太秦からの映画便り

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

映写室 新NO.15サブウェイ123 激突

映写室 新NO.15サブウェイ123 激突     
―1時23分発の地下鉄でNYをハイジャック―

 こんな作品を観た直後は、電車に乗るのさえ怖くなる。日本でも以前にバスジャックがあったけれど、地下鉄でハイジャックに巻き込まれるなんて災難でしかない。カメラが、事件現場・身代金の輸送・犯人の追走を追って、轟音の響くNYの地下鉄線路構内に潜り、カーチェイスを追っかけてハイウェイをぶっ飛ばし、ヘリコプターで摩天楼を俯瞰してと、縦横の視点が迫力の作品だ。
 <原作はジョン・ゴーディのベストセラー小説で>、1974年の初映画化作品「サブウェイ・パニック」を、トニー・スコット監督が時代に合わせて翻案したもの。デンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタと言う演技派2人の息を詰める頭脳戦が見所だ。人間だけでなく、蜘蛛の巣のように張り巡らされた地下鉄路線という、内臓までさらした巨大なNYの街も片方の主役だと思う。

sabway123-m.jpg

 <NY、午後2時。ベラム駅1時23分発の地下鉄>を、4人組がハイジャックした。ライダー(ジョン・トラボルタ)と名乗る男が「市長に連絡して、1時間以内に1000万ドル用意させろ。遅れたら1分毎に1人ずつ殺す」と運行司令室に連絡してくる。交渉役には最初に無線を受けたガーバー(デンゼル・ワシントン)が指名された。人質解放の交渉しながら犯人像を探るガーバー。何故市長で、何故1000万ドルなのか、何故59分なのか、自信たっぷりのライダーとはどんな男なのか…。

 <ガーバーは運転手から管理職>に上り詰めたのに、汚職疑惑で停職直前だ。そんな事情ゆえ、彼が犯人の一味ではと疑い始める警察幹部。犯人側の真意が解らず、捜査するほうも右往左往する。そんな中で、一人冷静沈着に犯人に向き合うガーバー。1秒間違えば大惨事を起こすような路線の采配は彼の日常業務、息を詰めるような修羅場も何度もくぐっているのだろう。家庭的で平凡な男のガーバーが、粘り強い交渉力を見せて、犯人だけでなく警察側や市長の心をつかんでいくあたりの描写が見事だった。

 <ガーバーは、長年実務に当たった者だけが持ち得る自信>、NYの地下鉄を誰よりも知っているという誇りをかけて解決していく。いつもより太目の体で、知性に普通人の凡庸さと穏やかさをつけ加えたデンゼル・ワシントン、コーヒーをこぼす仕草すらこの男の人となりだ。精悍さを消した外見が、余計に内面の繊細さを浮かび上がらせると言うのも面白い。

 <ライダー役のジョン・トラボルタは>まるでギャングでタフさが目立つ。凄みのある面構え、鍛え抜かれた肉体、そのくせガーバーに見せる奇妙な近親感から滲み出る人間性と、この男の凶暴性の根幹が何処にあるのか解らず、優しさすらも不気味さになる。
 <出世作「サタデー・ナイト・フィーバー」>の後はイメージの払拭に苦労したというが、今やすっかり演技派のトラボルタ。「ヘアスプレー」で女装したりと、この所芸域も広い。瞳の強さや圧倒的な存在感に、積み重ねた時間や努力がしのばれて、同世代人として誇らしかった。
 <ただこの作品のミソの>ハイジャック事件の裏側を考えると、彼はちょっとタフ過ぎる。もう少し普通の、知的でホワイトカラーの匂いのする俳優のほうが良かったのではと思ったりもするのだ。逞しい体を持つ人の怒りは、体も怒りを表現して確信的で狂気になりにくい。静かな狂気というか、類まれな頭脳の暴走というのも怖いものだ。ジョン・トラボルタとは違った怒りの表現で、ガーバーとの対決を見てみたかった。ライダーに哀れみが出て、又別の物語になるかもしれない。

sabway123-s.jpg

  <…と、一歩間違えば大惨事になるような>過密ダイヤの地下線路でのロケとか、ハイウェイでのロケと、監督がリアリティにこだわった映像で臨場感を掻き立てられた分だけ、そちらは自然に受け入れて、視点は二人の内面に向かっていく。俳優二人の存在感が、そんなお膳立てに負けなかったということかもしれないけれど。

 <興味深いのは彼らの抱きあう>緩やかなシンパシーの生まれどころだ。誘拐事件等でも、ヤキモキする捜査陣を尻目に、犯人と人質が心を通わせあうことがある。ぎりぎりの状態で心を探り合えば、相手の柔らかい人間性を見るということだろうか。どんな人間も奥底では共感できる人間性を持っているということかもしれないし、この二人の場合は、相手の頭脳への畏敬もあるかもしれない。描き切っていないだけに、余韻となってそんなことが気にかかる。
  <さあ、勝者は誰か>、丁寧に観ないと犯人の企みに辿り着けない。公開中の「トランスポーター3」、「3時10分、決断のとき」と共に、アクションシーンの激しい、久々に見ごたえのある大人の男性映画だ。ネット画像等、さりげなく散りばめられる現代風物がハラハラさせて、今っぽいエンターテインメントになっています。(犬塚芳美)

この作品は9月4日(土)より、梅田ブルク7、TOHOシネマズ梅田、
                  OSシネマズミント神戸等で上映
スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。