太秦からの映画便り

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映写室 「ユキとニナ」諏訪敦彦監督インタビュー(後編)

映写室 「ユキとニナ」諏訪敦彦監督インタビュー(後編)    
 ―日仏二つの個性をぶつけて―

<昨日の続き>
―森のシーンがそんな風に変わったから、冒頭の小さな森のシーンが出来たのですか? 画家のおじいさんとの会話とか、哲学的ですが。
諏訪:あれは最初からです。森ってピクニックに行くようなイメージもあれば、もっと深くて怖いイメージもある。多面的ですから。それを表現したいと思っていました。イポリットはあのシーンから始めたかったみたいですね。あの老人はイポリットのお父さんで、建築家で、隣は彼のお母さんです。実は僕は別の所であれを使いたかったんだけど、イポリットがどうしても冒頭に拘って、駄目だった。そっちは譲るからこっちは譲れよみたいな、バーター的でしたね。

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(C)Yoshi OMORI

―うっそうとして迷いそうだし、時々は木漏れ日もあってと素敵な森でしたが。
諏訪:日本の森と言うと山になってしまうけれど、フランスの森は平地の中にあるので、フラットに広がっているんです。ただ目印がないから確かに道には迷いますね。ロケハンで見つけた所を撮影時に見つけられなくなったり、困りました。実はロケハンで決めていた所が台風で木が倒れて立ち入り禁止になったんです。パニックになってどうしようかと思っていたら、いつもは立ち入り禁止の所に撮影許可が下りて、羊歯が一杯あるシーンの撮影場所ですが、結果的には良かったなと。森って明るく生命力に溢れたところと、暗くて飲み込まれそうな面を持っていますよね。多様で映すのは怖かったです。何かきっかけを探すけれど、なかなか見つからなくて。森って何だろう?と考え、それをどう映すか、最後まで怖いと思いました。

―話が元に戻りますが、ノエちゃんの演技に不安を持ちながら、ユキにキャスティングしたのはどうしてですか?
諏訪:キャスティングと言うのは常に不安ですよ。やってみないと解からないし、賭けのようなもんです。それでも一般的な俳優だったら演技で何とかなるだろうけど、ノエちゃんはその経験がないし、彼女の表現は解かり難いですから、どうなるかなあと。それなのに彼女に決めたのは、映像に撮ってみたら、凄く視点を引き付けられた。彼女自身が複雑なんだろうけれど、表情が複雑で、彼女が黙っていてもこっちの気持ちが動いちゃうんですよ。これって映画的ですよね。何かを与えてくれる演技ではないけれど、こっちの思いを引き出すと言うか。あの顔は人を惹きつける。それは間違いないと思ったんです。
―「不完全な2人」でお話を伺った時、僕が映画を作るのは知っているからではなく、知らない事を知りたいからだと仰って、印象に残っていますが。
諏訪:こんな事が知りたいと言うのではないけれど、自分が知っている事として描きたくないという事ですよね。僕も父親ですが、子供って、自分の子供でさえ理解しているつもりでも何か違っているだろうし、そういうものをちゃんと見えるようにしたいなという事です。複雑に存在している子供を、複雑なままに見えるようにしたいという事で。

―諏訪監督の台本は、基本的に台詞が書かれてなくて、即興で俳優と一緒に作ると伺っていますが。
諏訪:そうです。今回は特にイポリットと一緒に作ったんですが、考える事ってお互いにそれぞれ違うんですよ。ノエちゃんにしても物を考えていて、それが何なのかは解からないけれど、お互いに解からなくても良いんだと言う関係性で物事を進めていきました。
―そんなスタイルで映画を作られるのはどうしてですか?
諏訪:監督の中には自分の考えだけで作りたいと言う人もいます。自分の生まれ育った環境とかが、そうさせるんでしょうが、僕が作りたのはそういうものではなくて、それぞれが色々な考えを持っているという形という事です。カメラと言うのは押せば映る。その中にあるのはすでにあるもので、映画と言うのはすでにある世界に対する、自分の見方を提示するものだと思うんです。この方法が面白いのは、別の世界を見れる事で、その世界が又謎に満ちているんですよね。この場合の世界は他者と同意語なんですけど、子供も他者で、彼女の世界が映るのが面白く、それは僕の想像した物ではないという事です。

