太秦からの映画便り

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映写室 NO.24 スペル

映写室 NO.24 スペル
   ―小さな不親切が引き起こす悲劇―

 「スパイダーマン」シリーズのサム・ライミ監督の最新作が届いた。あまりの過剰さに悲劇なのか喜劇なのか解らない。恐怖で震え上がってはいても、後ろの席からは笑い声が聞こえてくる。そうなのだ、これって笑い飛ばせば良いんだと気付いても、私のセンスでは固まったままだ。これってセンスを試されているのかも? 誰かの笑いの引き金がいる。たまにはそんな奇想天外なハチャメチャも良いだろう。さあ、史上最悪の敵とは誰か、ほんの些細な不親切から極限に追い詰めらる主人公と一緒に、最悪の3日間を経験してみよう。ちなみに「スペル」とは、呪文や呪縛にかけられている状態を指します。

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(C)2009CurseProductions,LLC

 <銀行のローン係のクリスティン(アリソン・ローマン)は>、昇進の為に上司へのアピールが必要だった。そこへ薄汚れたジプシー風の老婆が現れ、3度目の住宅ローンの延長を乞う。駄目だという上司の指令どおり断ると、突然激怒。呪いの言葉を吐いて暴れた。その夜から執拗な嫌がらせが始まる。参ったクリスティンが老婆に謝ろうと自宅を訪ねると、老婆の葬儀の最中だった。孫娘は「黙って呪いを受けろ」と冷たく言う。

 <…こうして、謝ろうにも謝れないまま>クリスティンは呪いの中に突き落とされる。これって不条理と言えるかもしれない。彼女がそんなに不親切だった訳ではなく、普通と言うか、親切でなかっただけなのだ。上司や同僚のように、彼女より不親切な人は一杯いるのに、老婆は一番弱い存在、なまじ良心のある彼女に取り付いていく。ひどい話だけれど、中途半端な良心が一番つけいれられるというのも真実だ。他人の痛みに気が付くと、其処がウイークポイントになる。一度の不親切を悔いるクリスティンの優しさが命取りになっていくのだ。過ちの代償はあまりに大きかった。

 <クリスティンにはナチュラルな雰囲気の>アリソン・ローマンが扮し、このとっぴな物語を幾らか(?)身近にしていく。アクションシーンも凄い。化け物と化した老婆と渡り合っていくのだけれど、可愛いとはいっても、考え方も容姿もあまりに普通だから、何とか助けたくてやきもきする事になる。もちろん時間と共に行動も桁外れになり、逞しくなっていくのだけれど、異界で孤軍奮闘する彼女に最後まで寄り添えた。
 <苦境のクリスティンを支えるのが>、大学教授の恋人クレイだ。非科学的な事など信じないけど、何処までも恋人を守り抜く男を、ジャスティン・ロングが微笑みながら好演。一見頼りなさそうでも、自分で出来る方法で助け、恋人を見捨てたりはしない。ジャスティンにはそんな役がよく似合う。この物語の唯一の救いで、こんな彼がいたら辛い事も何とか乗り切れるかも。

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(C)2009CurseProductions,LLC

 <クレイの両親に認められたいと言う>、クリスティンのささやかな望みすら吹き飛ばす老婆の呪い。呪いは時間と共に肥大化してまるで黒魔術。彼女を助けようとする者へさえ災いが及ぶ。過剰さを笑おうとするんだけれど、恐怖と気持ち悪さで体が引きつったまま。笑いたいのに笑えない。逆恨みで狂わされる人生のあれこれ、こんな怪人に出会ったら堪ったもんじゃあない。
<老婆役といいアリソンといい、女優魂をかけた特殊メイクに臨む> 後で自分で見てもぞっとした事だろう。

 <奇想天外な美術も、嫌悪感と言えば嫌悪感。楽しめる人には楽しめる> 口の中に入る虫や唾液、汚い入れ歯と悪趣味の窮みで、映像はこれでもかと言うほどの気持ち悪さだ。「スパイダーマン」のヒットで今や巨匠の域のサム・ライミだけれど、10年前から構想していたというこの映画のB級感は半端じゃあない。可能になった資金力を使ってビジュアル的に容赦がないのだ。サム・ライミ流遊び心一杯というわけで、生理的な急所を突いてくる。やりたい放題はまるで悪餓鬼だけど、それが恐怖を通り超えて笑いに変えるから面白い。笑いと言っても、もちろん限りなくブラック。恐怖と紙一重のブラックユーモアは、やっぱ笑い飛ばすのが正解なんだろう。

 <キーになるのが>、老婆に引きちぎられ呪いをかけた後で返されたボタンだ。呪いの研究家は、そのボタンを誰か他の人の物にすれば、呪いを譲り渡せると言う。つまり罪もない人にこの苦しみを押し付けられるかどうかだ。優しいクリスティンに最後まで難題が突きつけられる。終わったと思っても安心してはいけない。ここからがサム・ライミの真骨頂で、心底驚愕するラストが待っている。油断大敵なのだ。(犬塚芳美)

     この作品は、11月6日(土)より全国でロードショー
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