!

懐かしい故郷が出るからと、夫と行ってきました。
冨士山(とみすやま)、肱川、長浜、嬉しかったです。
原作の味もよく出ていたし、何回も出てくる空と土手の感じがすごく好きでした。
原作は高知なので、人物のイメージは明らかに高知でしたね。でも、幼なじみと重なる部分もいっぱいあって、リアルさにグッと来ました。
二番目のお父さんが亡くなったぐらいから後、私は泣きっぱなし。最後の持田香織の歌もよかった。深津絵里ももちろんよかった。
夫も、「いい映画だったな」と感慨深げでした。

大空の亀 | URL | 2009年08月30日(Sun)20:27 [EDIT]


Re: 見てきました!


> 冨士山(とみすやま)、肱川、長浜、嬉しかったです。

やっぱ地元ですね、詳しい。私では其処までは解らないけれど、空の青さ、青田の感じ、空気感が、まさに大空の亀さんの青春の場所。お友達と一緒にそのまま出てきそうでした。

> 何回も出てくる空と土手の感じがすごく好きでした。

私も空へと続く土手のシーンが好きで、あそこに寝転んで猫じゃらしを捜しそうになる。なんだか懐かしくて。実家に帰った時、ここら辺りが舞台だと家族にさんざん自慢しました。ついでに地元の幼馴染には、絶対大洲の映画館で観るようにと進言です。

> 原作は高知なので、人物のイメージは明らかに高知でしたね。でも、幼なじみと重なる部分もいっぱいあって、リアルさにグッと来ました。

これも確かにそう! 愛媛とは微妙に違うけれど、重なる所もあって想像できる。明るさや、呑気さが良いですよね。悲しいのだかなんだか解らない感情が胸に迫って来てうるうるしました。
(大空の亀さんには負けるけれど)地元意識もあるし、サイバラファンでもある。思い出深い1本になりそうです。

犬塚 | URL | 2009年08月30日(Sun)21:43 [EDIT]


 

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ちびまる子ちゃんDS まるちゃんのまち | 2009年08月27日(Thu) 01:08


 
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