太秦からの映画便り

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ファーストフード文明

映写室 NO.138ファーストフード・ネイション    
  ―食の向こう側―

 中国からの輸入餃子に端を発して、食の安全への信頼が揺らいでいる今、タイムリーな作品が公開される。大手のハンバーガー・チェーンの牛肉パテに大腸菌が混入した事から、次々と明らかになる業界の内幕。アメリカのジャーナリスト、エリック・シュローサーのルポルタージュ「ファーストフードが世界を食いつくす」を元に、事実にドラマを混ぜた解りやすい展開が衝撃の映像で続く。手軽でこぎれいなファーストフードの裏側には、必ず汚れ仕事をする人がいると解かってはいても、こうしてあからさまになると辛い。

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(C)2006 RPC Coyote,Inc.

 <荒筋はこうだ。車にすし詰めのメキシコ人>たちが、命からがらアメリカへ密入国する。でもここにも早々仕事はない。一方ファーストフード・チェーンのミッキーズでは、主力製品”ビッグワン“の好調に沸いていた。そんなところへ「わが社のパテから多量の大腸菌が検出された。公になる前に調査しろ」と社長の命令が下りる。責任者のドンがコロラドの契約工場に飛ぶと…。
 <この後はおぞましい事実が次々と明るみ>に出るのだけれど、ファーストフードを食べる人も食べない人も、これが食の現実。目をそらしてはいけない。まるで先に公開されて大ヒットしたドキュメンタリー「いのちの食べ方」の続編のよう。「いのち…」に映った主役は大量生産される食品だった。農作物も動物も無機的にまるで工業製品のように管理されて、誕生から死(つまり私たちの食料になる)までをベルトコンベヤーの上で送る。
 何の説明もなく淡々とその過程を写した映像が雄弁で、そこには自然の摂理の命の共存や連鎖なんて物はない。現代社会の私たちが、何の痛みも感じず多くの命を奪って自らの命に変えている事に思い至ると、その罪深さに項垂れるしかなかった。

 <でもそこにもまだ、目を覆っている事実>がある。今回はそこを主体にして、便利に生きる為に、他の生物の命どころか同じ人間の尊厳や命までも奪っていると言う資本主義社会のエゴを描いていく。

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 <社長はともかく、ドンは真面目な男で>企業人でありながら消費者の視点もあって、両方からの真摯な姿勢で味と利潤を追及している。自分の仕事に誇りを持っているから、大腸菌の話を聞いてもすぐには信じられず、コロラドに着いてまずしたのは、”ビッグワン“を食べる事だった。不正や劣悪な環境はいつも何重にも覆ったベールの向こう、真剣に剥ぎ取らないと見えてこない。それでもまだ不充分なものは何か、企業と消費者という自分の視点の前にある、生産者や加工者の視点に立てば見える事がある。ファーストフードの罪と著しい特徴は、そこと消費者の間を大きく開けてしまった事だ。
 <消費者受けを狙って>、いや消費者だけが悪者逃れをするのはどうも好きじゃあない、つまり消費者の無言の要求で低価格競争が始まり、企業は利潤追求で生産者や加工業者に低価格を押し付ける。彼らは彼らで生き残りの為に食の安全管理を蔑ろにし、従業員に皺寄せをしていく。そこに巻き込まれるのが不法移民という悲しさ。つまりファーストフードの低価格は、本来の価格ではなく弱者が受けた損害の代償なのだ。食べる事で知らず知らずその不条理に加担すると気付けば、100円バーガーが喉に詰まると言うもの。メキシコから命からがら来た希望の地にあったのは何だろう。この辺りもアメリカの現状を丹念に織り込んでいる。
 <もちろん移民だけではなく>、ファーストフードで働くのはたいていがバイトの若者で、大げさに言うと、アメリカ下流社会の経済がファーストフードで廻っているようなものだ。経済でも「ファーストフードが世界を食いつくす」現実を目の当たりにする。

 <すさまじい食肉工場に>、命の終末をこんな風に見続けていたら神経がおかしくならないだろうかと気になった。とても平常心では見られない。目を覆ってばかりだったけれど、私のこんな観賞態度もエゴなのだ。嫌な事や汚い仕事は見ないで、他者に押し付ける卑劣さ。日本でだって解体は何処かでされているはずなのに、それを想像したことはない。
 <低価格を目指せば犠牲になるのは何か>解かっていても、消費者の立場になるとたいていの人はころっと忘れる。その皺寄せが食の安全に行って発覚すると、今度は貪欲な自分たちを棚に上げて、コストダウンに走った業者を責めるだけ。ここでは諸悪の根源に企業を置くけれど、もっと根幹の私たち消費者の無知とエゴを忘れてはいけない。(人が手作業で作るものは安くなくても良い。隠れた部分で大変な仕事をする人が、それに見合うだけのお金を得られ、消費者と同じ生活を出来る価格で良い)といつも思う。

 <怖いのは中国産の食品だけ>ではない。もちろんファーストフードだけでもなく、あまりにも作った人と消費者が離れていてその間が見えないのが不健康なのだ。この映画を食料自給率40パーセントを切り、その数字がまだまだ下がり続ける飽食の国、日本への警告のように思った。


  関西では2月23日(土)より第七芸術劇場で上映
       3月 京都シネマで上映予定


※ディープな情報
 監督は「スクール・オブ・ロック」の異才リチャード・リンクレイター。監督の人脈で大物たちが思わぬ役で出てるのでお楽しみに!今アメリカ人は年間130億個のハンバーガーを食べている。ファーストフード業界が大きくなるにつれ、アメリカ人のウエストが大きくなったらしい。1970年代以降太りすぎの大人は50%増え、5歳以下の子供では2倍、6歳から11歳の子供では3倍になっている。
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