―大人でしかも男性の監督にとって、少女を描くのは難しかったのでは?
諏訪:最初にイポリットと話した時は、お父さんと息子の話でやろうと。イポリットがお父さんを演じるのだけれど、僕も父親だしね、父親って何だろうと考える所から始めたんだけれど、途中からだんだん子供の視点になり、男か女かと言ったら女になって行きました。この時は不安だったんです。僕らは男で女の子の気持ちが解からないし、イポリットはいるけど僕には娘がいないし。でも逆に考えたら、男の子だと自分の少年時代とか投影してしまいそうで、むしろ女の子だと解からないから、演者と対等になれる。これって良いかもという事です。手紙を書くアイデアも、脚本を書いている時、同世代の少女何人かに聞いた事なんです。「2人が愛し合っていた頃を思い出させたい。愛と言うのは復活する」と言うんですよ。女の子ってロマンティックだなあと驚きましたね。もう少し上だとファンタジーではなくもっと現実的な事を言うし、もっと下だと出来ないですしね。こんな事をするのもこの年代だからです。もっともノエちゃんは「私は絶対やらない。だってばれるもん」と言っていましたが。

―こんな子供たちの思いをぶつけられて、父親として何か感じるところは?
諏訪:もちろんこんな経験は無いんですが、ラスト日本に行って新しい友達がいるじゃあないですか。あのシーンを撮りたくて、ユキにとってニナと別れる前半は世界が終わると言うか失われる、暗い出来事な訳ですけれど、最後に、(でも大丈夫、又新しい世界が出来る。子供って大丈夫だよ)と言うのを示したかったです。そうは言っても、一方で消せない傷を背負う訳で、(生きるって幸せと不幸の両面。それが大人なんだ)と、彼女に取って最初に解る出来事だったと思うんです。子供が傷つくとは言っても、離婚に至るにはそれなりの事がある訳で、子供の為に離婚はいけないと言うつもりもない。大人には大人の事情があるけれど、それでも又良い事もあるよと示したい。
―ラストは楽しい事で終わらせようと思っていたのですか?
諏訪:そうですね。ユキの設定もそうだし、イポリットと僕が監督するという、成り立ちからして日本とフランスの混血のような映画ですから、日本のシーンを撮って、又新しい事が始まるというのは見せたかったですね。最後にユキが日本の生活を映すシーンは、彼女にビデオを持たせて好きなように回させています。時間がなかったのもありますが。

―その辺りを少女の二人はどこら辺りまで理解しているのでしょうか?
諏訪:彼女たちなりによく理解しています。もちろん理解はその人によって違うけれど、脚本をよく読んできていました。
―そういう風にして役に重なった彼女たちから出てくる台詞は監督の思いを超えていましたか?
諏訪:台詞は書いてないんですから、何が出てもある意味で思いを超えているし想定外。でも全体から見ると想定内。こんな風に普通に喋っている時も、同じ事をしてる訳です。気持ちをそういう状況に持っていけば良い訳ですから、かえって普通に脚本の台詞から入ることに慣れたプロの俳優さんだと戸惑うようですが、子供だとすんなり行くようですね。

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(C)Yoshi OMORI

―この映画にはそんな自然さが一杯ありますよね。日仏折衷のユキの家も素敵でした。
諏訪:「フトン」と言う言葉がフランスでも通用し、フロアーに直接布団を敷く人もいるように、日本文化が一部には浸透しています。だから日本人とフランス人の夫婦が暮せばあんな風になるのかなあと。あれは美術スタッフだけではなく、イポリットとお母さん役のツユさんが自分たちの思うように飾っていったんです。それを見て今度はスタッフが食器を揃えるとか、誰か1人のアイデアではなく、役者が複合的に作っていってあの部屋ができました。ツユさんは日本人と言うよりコスモポリタンですね。あの部屋には有名な写真家の作品がかかっているんだけど、彼女がどうしても飾りたいと、直接交渉して許可を貰ってきました。
―最後になりますが、撮影していて楽しかったシーンを教えて下さい
諏訪:2人が手紙を書くシーンですね。テントを立てるシーンも楽しかったなあ。子供にそのままやらせていれば良いんで、楽しかったですね。(聞き手:犬塚芳美)

《作品の感想とインタビュー後記:犬塚》
 <監督のお話しにもあるように>、ユキに扮するノエちゃんの曖昧な表情が素晴らしい。魅せられました。何を考えているのだろうと、心の中を覗きたくなります。彼女に照準を合わせると、他の人の過剰さが気になりますが、でもそんな周りがあるからこそ、ノエちゃんの不確かな演技が光るのかもしれません。
 <ところで諏訪監督のインタビューは>2回目です。少し長いのですが、作風とか、それへの思いとか丁寧にお答え下さいました。学長職とのバランス等も伺いたかったのですが、映画の話に終始し時間切れ。もうフランスでは公開されたそうで、プロ受けが良いそうです。そんな意図はないそうですが、2人の監督の文化を反映してか、日仏両方のエキゾティズムを感じる作品でした。


   この作品は、梅田ガーデンシネマ2月6日から、
            京都シネマ2月13日から 公開
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