太秦からの映画便り

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映写室 新NO.34ヴィクトリア女王 世紀の愛

映写室 新NO.34ヴィクトリア女王 世紀の愛 
 ―最強国家イギリスを築いた女王の純愛―

 <今週の舞台は宮廷文化華やかなりし頃>、19世紀のイギリス。18歳で即位し、イギリス史上最長の在位64年(1837~1901)を勤めたヴィクトリア女王の物語です。女王にこの恋がなければ、歴史は代わっていたとまで言われる世紀の恋が、鮮やかなコスチュームと共に蘇りました。
 <イギリス王室に絡んだ物語は>これまでも沢山映画化されてきましたが、猜疑心や権力争いの末に、妻や子、兄弟をも断頭台に送ったりと、たいていがスキャンダラスなもの。でもこの物語は違う。イギリスを「太陽の沈まぬ国」と呼ばれる最強の国家に押し上げた女王の若い頃に何があったのか。近代の家庭のモデルとまで言われる女王一家の出来上がるまでの日々です。キャリア・ウーマンのはしりの様な女王を陰で支える夫に、誰もが羨望の溜息を漏らすのではないでしょうか。

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(C) 2008 GK Films, LLC All Rights Reserved

 <19世紀のイギリス、国中が>一人の少女に注目している。国王の姪で、王位継承者のヴィクトリアだ。国王は重病で何時倒れてもおかしくない。この機会に権力を得ようと、彼女の母親とその愛人は摂政政治を受け入れさそうとするし、次期女王の夫の座を巡って色々な駆け引きが起こる。彼女の叔父のベルギー国王も、野望の下に甥のアルバートを送り込む。しかし出会った瞬間二人は惹かれあった。

 <…とお互いに好意を抱きながらも>、二人の周辺には陰謀が渦巻き、それを跳ね飛ばして結ばれるまでには、時間が必要だったというわけです。二人は自分の思いが恋なのかどうか、すぐには気付かない。アルバートの方は気付いたけれど、叔父の野望で動かされた後ろめたさがあるし、女王になったばかりのヴィクトリアは、職務を全うするのに一生懸命で、自分の思いに目を向ける余裕がなかったと。私たちとは男女の立場が逆ですが、特別な2人なのに、恋に関してはまるで普通の若者でした。その辺りをイギリス王室の仕組みと絡めながら描いていきます。

 <最初の山場は>、ヴィクトリアと母親の確執でした。夫を亡くし身分の不安定な母親が、娘を過剰に保護し、しかも愛人の悪巧みに加担し娘を利用しようとするのです。もっとも自分の立場が危うくなると、今度はその愛人も見捨てるのですが、この辺り自分の事で精一杯で愚かそのもの。力がないのは悲しいですね。こんな卑屈な精神を芽生えさせる。
 <ヴィクトリアは賢く>、そんな母の弱さや醜さを見抜いていたし、幼い頃から母親に監視されて厳しく育てられ、そこから自由になるチャンスをきっぱりとした意志で待ち望んでいました。こうしてみると歪んだ方法だとしても、やはりヴィクトリアは女王となるべく育てられたとも思うのです。伯父のウィリアム国王が、密かに植えつけた帝王学も在るとは思いますが。

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(C) 2008 GK Films, LLC All Rights Reserved

 <身辺に関してはそんな風に意志的な>のに、国を治めるという初めての重責で混迷するヴィクトリアは、ついつい擦り寄って来る者に頼り、時の首相の思うとおりに動かされてしまいます。この辺りをありのままに描くので、アルバートだけでなく観客も戸惑い、まとまりが悪くもありますが、時流や情に流される普通の女性でもあったヴィクトリアが、党派や人物に左右されないアルバートの姿勢を見続け、しかも彼の愛とサポートで、揺るぎない女王に育っていくという事ではないでしょうか。
 <権力者であればあるほど>、擦り寄ってくる者がいる。アルバートとの出会いで、自分を利用しない者だけが自分そのものを愛している者。何時の時も寄り添ってくれるのだと、若い日に気付いた女王は幸せでした。

