太秦からの映画便り

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映写室 「USB」奥秀太郎監督インタビュー(前編)

映写室 「USB」奥秀太郎監督インタビュー(前編)    

―愛の進化論。―

 一時ニュース映像に頻繁に流れた奇形のタンポポは、どうしてああなったのだろう? 以前に核燃料の再処理過程で臨界事故を起こした町は、今どうなっているのだろう? 一見平和そうな町の、見えないところで進んでいく環境破壊。放射能や化学物質という文明が生んだ異物は、遺伝子レベルで猛威を振るっている。地球に未来はあるのか? 私たちの、恋人達の未来は? そんな明日の見えない現代社会に、日本映画界の異端児と呼ばれた監督が、「愛の進化論。」を投げかけます。舞台映像を多く手がける奥秀太郎監督に、この作品の誕生秘話や多彩な出演者等について伺いました。

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(9月25日、大阪にて)

<その前に「USB」とは、こんなお話>
 祐一郎26歳が住むのは、数年前に原子力発電所の臨界事故のあった町だ。開業医だった父の後を継ごうと、医学部を目指してもう5年目。自堕落な生活から借金がかさみ、やくざの脅しで予備校で覚せい剤を売ったりする。母親は毎日弁当を作って送り出し、予恋人からは子供が出来たと告げられた。100万円に吊られて大量に放射能を浴びる臨床実験に挑むと…。
   出演:祐一郎(渡辺一志)、その母(桃井かおり)、末期癌の映画監督(野田秀樹)、
      やくざ(大杉連)、医師(大森南朋)、等


<奥秀太郎監督インタビュー>
―祐一郎役の渡辺一志さんがとても印象的です。監督の前作「カインの末裔」でも主役を演じられていますね。キャスティングのきっかけは?
奥秀太郎監督(以下敬称略):渡辺さんは監督でもあるんです。彼の撮った「19」と僕の「壊音 ―KAI-ON」が同じ配給会社で、しかも同じ映画館でかかったりして、イベントで知り合ったのがそもそもの始まりでした。年令は彼のほうが1つ下だけれど、彼は僕の映画の先生のようなもの。僕は最初映画の撮り方がめちゃくちゃだったんで、色々彼から教わりました。で、「カインの末裔」で主役をやって貰い、その時から、今度の事も、こんな作品を作りたいんだと話していたんです。だからキャスティングにあたり、この作品について僕の欲しい内容を一番理解してくれると思いました。彼の高い演技力を評価しているので、こういう複雑な内容をやる上で、彼の力に託したいと思ったんです。

―頬のふくらみとか目の据わり方とかの表情の得体の知れなさ、対照的に繊細できれいな手とか、外見からのメッセージも多い方です。惹かれたのは演技力ですか、それとも外見ですか?
奥:外見というよりはやっぱり演技力ですよね。
―内面を表に出せる格別なお顔ですよね。鬱積した思いが伝わってきました。

奥:ええ。でも直接会うとこんな風ではなく、もっと普通です。役作りしているんですよ。
―え、そのままのように見えますが? 瞳の重さとかも?
奥:もちろん彼の一部ではあるけれど、普段からあんな人ではない。もっとライトな方です。
―色々印象的なシーンはありましたが、それにも増して印象深いのが渡辺さんの存在感、思いを込めた表情の複雑さなのです。もっとも滲み出ている様に、本人自身が色々な思いを持っているからこそ監督をされるんでしょうけれど。
奥:話していると確かにそうだなあと思います。彼の思いと僕のそれが全部一致するわけじゃあないけれど、思いの深さを感じました。触発しあえる刺激的な存在が身近にいるのは幸運です。

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©2009 NEGA Co. All rights reserved.

―この作品は数年前に監督が、満開の桜の上から雪が降った映像を撮った時に思いついたそうですが。
奥:ええ。ラストシーンが今から7年前の3月に撮っていた、桜が咲いて雪が降った時のもので、それをそのまま使っています。撮影中、偶然フレームの中にカップルが入ってきて、誰だかもわからない形で映っていますが、今度新しく撮ったお芝居の部分で、俳優がこの二人に見えるように服装を合わせました。最初にこの情景を撮った時から、何かに使いたいと思っていたんです。
―違う季節のものが一緒に存在するという自然の狂い方も、今回のテーマと重なっている訳ですね。でも画質とか合わせるのは大変だったんでは?
奥:ええ、その点は色々工夫しています。あの部分はハンディカメラで撮っていて画質も悪いですからね。今度撮った映像と自然に繋ぐには本当は無理があります。そうかと言って、ここはこの作品の原点ですからCGとかでやるものでもないし、狂った自然現象を撮っているあれをそのまま使いたい。繋がるようにテクニック的に相当の事をしました。
―自然が狂ったという意味では、一時ニュース映像でもよく流れた奇形のタンポポが、アップで何度も映りましたが。
奥:動物でやるとグロくなるので、タンポポで行きました。まあ、後で動物については暗示的にやるわけですが。

―ラストへの衝撃的な繋がり部分ですね。あの放射線科の臨床実験も衝撃でした。実際にあんな人体実験があるのでしょうか? 100万という金額とかも凄くて。
奥:調べてみたんですが、ある事はある。ただし危険度的に色々なレベルの実験があって、あのレベルであの金額が出るのは厳しいかもしれない。でもあれ位の金額が出る実験もあります。
―映画よりももっと危険な実験がある訳ですね。その被験者になる人もいると。
奥:ええ、放射線医学は色々な実験をしているようです。病院等の放射線技師は皆ガイガーバッジをつけています。ただ、その数値は自分では解からない。上のほうの管理者だけが解っていて、数値がやばくなると、来週は休めとか言われるらしいですよ。撮影した筑波は実際に数年前に核燃料の臨界事故のあった所で、他にも色々な原子力実験装置があって、立ち入り禁止区域が町のあちこちにあるんです。放射能の汚染度が高いというか…。そんな放射線を扱う技師さんにこれを見ていただいたんですが、評価して下さいました。

―なんか怖い話ですね。だから野田秀樹さん扮する映画監督のような、町に漂う放射能で癌を治そうという話が出てくると。その野田さんが素敵でした。野田さん、桃井さん、大杉さん等多彩な出演者ですが、キャスティングの順番は?
奥:野田さんは早かったですね。野田さんはほとんど映画に出ていないはずなんだけど、僕の映画にはこれで3本目です。御願いしたら台本も見ないうちに「いいよ」と即答でした。
―女装したりと舞台でメイクアップした状態を見ているので、こうして素顔に近い状態を拝見できたのが嬉しく、改めて素敵な方だなあと思いました。最初からあのように設定していた役ですか? それともある程度野田さんに任せて自由に膨らましていただいたとか。奥監督は野田さんの舞台の映像部門を撮るとか、仕事仲間でもありますよね。
奥:ええ。NODA・MAPの映像を作っていますから。僕は普段舞台の映像を作っているんです。宝塚とかよくやるんですよ。野田さんは簡単な説明で(ああ、こうだな)と理解して動いて下さる。僕が何をしたいかを一番理解して下さっている方で、有り難いと思っています。野田さんにしても桃井かおりさんにしても、ご自身が監督。それぞれが御自分の世界観を持ってらっしゃいますが、それを解釈の力にして、僕の意図を汲み取って動いて下さいました。(聞き手:犬塚芳美)         <続きは明日>

  この作品は10月10日(土)より第七藝術劇場で上映
       公開初日(14:30)に奥秀太郎監督の舞台挨拶があります
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