太秦からの映画便り

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ラブコミックファンタジー

   映写室 NO.139ペネロピ
  ―お嬢様の勇気と自立心―
 もしも貴方が豚鼻だったらどうするだろう。まあずいぶん上向いた私の鼻なんて、豚鼻のような物だけれど、この主人公は、「…のような物」ではなく、可愛い顔に本当に豚のお鼻がついて生まれた。…と言う設定のちょっと風変わりなお話は、またもやファンタジーの宝庫イギリスが舞台だ。一足早く春色の気分になりたい方にお勧めの、ハートフルな小品です。
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(C)2006 Tatira Active Filmproduktions GmbH & Co. KG

 <名門一家の先祖は傲慢な仕打ちで>、魔女に「この家に次に生まれる娘は豚の耳と鼻だ。呪いを解く方法は、お前たちの仲間が娘に永遠の愛を誓う事」と告げられる。幸運にもその後はずっと男が続いて、皆が呪いを忘れた頃に生まれた娘がペネロピだった。整形をしようにも、鼻に大事な血管が通っていてできない。
 <母親は化け物の写真を撮ろうと騒ぐ>マスコミから娘を守る為に、偽のお葬式を出しお墓まで作った。こうして彼女は、屋敷の中だけで人目を避けて育てられるが、両親の溢れる愛と持ち前の知性で、全てが申し分なく成長する。でも何度お見合いをしても、いくら持参金をつけても、豚鼻を見ると皆が驚いて逃げていく。その度にペネロピがどんなに傷ついても、母親は呪いを解いて娘の鼻を普通に戻すのを諦めない。

 <おっといけない、これじゃあ荒筋そのまんま> この物語の素敵さを話そうとすると、どうしても筋を追ってしまう。何故って、この作品は奇想天外な話から真摯な問題をあぶり出す展開こそが醍醐味なのだ。もちろんこれはほんの序奏で、本題はこのずっと後。次々と起こる事件を通して、ありのままの自分を愛し、自分らしく生きる事の大切さや、柔らかい心の素敵さ等を描いていく。
 唯一豚鼻を見ても逃げ出さなかった男の出現あたりから、お伽噺の主人公のペネロピは私たちと同じ喜怒哀楽を共有する身近な存在に変わってくる。脚本家レスリー・ケイブニーの女流ならではのお姫様願望と、そんな風に育てられながら自立心を忘れない主人公の、凛とした姿勢に寄り添う心理描写がいい。全編に散りばめられたユーモアに笑い転げながらも、主人公の真摯な生き方に胸を掴まれる。

 <今公開中の「潜水服は蝶の夢を見る」で>、脳梗塞で倒れ左目以外動かない主人公に、絶望の底でも発狂しないで生き続ける極意を、知人が「自分の人間性にしがみ付く事」とアドバイスするけれど、ペネロピはまさにそれの実践者だ。愛情からとは言え、長い間の幽閉生活やこんな悲劇の中でも、人間性を無くするどころか豊かに育み続け、時が来るとそれを武器に自分の手で運命を切り開いていく。化け物扱いした世間や宿敵だったマスコミまでが次々と味方に変わる頃には、その勇気や心の強さに拍手喝さいだった。

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 <出番の殆どを、顔の真ん中に豚鼻をつけて演じる>ペネロピ役はクリスティーナ・リッチ。「アダムス・ファミリー」のウェンズデーに扮した天才子役と言えば解る方が多いと思う。大きな瞳がくるくる動いて知的でチャーミング。瞳に強さと深い悲しみや孤独感を宿し、主人公の複雑な心情をリアルに演じる。クリスティーナが扮したからこそ、ペネロピがこれほど魅力的に輝くのかもしれない。コスプレの様な扮装にも拘らず、彼女の心の中にまっすぐ観客の視線を集めた。
 本当言うと豚鼻を見慣れた目には、元に戻った顔よりそちらのほうが可愛く見える。この役、素顔より豚鼻を付けた時の可愛さで選ばれたのかもと思ったくらいだ。製作者側にもそんな思いがあるのか、呪いが解けた後で、母親が「少しお鼻を上向きに整形する?」なんて尋ねる笑えるシーンも用意されている。


 <ペネロピの鼻に逃げ出さなかった唯一の男>マックス役には、ジェームズ・マカヴォイ。「ラストキング・オブ・スコットランド」の、軽率さから惨劇に巻き込まれる青年医師役を思い出してほしい。あの頃よりずっと陰影が出て、甘さと青年の憂いを纏った姿が魅力的だ。彼への失恋がペネロピの背中を押して思い切った行動をとらせるのだけれど、登場するとたちまち物語の鍵を握るオーラを放つ。いい加減さと誠実さという矛盾する両面を感じさせるなんて、唯のハンサムじゃあない見事さだ。
 <製作は「キューティ・ブロンド」のヒロイン役で>ブレイクしたリース・ウィザースプーンで、主人公を助ける友人役で出演もしている。ペネロピの自立心や一途に娘を守ろうとする母親等、この作品の素敵な女性像は、この作品に関わる人々が女性への夢や思いを込めて作ったのだと思う。

 <映像の美しさも見所だ> 豚鼻の特殊メイクも可愛いいけれど、物語のわくわく感を盛り立てるペネロピの周りのビビットな美術や衣装が何と言っても楽しい。両親の愛を痛いほど感じる、子供部屋の延長のようなカラフルな部屋、素敵な色合いのお洒落な服や彼女の「ある着こなし」も楽しんで欲しい。
 さあ、物語は思いがけない方向に動き出す。色々な謎解きが鮮やかに展開するので、見逃さずに堪能して欲しい。物語に夢と希望を込めた製作者たちと、誰もが愛さずにはいられない聡明で素直な主人公に拍手喝さいです。

  関西では3月8日(土)よりテアトル梅田で上映
    3月上旬、109シネマズHAT神戸、他
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