 <娘すらも利用する母親>、そんな母親に反発しながら、切り捨てることまではしなかった娘、こんな曖昧さも解りにくいけれど、真実を描けばそうなるのでしょう。凡人はほどほどに愚かでほどほどに善良である事、統治するものは自分を振り回すそんな凡人を許しながら、自身が凡人であってはいけない事、女王の道の厳しさも感じました。権力者は孤独なもの。アルバート亡き後喪服姿を貫いた女王は、喪服に夫を感じながら、彼だったらどう行動するかを常に心の中で問い、行動の指針にしていたのかもしれません。

 <…と物語は人物像に現代的な解釈を加えながら>進みますが、映像は重厚で、圧倒的な美しさと時代感で迫ってきます。19世紀の戴冠式前後と言う史実を再現する為に、歴史的な建造物を使ったイギリスロケ、女王役のエミリー・ブラント、アルバート役のルパート・フレンド等、古典的な衣装が馴染むイギリス出身の俳優陣で固めた配役と、漂う空気感にリアリティがある。製作はマーティン・スコセッシですが、この辺りはアメリカ製作のものとは一線を記し、この作品の醍醐味になっています。特に「恋に落ちたシェイクスピア」等で2度のアカデミー賞を受賞したサンディ・パウエルの手による、豪華な衣装の数々が素晴らしく、アンティ-クレース、重厚なシルク等を多用し、時代考証を踏まえながら今に馴染ませ、人物から突出しません。次々と替わるドレスを堪能しました。

 <ところで新婚の女王夫妻が寛いだのは>たった3日間。国民が待っていると、アルバートに抱かれながらも遠くを見つめる女王の姿は痛々しくもありました。それでも9人の子供に恵まれ、二人が築いた幸せな家庭はイギリス国民の理想となったと言われます。
 <ヴィクトリア女王というと後年の喪服姿で>険しい表情を思い出しますが、この作品の女王は輝くばかりに美しい。「私の幸せの為に結婚してください」と自らプロポーズし、二人で過ごした日々の思い出が、アルバート亡き後の女王を支えたのは想像にかたくありません。個人が幸せだからこそ、国民の幸せを願い、願わずとも結果として、最強の国家を作り上げたのではないでしょうか。女王であると同時に一人の女性でもありたかったヴィクトリア、「イギリスと結婚した」と悲痛な思いを発した他の時代の統治者とは一線を記しています。(犬塚芳美)

 この作品は、1月16日(土)より
   梅田ガーデンシネマ、京都シネマ、神戸国際松竹等で上映


<豆知識>
1.色つきの豪華なウエディングドレスが主流の中、最初に純白のドレスを着たのはヴィクトリア。又女王一家はアルバートがドイツから持ち込んだクリスマスツリーを飾って祝った。そんな全てがイギリス庶民に広がっていったのだそうです。

2.イギリス王室を舞台にした作品は多い。一部上げると、
  ①ブーリン家の姉妹:16世紀、エリザベス1世の母であるアン王女と妹の愛憎劇
  ②エリザベス:ケイト・ブランシェット主演のエリザベス1世誕生の物語
  ③エリザベスゴールデン・エイジ: ②の続編で即位後内憂外敵を解決していく様
  ④女王エリザベス:エリザベス王朝後期、老いぼれた女王が家臣と恋に落ちる
  ⑤英国万歳!:18世紀の英国王室を、あぶない視点から描いた名作舞台劇を映画化したブラック・コメディ。
  ⑥Queen Victoria至上の恋:夫亡き後のビクトリア女王と従僕の秘めた恋
  ⑦ある公爵夫人の生涯:ダイアナ妃の祖先のスキャンダラスな実話を映画化
  ⑧クィーン(The Queen):1997年亡くなったダイアナ妃を巡る英国王室の右往左往
  ⑨ダイアナ・プリンセス最期の日々:悲劇が起こるまでの“最期の日々”を再現したドキュメンタリー・ドラマ
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