太秦からの映画便り

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映写室 「犬と猫と人間と」飯田基晴監督インタビュー

映写室 「犬と猫と人間と」飯田基晴監督インタビュー   
 ―1人のおばあちゃんとの出会い―

 この作品は、飯田監督と稲葉恵子さんという一人のおばあちゃんの出会いで始まる。2004年4月、ドキュメンタリ―映画祭があった東京のある劇場で、前作「あしがらさん」の上映に合わせ舞台挨拶に来ていた監督に、おばあちゃんは劇場のロビーで「動物たちの命の大切さを伝える映画を作って欲しいの。お金は出します」と言ったのだ。見も知らぬ若者に大金を託すこんな話ってあるのだろうかと思うけれど、半信半疑なのは私達と監督だけ。おばあちゃんは本気だった。託された願いどおりの、動物たちの命の大切さを伝える映画を作った、飯田基晴監督にお話を伺います。


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(11月9日 大阪にて)

<飯田基晴監督インタビュー>
―思わぬ出会いで始まった映画ですね。
飯田基晴監督(以下敬称略):そうなんですよ。最初のナレーションにあるように僕も半信半疑でした。ちょうど「あしがらさん」の公開時期で色々なマスコミが取り上げてくれ、おばあちゃんは新聞をみてやってきたんです。半信半疑と言うより、僕はこの話ほとんど信じていなかったですね。でも撮って欲しいと言うおばあちゃんの決心は揺るぎなくて。しかも基本的にお任せで何の注文もない。自分が前に出るのも嫌で、最初に映っていますが、嫌がっていたのを少しでいいから出て下さいとお願いするところを、承諾前に強引に映しているんです。それ以降も、私はいいからと控えめな方で、自分が前面に出るのは拒まれました。時々は進行状況をお伝えしていたのですが、後で条件が出て、以前関わっていた保護団体の前川先生と自分の写真を1枚だけ入れて欲しいと言われたんです。

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(c)2009.group Low Position

―自分が死ぬまでに完成させて欲しいのとも仰っていましたね。
飯田:そうなんです。結果的に間に合わなかったんですが。癌の手術をされていて、転移の心配が全くないわけじゃあないので、急いでらっしゃいました。それまで自主映画を撮っていた僕から見ると充分過ぎる位のお金を貰って、最初はこんなお金をどうしようと思いました。結果的には自分一人では無理なので、人を雇ったり、仕上げを丁寧にしたりして使いましたが。おばあちゃんが言ったのは、「映画を作って欲しい」と言うことだけ。今映画と言っても色々でしょう? フィルムじゃあなくてビデオで撮ることも多いし、テレビやホームビデオと映画であることの境界が曖昧になっています。ただしおばあちゃんが言ったのは、「映画館でお客さんがお金を払って見てくれるもの」という意味だろうと思った。自分のやりたいものではなかったが、次に撮る作品のテーマも決まってなかったので引き受け、おばあちゃんが求めるそのレベルまで高めた作品を作ろうと思いました。

―イギリスの情報が入ったりと、広がりもありますよね。
飯田:あれはたまたま「あしがらさん」がイギリスの映画祭に招待されて持っていくので、だったらついでに動物愛護の先進国の向こうの情報も撮ってこようと思ったんです。日本だけだったら狭苦しいものになったでしょうね。結果的に広がりが出てよかったかなと。
―がけっぷち犬や犬捨て山等色々な情報が入っていますが、それは何処から集められたんですか?
飯田:他の事と平行しながらですが、この作品に3年半関わったので、色々調べたり動物問題に注意してニュースも見ますし、自然と耳に入ってきた事です。一箇所に行くとその関連で次の情報が入ってきたりとかですね。大体各自治体に動物愛護センターと言うのがあって、そこで色々な問題が処理されています。センターがないところは保険所ですね。日本で年間30万匹以上の犬と猫が処分されると言ってもぴんと来なかったけれど、一日千匹近くだと思うと具体的ですよね。それに驚いたのもありました。

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(c)2009.group Low Position

―犬や猫は、閉じ込められた自分の状況をわかっているのでしょうか?
飯田:どうなんでしょうねえ、自分が処分されるのを感じていると言う人もいます。実は処分される猫の8割は子猫なんです。捨て猫も持ち込まれた猫もある。処分を待つ姿を沢山見たので、町中で家猫や野良猫を見ると、単に可愛いではなく、最後まで幸せに生きて欲しいなあと思うようになりました。
―こんな現実の一方で、世は空前のペットブーム。専用の砂場があったり洋服を着せたりと過剰に可愛がられるペットが沢山いますが。
飯田:可愛がる人たちを否定はしないけれど、片方でこんな現実があるのを知って欲しい。命の重さは一緒ですから。人間と動物の命の重さに違いがあるのは仕方がないんでけれど、それが近づいていけばいいなと思います。

