太秦からの映画便り

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映写室 新NO.17「ココ・シャネル」&「ココ・アヴァン・シャネル」

映写室 新NO.17「ココ・シャネル」&「ココ・アヴァン・シャネル」    
 ―シャネルの映画2本―

 独特のマークを思い出させる題名だけでも魅惑的な、公開中の「ココ・シャネル」、公開直前の「ココ・アヴァン・シャネル」、来年早々公開の「シャネル&ストレヴィンスキー」と、ココ・シャネルを題材にした作品が続く。こうなったら全部を見比べたい。これほどの競作は珍しいけれど、なんでもそれらが作られた2008年は、シャネルの生誕125周年に当たったのだそうだ。もちろんそれだけではなく、時代の要請やシャネルの戦略もあると思う。若者主導のチープなファッションに流されっぱなしの今、シャネルのモードが一杯のこれらの映画をきっかけに、大人の服に目覚めて欲しいと考えても不思議ではない。

「ココ・シャネル」
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(C) 2008 ALCHEMY / PIX ALL RIGHTS RESERVED.

「ココ・アヴァン・シャネル」
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(C) Haut et Court - Cine@ - Warnerbros. Ent. France et France 2 Cinema

 <「ココ・アヴァン・シャネル」には>シャネル本社保存の貴重な服を提供しているし、「シャネル&ストレヴィンスキー」でシャネルを演じるのはシャネルの広告モデルで、衣装は現在のデザイナー、アナ・ムグラリスが手がけている。
 <今を多分に加味した来年の1本は>テイストが違うから後日に回すとして、今回取り上げる2本は、同じ様にシャネルの生きた時を再現する。興味深いのが同じ女性を描きながら微妙に恋の始まりのニュアンスが違うところだ。例え結末は同じだとしても、この違いって女にとっては大問題。長年連れ添ったカップルがよく揉める所で、あの世のシャネルはなんと言っているだろう。シャネルに扮する女優の見比べと共に、野次馬的興味が尽きない。

 <本人にそんなつもりはなくても>、恋をばねに大きくなっていくシャネル。ビジネス的に見れば相当したたかでもある。でも映画はあくまで恋心に寄り添い、シャネルが世に出るまでの日々を描いていく。彼女の半生はこんな具合だ。
 <孤児院で育ったガブリエル・シャネルは>、お針子として働きデザインの才能を開花させた。そんな時に、後に愛人となるエチエンヌ・バルサンと出会い、よく歌っていた歌から“ココ”の愛称で呼ばれるようになる。広大なエチエンヌの屋敷で暮らし始め、やがて彼の親友のボーイ・カペルと恋に落ちる。二人に嫉妬するエチエンヌ、贅沢でも退屈な上流社会の暮らし、日陰の身のココ。帽子のデザインを始め、やがて屋敷を出てボーイの援助で店を出し…、デザイナーとして階段を駆け上がっていく。

 <シャネルと言うと>、高価なシャネルスーツに代表される、上流階級に愛されるコンサバ服を想像しがちだけれど、出発点はむしろ前衛。コルセットに締め付けられた装飾的なドレスを着て、女性は男性の飾り物だった時代に、ジャージ等男性の衣料素材を女性の服に取り入れ、動きやすく活動的にして、女性の社会進出に人肌抜くような画期的なものだった。もちろんこんな事は、題名に惹かれてみる女性達なら常識。香水やボーダー模様のTシャツ等、もっと詳しいことも知っているだろう。そんな視点、生み出す服に重心を置いているのは、シャネルの全面協力を得た「ココ・アヴァン・シャネル」のほうだ。史実に近く当時の彼女の環境と色々な服が登場する。若い方ならこちらが楽しいかもしれない。

「ココ・アヴァン・シャネル」
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(C) Haut et Court - Cine@ - Warnerbros. Ent. France et France 2 Cinema

