太秦からの映画便り

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映写室 新NO.36ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女

映写室 新NO.36ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女   
―スウェーデン発の傑作ミステリー―

  この作品いつもとは勝手が違う。物語の中で追う謎と、追う方の女の放つ強烈な謎の2重構造になっているのだ。スウェーデンの富豪一家の謎は、複雑かつ根が深くて陰惨そのもの。一方事件を暴く方も暗い過去を匂わせる。どちらも簡単には全容を現さない。事件を追いながらも、この女いったい何者? 過去に何があった? …と、まるでもう1人の主人公に感情移入したように彼女に惑う。いったいどっちの謎を探っているのか解からないが、曇った空の下に広がる北欧の風景も楽しい。漂う空気感とか、なんか独特なのだ。スウェーデンって明るいのか暗いのか、う~ん、このミステリーのように複雑そのもの!

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(C) Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges Television AB, Film I Vast 2009

 <月刊誌「ミレニアム」の責任者ミカエル>は、武器密売記事を名誉毀損で訴えられ失職した。その頃、大企業の元会長から約40年前に失踪した姪の謎解きを頼まれる。こうして、スウェーデン北部の島が舞台のミステリーが始まるのだが、島は密室だった。容疑者は元会長の一族郎党で、莫大な利権と資産をめぐって親族同士の駆け引きがあるようだ。ミカエルは早速襲われる。そんな彼を助けるのがドラゴン・タトゥーの女という訳で、彼の身辺調査を元会長から頼まれた調査員だった。

 <身長150cmで少年のようにガリガリの>体にドラゴン・タトゥー、鼻ピアスで厚底の靴を履き、パンクファッションに身を包んだ女は何者なのか、半信半疑で彼女と組むミカエル。たちまち画面は主役の座を彼女に奪われる。ミカエル形無しだけど、まあそれも仕方ない。彼女の放つこのダークなオーラ、ノーマルはいつもアブノーマルに負けるものだ。
 <彼女は天才的なハッカーで映像記憶能力もある> つまり超優秀な調査員と言う訳で、社会のルールにとらわれず、法を犯すのも平気で自分の思うとおりに行動するんだけれど、根底には既存の権力への不信感がありそう。全身から発する闇社会の匂い、孤独感、強烈で癖になった。相当のトラウマがあると予想させるが、事件が解決してみると、2つの謎の根底にはレイプ事件があると解かる。

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(C) Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges Television AB, Film I Vast 2009

 <自身の欠損が研いだ刃が>、調査員としての武器。正義をかざすジャーナリストだけれど、罠に嵌められてあえなく退場するミカエルとは桁違いなのだ。…と言っても、ほとんどの推理はミカエルがしたのだけれど、どうも印象が薄い。少しずつ正攻法で探っていく、所謂インテリのミカエルに対し、直感で瞬時に本質に迫る女は目立つ。2部以降もコンビは続くのだろうか。
 <さて、肝心の姪の失踪は>思わぬ結末を迎える。老いた依頼者には辛い報告、一族の血の汚れだった。しかもヨーロッパの歴史を紐解けば、ナチの影が免れない。富豪一族の闇とヨーロッパの闇が重なる。このあたり、島を取り巻く海のようにおどろおどろしい。

 <原作は>、処女作出版前に急死して伝説の作家となったスティーグ・ラーソン。人口900万人のスウェーデンで360万部を売り上げたというのだから、まさに社会現象だ。世界40カ国で翻訳され、今も累計2100万部の売り上げを更新中と言う。ヨーロッパではすでに第2部、第3部も公開され、圧倒的な人気らしいが、この作品を観ればその理由も解る。草案の色々な罠が見え隠れし、事件より何よりこのヒロインの謎が解けないのだ。冒頭のミカエル失脚事件も、物語の終盤には絡んできそうな予感がする。

 <それもそのはず>、スティーグ・ラーソンはこの物語に第5部までを想定していた。第4部の草稿をパソコンの中に残していたそうだが、作者が急死した今、残念ながらそれが日の目を見ることはない。それまでにこのヒロインの謎は解決するのだろうか。それが気がかりだけれど、伝説のヒロインを置き去りに、大きな記録を残して、作者自身が伝説の人となってしまった。

 <家具等北欧のデザインは>シンプルなことで知られる。でも究極のシンプルに行き着くまでには、幾多の切り捨てたものがあるはず。この作品はそんなスウェーデンを表現しているみたい。切り捨てたもの、美しくペンキで覆った下の、ドロドロした物をこそテーマにしているからだ。それが風景の端整さと相まって不思議な味わいになっているのだと思う。原作の力、ヒロインに扮したノオミ・ラパスの存在感で、あまり馴染みのないスウェーデン映画に魅了された。漂うB級感、ドラゴン・タトゥーの女を劇場で見よ!(犬塚芳美)

この作品は、1月30日(土)より、
     敷島シネポップ、シネリーブル梅田、シネリーブル神戸で上映
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