太秦からの映画便り

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映写室 「黄金花」木村威夫監督インタビュー(前編)

映写室 「黄金花」木村威夫監督インタビュー(前編)
 ―秘すれば花、死すれば蝶―

 インタビュー記事の新春第1弾は、映画界の重鎮木村威夫さんです。美術監督として長い間日本映画界を引っ張ってきた木村威夫さんが、脚本と監督を担当した新作が届きました。手伝ったのは教え子の京都造形大の学生たちと同大学の教員仲間。タイトルの「黄金花」は何処かに咲く、不老不死の花だそうです。91歳にしてアバンギャルドな木村監督に、ご自身の映画感やこの作品について伺いました。

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(2009年12月14日 大阪にて)

<その前に「黄金花」とはこんな作品>
 舞台は老人ホームで、植物学者の牧(原田芳雄)、小町婆さん(松原智恵子)、ピーナッツ老人(野呂圭介)等々の入居者がいる。時には死に怯え若い頃の思い出に浸り、虚々実々の日々だ。皆の面倒を見るのは院長(長門裕之)や牧の憧れる看護士長(松坂慶子)。ある日、牧は若者と一緒に自然薯を掘りに山に行くが、欲張って採ると穴から水があふれて止まらない。巡礼(麿赤皃)の山を荒らすなと言う声で元に戻すと、地中に引き込まれ黄金の花に出会う。


<木村威夫監督インタビュー>
―このお話は雑記帳のメモからはじまったと伺いますが。
木村威夫監督(以下敬称略):今回学生たちと一緒に映画を作る企画が立ち上がって、急遽何か書かないといけなくなった。何がいいかなあと考えると、若い人の気持ちは推測でしか解らない。自分と同世代の老人の気持ちなら解るんで、そのグループがいいだろうと思った。老妻が入っているんで時々老人ホームに行くもんだから、そこの事なら解るのと、古いノートに老人ホームのスケッチが挟んでいたんで、そうだこの世界に入っちゃえと思ったんです。出だしはこんな風に単純なんだ。後、インドの山岳のレポートがあって、そこにある珍しい花だとか、ヒマラヤ聖女の話だとかを組み合わせてね。根本は芭蕉の俳句ですよ。5.7.5と次の節の言葉が始まるたびに、前の流れを変えどんどん風景が変っていく。そういうものが作りたかった。つまりこの物語の特徴は何かと言ったら、とりとめがないということ。老人ホームがあって、黄金花と言う花があって、山があって、山道のような山林があって、水があってと、言葉で説明するとつまらない映画になるけれど、色々なものが漠然と出てきながら、渾然と繋がって不思議な世界を作っていく。そういう、言葉にならないものを作りたかったんだ。黄金花も何処にあるかははっきりしないほうがいい。現実なのか、妄想なのか、全てが境界の曖昧なところに存在している物語なんだよ。

―そこに巡礼が出てきたりと。
木村:麿さんのあの役はとても重要なんだ。巡礼=すなわち山の神で、杖を突くとどーんどーんと大きな音が響くでしょう。あれは怒りの音、欲張って必要以上に自然薯を採ったりするから、山を荒らすなと言う怒りですよ。昔から自然界は持ちつ持たれつ、バランスをとって存在してきた。それを壊しちゃあいけないんだ。元に戻すとどんどん別のところに行って、あの3人は地球の中心に向かって立っている。非リアリズムの世界かな。

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(C)PROJECT LAMU / UZUMASA

―先生の作品は、美術を担当されたものにしてもアバンギャルドですものね。途中まで正統で行きながら、最後のところでアバンギャルドに着地させる。空間をゆがめると言うか、自在に現実を飛躍させるところが凄いです。
木村:当たり前のものを作っても面白くないでしょう? 幻想だから何をしてもいいの。黄金花も一番最初の発想はお葬式の飾りによくある金属の花だったんだ。それが池に捨ててあって、採ろうとすると底に巻き込まれて、見たことのない白い花に出会うとかね。でもそんなイメージにあう池が見つからなくて、脚本を変えた。僕の場合は何か作ろうとすると最初に絵が浮かんで来る。その絵に添って作っていくから、俳優さんにも演技指導とか状況説明はほとんどしない。動き位は言うけど、大体俳優さんに任せる。原田のお父さんにしても一晩一緒に飲んだら「解かった」と言ってくれて、それだけで僕の意図する所を上手くやってくれたね。思ったとおりのいい動きをしてくれる人もいれば、解ってないんじゃあないかと思う人もいるけど、それはそれで、不思議な世界の住人だから良い訳だ。僕の作品はほとんど台詞がないでしょう? 台詞を出来るだけ少なくして、映像的に表現したいんだ。今回だったら、力を入れたのはビニールを使った回り舞台だね。ビニールは安いから9千円位で異空間を作り上げられる。で、照明に後は頼むよと言って、ライトで変化をつけてもらって、幻想の世界に変えていく。目指すのは摩訶不思議な世界だ。どういう音楽を入れるかには悩んだけれどね。本当は終戦後の社会を入れたかったけれど、そこまでやると広がり過ぎるから諦めた。

―撮影中も臨機応変で色々変えていくと?
木村:僕は撮りながら考えて作っていく。一番大変だったのは、撮影の2日前になってお願いしていたアラブの女優さんが駄目になったことだね。あせったけど、考えて一人二役をやってもらった。最後に出ているあがた森魚さんも、最初は予定してなかった。彼が原田さんの陣中見舞いに来たんで、出てよとなって、ギターを持ってないと言ったら原田さんのギターがあって、それを抱えて歌っている。その時本人が着ていた服のままだから、彼だけ服装が場違いだけど、こんな作品だから、そういう混沌もどうってことないんだね。(聞き手:犬塚芳美) 
<明日に続く>

この作品は、1月9日から第七芸術劇場で上映、
      順次京都シネマ、神戸アートビレッジセンター にて公開
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