太秦からの映画便り

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映写室 新NO.19エスター

映写室 新NO.19エスター  
 ―愛らしい少女のポスターの不思議なインパクト―

 最初から最後まで恐怖で息を詰めた。とにかく怖い。それも、絵空事ではなく身につまされて怖かった。そんな内容をよく表しているのがポスターだ。古風な服装をして黒い髪と黒い瞳で、真っ直ぐ前を見ている少女の映像は、可愛いのだけれど、よく見ると、ほんのすんでの所で不気味さも漂う。キャプションの通り「この娘、どこかが変」なのだ。
 <誰もの心を掴んでしまうポスターの力で>、この秋、彼女の事が評判になるかもしれない。もちろん、観ればもっと虜になるはず。じわじわと迫ってくる恐怖感がたまらない。監督は「蝋人形の館」のハウメ・コジェ=セラで、製作にはレオナルド・ディカプリオも名を連ねている。ミステリーファンだけでなく、人間ドラマが好きな方にもお勧めしたい。

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(C) DARK CASTLE HOLDINGS LLC

 <赤ん坊を死産したケイト(ベラ・ファーミガ)>とジョン(ピーター・サースガード)の夫妻は、喪失感を埋め合わせる為に、孤児院から養女を引き取る。頭が良くて愛らしいエスターだ。息子と耳の悪い娘に加えて5人の暮らしが始まる。首と手首のリボンを離さない少女は、個性的な絵を描く。最初にエスターを嫌ったのは息子だった。奇妙な事件が続き、ケイトにもエスターの違う顔が見え始める。彼女は一体何者なのか?

 <ポスターのせいか>、「この娘、どこかが変だ。」と言うキャッチコピーに導かれたのか、いや映画そのものの作りだとは思うけれど、平穏な最初から不気味さが底流を流れる。ミステリーの序奏だけれど、それって実は、夫役のピーター・サースガードのせいでもあるのだ。彼の瞳の曖昧さは信用できない。たいてい最後に不安通りの裏切りに導かれるし、彼の微笑だけで私の場合は不安感を掻き立てられるというわけだ。複雑な人間性を演じられる第1人者だと思う。
 <その彼がまずエスターに惹き付けられるのだから>、嫌な予感がするのも当然だ。まるで少女というより、彼女の女性性に魅せられた様な瞳をエスターに向けて、序盤の不気味さを引っ張るのは夫のジョンだった。

 <美しい歌声で、魅惑的な絵を描き>、個性的で大人びた考え方、エスターは普通の子とは違う。建築家と音楽家と言うお互いに芸術分野の夫妻は、「人と違ってもかまわないのよ」と言う言葉の通り、むしろその個性を喜ぶ。ぽっかりと空いた心の空洞を新しい家族を迎えて埋めようとする夫妻、渡りに船のような個性的な少女との出会い、観客の私たちは夫妻のあまりの無防備さが不安になってくる。エスターはまだ愛らしいばかりで牙を剥かない。牙は剥かないけれど、あまりにも完璧な姿が少し不気味でもあるのだ。

 <そんな観客の視点に近いのが>、夫妻の息子だった。娘はお姉さんが出来たと無邪気に喜ぶけれど、息子は敏感に何かを察知する。エスターは何かキモいと、学校で仲間から耳打ちされる息子。子供同士の他愛ない不仲のようで、この辺りからエスターの本性が出始めるのだ。でもまだまだ、親の愛情を取り合う子供たちの争いの領域は出ない。
 <息子とは敵対しながら>、娘を支配下に取り込もうとするエスター。賢くてもまだ幼く、純粋で人を疑わない娘、しかも彼女には耳が遠いと言うハンディもある。意地悪をされながら、エスターを姉のように慕う姿にはらはらさせられる。そんな子供たちのぎくしゃくを両親は気付かない。と言うより、新しい家族を一家に馴染まそうと、実の子供以上にエスターに気を使う。観客は夫妻の人の良さをハラハラと眺める事になる。

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(C) DARK CASTLE HOLDINGS LLC

 <そうして徐々に本性を表わすエスター> 彼女の周りで奇妙な事件が起こり始めるのだ。まずケイトがエスターを疑い始める。子供を守ろうとする母親の姿だった。彼女の過去を調べるが、それでもジョンは耳を貸さない。逆に妻の過去から、病気を疑う始末。子供たちも巧みに事件に巻き込まれ、まだ母親に全ては話せない。孤立するケイト、子供たちの危機、まだエスターに魅せられているジョン。
 <一家の幸せの為に迎え入れたエスターのせいで>、いまや家族はばらばらだ。さあ、この後どうなるのかと震え上がるが、息もつかせないテンポで次々と真実が明かされ、観客の予想もつかない驚愕の結末まで走っていく。スリラーだけに詳しい事が書けずまどろっこしいが、謎を解きながらのラストまでの緊張感が醍醐味。エスターの真実は実際に見て確かめていただくことにしよう。

 <体当たりで望むケイト役のベラ・ファーミガ>がすばらしく、情感たっぷりに知性的な母親を演じる。不安定な心理状態の描写も巧みで、夫に理解されず孤立して追い詰められる様に感情移入した。子供たちってどうしても父親よりは母親と結びついているんだなあと、まさに母は強しの典型だ。息子と娘を演じる子役二人も素晴らしく、健気さが胸を締め付ける。今となっては二人のあどけない表情を一番思い出す位だ。
 もちろん、どれが素顔なのか解らない位変貌する、エスターを演じるイザベル・ファーマンには驚かされる。愛らしい前半、驚愕の後半と、眼差し一つで変わる、人のイメージと言うのも興味深い。彼女の才能の全貌はぜひ映画館で。

 <先日あった映画好きの懇親会で>、この秋見たい作品は何かとチラシを見ながら話していた時、「何か気になるなあ」と何人もに言わせたのがこの作品だ。設定やストーリーの巧みさ、猟奇物ではなく、人としての現実味を持った物語なのがなおさら怖い。これほどのことはなくても、人間関係を引っ掻き回し、自分だけが優位に立つ人はいるもの。所謂トラブルメーカーだけれど、ミニ「エスター」は案外身近にいる。この秋、「境界性人格障害」と言う言葉が一気に認知度を増すだろう。(犬塚芳美)

   10月10日(土)より、梅田ブルク7、MOVIX京都、109シネマズHAT神戸、
                   MOVIX六甲ほか 全国ロードショー
                                        なおこの作品は、R15+(15才未満は入場禁止)


  日本語オフィシャルサイト
         http://www.esther.jp
  ワーナー・ブラザース映画オフィシャルサイト
         http://www.warnerbros.jp
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