―おばあちゃん、「人も好きですけど、人間よりはマシみたい。動物のほうが」と意味深な事を仰いますよね。
飯田:おばあちゃんは本当に動物が好きでしたね。だから何より、この映画で切り取ったような現実を憂いていました。いろいろな人が矛盾を感じながら保護と言う名目の元処分をしている。そんな現実を見て欲しいと思います。(聞き手:犬塚芳美)

<作品の感想とインタビュー後記:犬塚>
 しろえもんとかがじろうと色々な犬が出てきます。監督は過剰な思いを込めず、人柄のまま淡々とそんな動物たちの窮状を映しました。保護する側も、オーストリア生まれのマルコ・ブルーノさんとか、多摩川で猫の世話を続ける小西さん夫妻等々。動物に愛を注ぎながら、無責任な人間に苦言を呈しています。


 この作品は、11月21日(土)より第七藝術劇場、京都みなみ会館で上映。
      *22日(日)午前中はみなみ会館(075-661-3993)
           午後は第七藝術劇場(06-6302-2073)で監督の舞台挨拶あり。
             詳しい時間は各劇場まで。
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コメント


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ペットブームの裏側で

最近はテレビなどでも愛護センター(という名の殺処分施設)のことを紹介したり、今回のように映画という形で動物のことを伝えてくれるものがあると、暗闇の中に明かりがともったような感じになります。
私はこの映画をまだ観ていませんが、できれば観てみたいし、ペットショップの狭いケージに陳列されている子犬や子猫を見て「かわいー」としか思わない人たちにぜひ観て欲しいと思います。
それにしても、この監督さんは本当に不思議な縁に導かれてこの映画を作られたのですね…「運命の糸」というものを感じます。
動物たちを取り巻く環境が少しでも良くなりますように、と願わずにはいられません。おばあちゃんの思いが1人でも多くの人の心に届きますようにと。

ayako | URL | 2009年11月24日(Tue)22:14 [EDIT]


Re: ペットブームの裏側で

> 最近はテレビなどでも愛護センター(という名の殺処分施設)のことを紹介したり、今回のように映画という形で動物のことを伝えてくれるものがあると、暗闇の中に明かりがともったような感じになります。

そうでした。ayakoさんならこの映画を支持してくださいますよね。色々な方に薦めているんですが、「カワイー」と言うタイプの単なるペット好きでは「観たくなーい」と言われてしまって・・・。
このインタビューを纏めるのはちょっと迷いました。実は監督が、動物が好きな人ほど「可哀想だから見たくない」と言う。僕は方法を間違っていたんだろうか?でもお祖母ちゃんが心を痛めていたのはこのことなんですよね。と、反響の凄さと実際に足を運んでくれる人の差に悩んでいたんです。ある種アンタッチャブルな世界を見せたんだろうかと、真摯に問いかけられました。作品が良いだけに観て欲しい。でもそのまま書くと引く人もいるかも。騙して嘘を書くのもいけない。・・・・、結局引く人はどう書いても行かないだろうと思うことにしました。今年はドキュメンタリーの当たり年だからあれだけれど、賞を取りそうな良い出来です。

> ペットショップの狭いケージに陳列されている子犬や子猫を見て「かわいー」としか思わない人たちにぜひ観て欲しいと思います。

外国ではペットの販売が厳しいらしいですね。ショップと言うのはほとんどないと聞きました。それに最後まで命を見守る事を当然のように皆が自覚していると。人と動物の命が近いのだと思います。

> それにしても、この監督さんは本当に不思議な縁に導かれてこの映画を作られたのですね

インタビューのとおり、おばあちゃんも映るのですが、このおばあちゃんに興味を持ちました。もっと詳しい事、監督のおばあちゃんへの思い等が素直にナレーションで入れられています。あまりの気負いのなさに笑えるくらいに。ちょっと脱力系の監督なのです。脱力系だけれど、気負わないでしつこくやりたいことをやるタイプみたい。そんな監督でないと作れない作品だと思います。

犬塚 | URL | 2009年11月25日(Wed)01:14 [EDIT]


 

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