太秦からの映画便り

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映写室「葦牙―あしかび―」小池征人監督インタビュー(前編)

映写室「葦牙―あしかび―」小池征人監督インタビュー(前編) 
  ―児童虐待を受けた子供たちに社会的な母乳と母語を― 

 <この作品は虐待を受けた子供たちが暮す>、岩手県盛岡市郊外の児童養護施設「みちのく・みどり学園」の日常を捕らえたもの。親に傷付けられるという悲しい過去を持ちながら、逞しく再生の希望を見せる子供たち、そんな子供たちを温かく見つめる学園スタッフとの触れ合いが、もっと大きな、温かい眼差しで切り取られています。
 <小池征人監督は>、前作「いのちの作法」の撮影で、旧沢内村に来るこの学園の子供たちと出会いました。プライバシーに関わるデリケートな問題に、モザイクをかけず素顔を晒した撮影は画期的で、この問題の深刻さを知らせたいという両者の覚悟の程も伺える。子供と同じように傷ついている虐待の加害者の親も映り、問題の複雑さと共に再生への祈るような思いが伝わってきます。小池 征人監督にお話を伺いました。

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(11月16日 大阪にて)

《小池征人監督インタビュー》
―この泥児童虐待の問題がよく報道されますが。
小池征人監督(以下敬称略):90年ごろから目立ってき始めましたね。ただしキャッチする機関が増えたから表に出始めただけかも知れず、問題が増えたのかどうかは解りません。法律的に気付いた人は通報する義務があるんですよ。児童憲章には3つの事が書かれていて、「児童は人として尊敬される。児童は社会の一員として重んじられる。児童は充分な養育をされる権利がある」とあります。皆がそんな所に目を光らせ出したんでしょうね。この作品の目的は、児童虐待という事件は知られてきたけれど、その被害者の子供たちがどういう風に生きているかは知られていない。それを知って欲しいと言うものありました。

―確かにベールの向こうでした。お互いに隠そうとする所もあったのかもしれません。子供たちの日常を自然に捉えていますが、カメラを意識させないのは大変だったのでは。
小池:素顔での撮影が可能だったのは、みどり学園が今まで築いてきた実績と信頼関係でしょうね。僕を知ってもらっていたのもあると思います。「いのちの作法」で2年間の付き合いがありますからね。みどり学園の中でもカメラを回していたんです。それに今回も、学園で4ヶ月間寝泊りして3食提供して頂いてますから、子供たちは親しみを持ってくれたんでしょう。普段は職員しかいないのに別の人が来て好奇心を擽られたのもあると思います。小1に物凄い物まねが上手い子がいて、ティッシュの箱等でカメラを作って、僕らが撮影してたらその真似をしてましたね。カメラマンに成り切って逆に僕らを映そうと、回り込んだりするんだよ。

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提供:みちのくみどり学園

―将来はカメラマンになるかも、楽しみです。色々な年代の子供の、住み分けはどうなんでしょう?喧嘩もありますが。
小池:兄弟げんかのようなもんですよ。昔は皆一緒に遊んだでしょう? あんな感じで、一緒に暮して子供同士の自治が生まれるんです。誰かが仲裁したりなだめたりしていますね。ただ喧嘩は危ない。切れると目が完全に狂気の世界に行きますから。虐待を受けた子供たちは感情のコントロールが出来ないんです。彼らにはONとOFFはあってもその中間のグレーゾーンがない。喜怒哀楽の幅が人間性で、本当は人間の感情の8割はそこに入り、それが人間関係を作るのにね、彼らにはそれがないんです。この作品で難しいのは、そんな風な虐待を受けた子供たちの未成熟さや心の傷が、どう行動に現れるかをきちんと見せれているかどうかでした。彼らは母乳(栄養)と母語(言葉)が奪われた子供たちで、それらを受け継ぐ一番大事な時期に、親子の関係が切れているわけですからね。そんなところを親の代わりに社会がフォローしないといけない。テーマは社会的な母乳と母語をどうするかと言うことですよ。そのために養護施設があったり、沢内の様な所があったりするわけで、太鼓を作り、こけしを作り、弁論大会をやったりして、ぽっかり空洞だった所に心を作っていくんです。児童養護施設は全国に580ヶ所くらいあって、そのうち100位が再生に熱心だそうですね。みどり学園が素晴らしいのは、ホームスティや東京から来た大人とキャンプに行くとか、他所のホームと比べて余計なことをやっている所。彼らに一番ないのが経験ですから。人間性豊かな人に出会って、人間性を取り戻していく場所なんです。校長先生と一緒に沢内に行って、自分で買い物をしたり料理を作ったりと言う、学園では出来ないこと、普通の子供が普通にする事を経験するのも嬉しいそうだったでしょう。

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(C)記録映画『葦牙』制作委員会

―普通の経験がないんですね。こけし作りも楽しそう。自分を作っている感じでした。
小池:面白いでしょう?あれ。作った子に似てるよね。自分の顔でもあるし、心の自画像だと思います。2,3月の雪が多くて外に出れない頃に作るんですよ。
―弁論大会も先生は大変だけど、本格的です。
小池:そうなんですよ。側でサポートする先生の資質や力が大事です。皆さん頑張っていますよ。もう38回目なんです。今年も11月14日が弁論大会で、僕も仕事がなければ見に行ったんですがね。自分を見つめて、それを文章化して、なおかつ皆の前でそれを発表しないといけないから、子供にとっては大変。でも客観的な視点が生まれます。あれを経ないと女になれない、男になれないと言うんですからね、大変だよ。5,6年生になると審査員になるんだけれど、上手いなあと思ったのは、そうやって次は自分が書かないといけないと思い始めるんです。(聞き手:犬塚芳美)
              <明日に続く>

 この作品は、12月5日(土)第七芸術劇場(06-6302-2073)にて上映、
       初日監督の舞台挨拶があります。詳しくは劇場まで。
      順次京都シネマ、神戸アートビレッジセンター にて公開
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