太秦からの映画便り

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映写室 新NO.39 COACHコーチ「40歳のフィギアスケーター」

映写室 新NO.39 COACHコーチ「40歳のフィギアスケーター」   
 ―夢を諦めない!―

 <冬季オリンピックの真っ最中に> それに協賛するような映画が公開になる。主演は若手のコーチをしながらアイスショー等で活躍する、プロ・フィギアスケーター西田美和さん。日本の現役最高齢選手でもあり、トリノ五輪代表だった安藤美姫選手のサポートコーチを勤めた人だ。その縁で安藤美姫選手も出演するし、もはや懐かしくなった荒川静香さんや伊藤みどりさんの秘蔵映像も流れる。でも主題はあくまで、夢を諦めないこと。題材はフィギアだけれど、40歳という年齢の微妙さや、一人の女として、いや人間としての果敢な生き方を描いています。

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 <アイスショーとかで活躍する美和は40歳で独身> 傍目には華やかでも、若返りをしたいと暗に首を示唆されたり、色々考える年頃だ。ある日昔の恋人が娘にスケートを教えてとやってと送り込んできたまま亡くなる。暫く娘を預かることになるが「オリンピックには出ないの?」と聞かれて昔を思い出す。…こうして美和は代表の座を目指すのだけれど、長いブランクで簡単なジャンプも飛べない。悪戦苦闘する様、必死の訓練等が描かれていく。

 <色々な競技があるけれど>、華やかさから言ってもフィギアスケートへの関心は別格だ。その中でも一番の花はやっぱり女子のそれだと思う。凄いテクニックの男子も楽しみだし、ペアの華麗でアクロバット的な滑りにも驚愕するけれど、若い女性が一人で全てを引き受け、氷上で舞う姿の緊迫感には及ばない。失敗と成功の狭間の最高の到達点を探って瀬戸際を歩きながら、彼女たちがスケート靴に全てをかけるように、観客の心臓も時には鋭いエッジで氷上に立たされる。見ているだけで心臓が止まりそうなのに、あんな華奢な少女たちがこのプレッシャーに堪えているかと思うと痛ましいほどだ。逃げ出したくはないのだろうかと思うけれど、そんな重圧すらも細いエッジの上に如何に乗せて見せるか、その心意気が問われる競技でもある。

 <もっともフィギアは>、技だけでなく表現力という容姿やコスチュームを含めたビジュアル面も競うのだから、スポーツだけれど藝術という微妙な競技だ。この作品に実の妹が出演している村主章枝さんが氷上の女優と言われたように、指の先までの演技力があればなお良い。どれを養うのも並大抵の事ではないはずだ。水面を優雅に進む白鳥が、水面下で必死に水を掻いている例えは良く使われるが、フィギアなどその典型ではないか。晴れ舞台の影で日頃過酷な訓練をしているのは想像できる。

 <この作品は氷上だけでなくそんな舞台裏を写す> 体力の問題が大きいのだろう、今世界のトップは、真央ちゃんやキム・ヨナ等10代や20代の選手だけど、この作品はそんな競技に40歳のベテランが挑むというお話だ。
 <どうしてそうするかと言ったら>、昔代表の座を約束されながら土壇場で逃げたから。世界に挑む代わりに女としての幸せをとると、代表戦をエスケープして恋人とのデートの場所に向かったのだ。もちろんそれは恋に名を借りたプレッシャーからの逃避なんだけれど、そんな事をされた恋人も堪らない。彼女から去っていくし、彼女のコーチも責任を問われて、スケート連盟から追放された。そんな責め苦もあったのだろう。安らぎを求めたはずのその後の人生は、外見には華やかでも不消化のまま続いて、年齢的に難しくなる40歳を迎えたというわけだ。

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 <誰もが何がしか>、逃げたままの問題を抱えているもの。それを精算しようにも、たいていの人は清算の前に諦めという泉に落ち、やがて穏やかな老後になる。諦める時って何時だろう? 身体条件を求められる競技だからだけれど、試写で一緒だった女性が、「私40だけど、この映画、もう40、もう40って連呼するけど、40歳ってそんなに瀬戸際なんですか?」と憮然と言うと、たちまち同じ年齢の数人が同調し、話はやり残した事から反れて40歳問題に終始した。こんな会話こそが40歳なのかもしれない。焦りを煽られたのだろう。
 <でも焦りは可能性なのだと>、私の年齢なら思える。年とともに、可能性をなくして心安らかな日々に突入するか、可能性の尾っぽを捕まえて、年齢とかけっこで焦りと苛立ちの日々を生きるかに分かれていく。どちらが良いとも言えないけれど、諦めも安らぎも自分で手繰り寄せるしかないのだ。自分で手繰り寄せるにはどうしたら良いか、美和はもう一度頑張る事、諦めないで自分の限界まで挑んでみる事だと思ったのだ。

 <結果はどうであれ>、頑張り切った人の表情が晴れやかで美しいのは、オリンピックが教えてくれる。悔し涙を流す人は、まだ可能性を残していると言う事だ。晴れやかな表情になれるまで、彼らはきっと再挑戦を続ける。考えてみるとオリンピックと言う桧舞台に立てるのは、決して夢を諦めなかったつわものばかり。この作品はそんな彼らを讃えて、頑張る事の素敵さを描いている。そういう意味でもこの作品はオリンピックへの協賛だ。
 <スケーターや無名の俳優が多い中>、謎のコーチに平泉成さんが扮し、別の次元の、圧倒的な存在感を見せ付ける。平泉さんも又、俳優として欲張りに陰の努力を重ねた方なのだと思う。競技シーンは本当の試合では不可能な角度にカメラが入り、フィギアの魅力を華麗に伝えます。(犬塚芳美)

 この作品は、東京で上映中
       2月20日(土)よりシネ・リーブル梅田で上映
       3月6日(土)よりホクテン座、布施ラインシネマで上映
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