 <残念なのは>、忠実に再現すればするほど、当時、彼女の服を初めて見た人々の衝撃からは遠ざかる事。彼女のせいで、そのほとんどが今の私たちには常識になっているから、衝撃よりは単にモードの流れを確認する作業になってしまう。う~ん、こんな作品の難しいところだ。何だか古さが目立って、しかも別の時代になるほど古くもない。この映画で挽回を狙うシャネルの販売戦略は成功なのかどうか…。
 <生涯を「アメリ」で有名なオドレイ・トトウが>演じて、コケティッシュさが際立ちあまやかでもあった。階段を駆け上がっていくシャネル、それでも恋にも翻弄される一人の女、其方に重心がある。ただ、最後まで彼女自身、つまりオドレイに見えて、シャネルを感じるには至らない。スーツの着こなしは貫禄が足りないなあ。あれほどの存在感を持つ人を超えるのは難しいと其方に目が行った。

 <シャネルは小柄で色の黒い人だったらしい> そんな点ではオドレイ版に分配が上がり、1954年当時のシャネルを大柄なシャーリー・マクレーン、若き日をバルボラ・ボブローヴァと二人で演じ分ける「ココ・シャネル」は似ていないのかもしれない。でもマクレーンが圧倒的な存在感でシャネルスーツを着こなす様は圧巻だ。若いモデル達とは貫禄が違って、こんな人の為のスーツなのだと改めて気付かされる。マクレーンには似ていないけれど、バルボラも良くて、姿形では無いからだの奥からの力を感じた。

「ココ・シャネル」
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(C) 2008 ALCHEMY / PIX ALL RIGHTS RESERVED.

 <構成は、一度引退していたのに戦後再起を図る>さまを主体に、若い頃を回想の形で入れていく。華やかなシャネルのファッションを期待してみると、精神性に重心を置いたこちらは肩透かしを食うかもしれない。つまりデザイナーを彼女の作ったものからではなく、その精神性から解き明かそうとしているのだ。
 <コレクションの発表前に>お金が無くてマネージャーと揉める様、それを無視して、直前までもくもくとショーの準備をするココ。ショーの不評、それでも諦められないココ。このあたり、マクレーンの背中に滲む孤独、時代を追いかける仕事の過酷さが痛ましい。ココの強さと孤独が良く現れている。マクレーン版は凄みが勝って甘さがたりないようにも思うが、ビジネス的に見ると男勝りのこんな姿だったはず。帝国を支えるのにか細くてやっていけるわけがない。…なんて書き方からお解かりのように、私はどちらかと言うなら此方の方が好きだ。

 こうして書いていると、同じ題材でも切り口の違いが際立った。ちなみに「ココ・シャネル」は英語で演じられ、「ココ・アヴァン・シャネル」はフランス語だ。せっかくの競作、観比べを楽しみたい。(犬塚芳美)

「ココ・シャネル」は梅田ガーデンシネマ、OSシネマズミント神戸、
           京都シネマ等で上映中
「ココ・アヴァン・シャネル」は、9月19日(土)より梅田ピカデリー、
           なんばパークスシネマ、MOVIX京都等で上映
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コメント


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題名だけで惹かれます。シャネルスーツなどさり気無く着てみたいものです。ぜひ見比べたいと思います。

keiko | URL | 2009年09月29日(Tue)08:43 [EDIT]


Re: タイトルなし

> 題名だけで惹かれます。

そうなんです。私もそのタイプ。でもその目的だと一番良いのは来年公開の作品でしょうね。楽しみにしているんです。
 そんな目的で観たにも拘らず、一番惹かれたのは、デザイナーとしての苦悩とか、やっぱり人間をきちんと描いた所でした。姪の野暮ったい服の袖等を引きちぎって、伝説の黒のミニドレスを作るところなんて圧巻ですよ。シャネルスーツはきちんと見えながら素材的に動きやすいのが特徴だそうです。ちゃんと見せなくてはいけず、しかも服を着ていることに縛られずに自由に心を開放して発想する、仕事する必要のある人の必需品だと、長年のシャネルスーツの愛用者のシャーリー・マクレーンが雑誌のインタビューで答えていました。

犬塚 | URL | 2009年09月30日(Wed)05:21 [EDIT]


 

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