太秦からの映画便り

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映写室 新NO.23「パリ・オペラ座のすべて」&「アニエスの浜辺」

映写室 新NO.23「パリ・オペラ座のすべて」&「アニエスの浜辺」   
 ―フランスからのドキュメンタリー2本―
 今週は2本のドキュメンタリーです。両方ともフランス作品で、男女2人の巨匠が、これぞ芸術の世界を熟達の技で描きます。「パリ・オペラ座のすべて」は、題名どおりにパリ・オペラ座を拠点とする世界最高峰のバレエ団の練習風景と活躍を、フレデリック・ワイズマンならではの肉薄と構成力で。「アニエスの浜辺」もまた題名どおりに、アニエス・ヴェルダが浜辺を舞台に、夢と現の境界で遊ぶ自身を描いた自画像映画だ。前者が芸術と芸術家の本質に迫っていく職人技の端整さなら、後者はクリエイターならではの洒脱な世界。映画で芸術を見るか、映画で芸術するかと、ある意味対照的で、今更ながらにフランスの芸術分野の多様さに驚く。

《1.パリ・オペラ座のすべて》

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(C) Ideale Audience - Zipporah Films - France 2009 Tous droits reserves - All rights reserved

 <この作品は>、“現存する最も偉大なドキュメンタリー作家”と言われる、フレデリック・ワイズマンがパリ・オペラ座の全面協力の元、2007年の終盤84日間を密着撮影した物だ。160分の長尺に、インタビューやナレーションは一切なく、まるでオペラ座に住み着いた怪人がここで起る色々な事象を盗み見たように、人と建物を紹介していく。
 <講演で観れる舞台や私たちが見学できる所以外に>、オペラ座のお土産として人気の蜂蜜を屋上で採る所から、怪人が住んでいるという地下の水路、あるいは楽屋裏、衣装等を作る職人たち、帽子職人、食堂や掃除等の劇場スタッフ、主役のダンサーたちの練習風景と舞台、芸術監督と、文字通りオペラ座を回しているすべての人を映す。

 <映っているのは今だけれど>人物、建物のそこかしこに時代も滲んで、今から350年余り前、ルイ14世が創設したと言うこのバレエ団の歴史も浮かび上がってくる仕組みだ。ちなみにワイズマンは、過去にも「BALLETアメリカン・バレエシアターの世界」を映している、バレエを愛しバレエへの造詣の深い監督で、舞台や練習風景では、絶妙の確度から踊り子達の肢体に迫り、バレエの魅力と美しさを臨場感たっぷりに切り取っている。前作よりこちらに現代性を感じるのは、前衛作品に取り組むとか、このバレエ団が進取の器質に富んでいるからだと思う。
 <何しろこれだけを纏め上げている>芸術監督のブリジット・ルフェーブルが素敵なのだ。時代をつかみセンスがよくて美しい女性で、パリ・オペラ座と共に彼女がこの作品のもう一つの主役だけれど、ワイズマンには彼女こそが今のパリ・オペラ座と思えたのだろう。

 <ここのダンサー達は公務員らしい> 撮影の間に待遇改善のストがあったり、振付家のベジャールが亡くなったりという事件まで、淡々と日常的に映しているのは、これだけの組織、いつも綱渡りのように日常を潜り抜けて幕を開けていると言う表れだろうか。過去にトップダンサーとして活躍した振付師や、今トップのダンサー等、バレエファンならよだれの出そうな映像すら、特別なテロップもつかず日常的に流れて、誰が誰なのか解らなくなるが、そんな贅沢さこそが、パリ・オペラ座だということだろう。
 ・・・と、バレエに詳しくないのでただ圧倒されて見ほれてしまったが、詳しい方ならもっと深く見れると思う。新作から古典まで舞台風景を眺めるだけでも堪能できる作品だ。

この作品は、10月31日(土)よりテアトル梅田、
        11月14日(土)より京都シネマ、
        11月21日(土)よりシネ・リーブル神戸で上映
 
         

《2.アニエスの浜辺》

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(C) 2008 Cine Tamaris-Arte France Cinema

 <81歳になる女流監督アニエス・ヴェルダが>、子供時代を過ごしたベルギーの浜辺、疎開してきたフランス、セートの港、同じく映画監督だった夫のジャック・ドミュと渡ったアメリカの西海岸、撮影で使った砂浜、今アニエスが住むダゲール通りに2日間だけ出現した浜辺等々、人生の節目節目にあった思い出の浜辺を訪ねる。浮かび上がるのは時代の移り変わりと、今も変らないアニエスの創造力だ。時には浜辺に鏡を並べ、時には皆で白いドレスをまとい、まるで童女のように無邪気に自身のイメージを映像化する。主役はいつもアニエスで、ころころとした姿のその可愛い事、奔放な事。80歳を超えてまだ止まない想像力に圧倒された。天国でジャック・ドミュが苦笑いしているのではないだろうか。

 <ただ、これをドキュメンタリーと言って良いものかどうか>、正確には「自伝的エッセイ」が正しいかもしれない。思い出を探り紐解き、そのエッセイを書く過程がドキュメンタリーなのだ。撮影スタッフがしばしばフレームに入るのも、それの証明かも。映画を作ること、情景を作品として切り取る事、それが日常だった監督の姿が浮かび上がる。
 写真家として出発し、生涯を映画に捧げたアニエス、今も夫を愛しウイットに富み、なにより今なお前衛を目指す姿が私たちを勇気付ける。近くで見たら、きっと少し変で(?)可愛いいお婆ちゃんなのだろう。こんな風に元気に、前向きに生きれば人生は楽しいと言うお手本を示してくれた。(犬塚芳美)

この作品は、10/31(土)から第七芸術劇場、
        11/28から京都シネマ、
        12月中旬神戸アートビレッジセンター にて公開
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