太秦からの映画便り

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映写室 新NO.28キャピタリズム―マネーは踊る―

映写室 新NO.28キャピタリズム―マネーは踊る― 
  ―$は何処に消えた?―

 昨年9月のリーマン・ショック以来、世界は100年に一度と言う未曾有の不景気だ。「サブプライムローンの破綻」できっかけを作ったアメリカの不況はひどい。かって栄華を誇った自動車産業の衰退は特に響いて、拠点のデトロイトはゴーストタウンになっている。そんな街を舞台に、クリント・イーストウッドは「グラン・トリノ」を作った。弱い者の味方、我等が突撃隊マイケル・ムーアは、ローン返済が出来ずマイホームを追い出された同じ街の一家を映す。まさに「サブプライムローンの破綻」の当事者だ。
 <キャピタリズムとは資本主義の事>、一部の富裕層の間を浮かれて踊り回る巨額のマネーの下で、多くの市民が苦境に堕ちてしまった。そんなさまを、わかり易く映した作品で、経済音痴でも付いていける。さあ、$は何処に消えたのか、不条理に気づき、怒りで眠れなくなるかも。

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(C) 2009 Paramount Vantage, a division of Paramount Pictures Corporation and Overture Films, LLC.

 <現在はこの物語より深刻かもしれない> 事態は日ごとに悪化し、特に日本は不況に円高が覆い被さり株価も低迷、厳しい師走になっている。始まりはこの作品にも登場するリーマン・ショックだけれど、1年後に最後の引き金を引いたのが、ドバイの経済破綻だった。石油が根渇した後を考え、観光立国を目指した不動産への過剰投資はとうとうパンク。巨大なビル群が砂漠の中の蜃気楼と化している。
 <よく似た話は日本でも少し前にあった> 北海道の夕張市だ。衰退した炭鉱の町を観光都市にしようと箱物をどんどん建て、その割には思ったほど観光客を呼べず、最後は債務超過で財政再建団体。雪の中の大きな箱物群を夕張市民が恨めしく眺めたように、砂嵐の中の未完のビル群を眺めて、ドバイの人々は何を考えているのだろう。

 <もっとも夕張市は、町の人々を困窮させはしたものの>、建物を債権化するようなマネーゲームには加わっていない。そこがこの作品の舞台と大きく違うところだ。ドバイもアメリカも、悪知恵の働く人々に振り回され、世界中を同時不況に落としいれた。でも元凶の者は公的資金で助けられて、今もって豪勢な暮らし。庶民だけが混乱の中に取り残されている。ムーアはそこのところを暴く。本当の敵は何処にいるのか、ムーアの指摘が明確だからこそ、ウォール街は目の敵にする。

 <この間まで西側諸国は豊かさを謳歌して>いたはずなのに、資本主義が行き過ぎだしたのは何時からだろう? ムーアはそれをレーガン大統領が誕生した1980年代と位置づける。富裕層への減税、産業基盤の解体と社会構造を変え、競争原理に拍車をかけて、ウォール街がアメリカという国を掌握し始めたのだ。もちろんそれは世界への波及していく。株価は1400パーセント近く伸び、企業は記録的な収益を上げるが、従業員とCEDの賃金格差は拡大するばかり。もうこれを民主主義とは言わず、「プルトノミー」になったのだ。1パーセントの富裕層が全てを奪う社会なのだそうだ。…そうだ何て、気楽なことを言っていてはいけない。全てを奪われながら、なおかつ気が付かない私も、この作品の中の一人。ムーアはこの作品で、冨の分配の不条理に気付かず、ずるずると現状に甘んじる私のようなものにも、目を覚ませと言っている。

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(C) 2009 Paramount Vantage, a division of Paramount Pictures Corporation and Overture Films, LLC.

 <アメリカンドリームは崩壊し>、お金を吸い上げられてしまった庶民。ここからが突撃隊マイケル・ムーア監督の面目いかんだ。$のマークを付けた大袋を引っ下げ、「僕らのお金を返してくれ」ウォール街に突入する。と言って、すぐに解決するわけではないけれど、元凶が見えてきたし、戦う方法も探せるではないか。
 <常に社会の矛盾を突いてきたムーア>、アメリカに住む監督に見える社会の矛盾とは、つまり資本主義の歪みだ。でも資本主義は常に社会主義と対比して語られ、初期の頃には多くの幸福を皆に与えたから難しい。そこには区別が必要で、ムーアが批判するのは、資本主義の中でも、金融資本主義、つまり金融戦争だ。

 <本当の戦争も金融戦争も>仕掛け人の思惑は一つだけ。「自分の利益が上がるのなら、自分に関係のない他の人は死のうが困ろうがどうでもいい」と言う究極のエゴイストさ。ムーアはそれを批判する。止めろと訴え、踊らされているのに気が付かないで、結局下層に沈む者たちに、今何が起こっているのか、目を開けてしっかり見ろと言う。
 <この作品のアメリカ全土への拡大公開の前>、失業率や自宅の差し押さえが高い地域を10箇所選び、無料の試写会を開いている。相変わらずジャンボな巨体でも、穏やかさが見えてきた。今までのように過剰な煽りを感じないのはムーアの老成だろうか、指摘の的確さだろうか。何時までも警告を発してはくれない。私たち受け手がしっかり思いを受け取り、賢くなる時だ。この作品は、彼が今まで追求してきた事の集大成とも言える。(犬塚芳美)

 この作品は、12月5日(土)よりTOHOシネマズ梅田で上映
       1月9日(土)より、敷島ポップス、TOHOシネマズ二条、
                三宮シネフェニックスで上映予定
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コメント


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こんにちは

こんにちは。久しぶりの書き込みです。
昨日でしたか、NHKの『クローズアップ現代』にムーア監督が出ていました。
偉い監督だなあと感心しながら見ました。
画面の中のゴーストタウンを見ながら、日本の過疎地や地方都市の寂れた商店街を思い浮かべていました。
もはやこれはアメリカの話だけではなく、日本も金融への優遇措置をはじめ、重なるところ大だと思いました。
今朝の新聞にも「アメリカのようにならないで。昔の日本に戻って。…教育を大切にし、解雇しない国だった日本に戻って。」と、監督の言葉が載っていました。
どうすれば、普通の私たちが豊かに暮らせるのでしょうね。

大空の亀 | URL | 2009年12月04日(Fri)15:32 [EDIT]


Re: こんにちは

> こんにちは。久しぶりの書き込みです。
 コメントを有難う。以前は過剰すぎてムーア監督ちょっとだったのだけど、「シッコ」辺りから青臭さがとれ、バランスを取りながらの突撃が好きになりました。

マネーゲームの仕組みが解るといっても、債権化して巧妙に解らなくしている事が解るだけで、金融マンはどうしてこんなことを思いつくのか、どうしてこんなことが可能なのか、常識人では理解に苦しみます。
金融だけでなく、賃金の安い国に製品を発注すると言う、グローバル経済が日本の製造業を壊滅的にしている事も気になります。作る人も買う人も、売る人も皆がそれで暮せないとおかしい。消費者があまりに安い物を求めるのも、回りまわって結局は、自分で自分の首を締める事になると解って欲しい。

> 今朝の新聞にも「アメリカのようにならないで。昔の日本に戻って。…教育を大切にし、解雇しない国だった日本に戻って。」と、監督の言葉が載っていました。
本当にそうなって欲しいですね。もう少し社会にゆとりが欲しいです。

犬塚 | URL | 2009年12月04日(Fri)23:46 [EDIT]


 

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