太秦からの映画便り

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映写室  藤田まことさん:シネマエッセイ

映写室  藤田まことさん:シネマエッセイ 
  ―劇場よりもお茶の間の人―

 <藤田まことさんの追悼番組が>続いている。先夜は「はぐれ刑事純情派 最終回スペシャル」の再放送だった。70も半ばを過ぎて、現役の刑事と言うのもおかしな話だけれど、不思議と納得させられる。長いシリーズ物らしく、岡屋龍一監督や共演者との兼ね合いも自然だ。誰もが役と自分を一体化し、しみじみと人生を語ってほろりとさせられた。こんな境地は時間をかけてこそのもの。そんな意味でも藤田さんは、単発の映画よりも、シリーズ化されやすいテレビの据わりがいい方だと改めて思う。

 <ところで、これの撮影時期が気になった> 一緒に見た家族は、この1,2年の体力的に辛そうな現場を知っているだけに、5.6年前のまだお元気な頃だろうと言うのだ。でも調べると、収録は去年の春頃と予想できる。相当しんどかったはずなのになあと、役者魂に感嘆していた。
 <現場では周りがハラハラするほどの>状態でも、カメラの前では懇親の力を振り絞っておられたのだろう。なにしろ藤田さんが出なくては始まらない。視聴率を大きく支配するし、1時間か2時間の何処かに、あの飄々とした顔が映るだけで、出ていない時間帯の空気までを支配する。かけがえがなかった。

 <出演作の中で私が特に好きなのは>「件客商売」だ。小林綾子さんとの年の離れた夫婦役が似合って、おっとりした顔の裏に悲しみを秘めた非情な匂いもする。時代劇なのに、時代劇と言う以上に人間の物語になっていた。
 <ご本人もお気に入りかと思ったら>、幾らかやり難そうな感じも受けたと言う。「ぴったりくるのは必殺の主水役じゃあないかなあ。サービス精神があるから、何処かに笑いが入ってた方が落ち着く人なんだ」と分析する。そんなところが関西人好みだ。出身地と言うのもあるが、視聴率もより関西で高かった。

 <どんな時もサービス精神を忘れない方で> 地方ロケに行くと、タイアップで大勢のスタッフが泊まるホテルに気を使い、他の泊り客を集めて歌とかのショーをしたという。もちろん無料だからホテルもお客も大喜び。人気も出るし、制作もタイアップが取りやすかったはずだ。
 <主演作に長寿番組が多い理由を聞かれて>、「視聴率がとれるように頑張るんです。自分の肩に共演者やスタッフ、その家族の生活がかかっている。数字が取れれば又続きますから」と答えている。主役でありながらプロデューサー的に作品全体を眺め、放映の数字まで心配し、番組の全てを肩に背負っていた。その重みで背中を丸めていたのだと、今頃気が付く。皆が愛したのはあの丸めた背中ではなく、背中に現れたそんな責任感だったのかもしれない。
  
 <この1,2年は>立っていられない事もある程で、それでも撮影は続くから、実は後ろ姿がそっくりな、遠景や後姿の代役を勤める影武者がいたという。[細やん]の愛称で呼ばれる役者さんだが、本当の名前は皆覚えていない。苦労人の藤田さん、今頃天国で、[細やん]からまだまだ続くはずだった影武者の仕事を奪った事を、謝っているのではないだろうか。片手を頭に当てて少し首を傾けて、口調までが浮かんでくる。そんな藤田さんの優しさを誰より知っているのも彼だ。何しろ背中に同じ重荷を背負っていたのだから。名優の代役を務めたことを誇りに、誰よりも藤田さんを偲んで、今度は顔を晒した自分に賭けていくと思う。(犬塚芳美)
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コメント


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誰もハンサムだと言わないが、洒脱ないい味の男前だったと思う。件客商売は楽しみにしていました。

T.T | URL | 2010年02月23日(Tue)09:28 [EDIT]


Re: タイトルなし

> 洒脱ないい味の男前だったと思う。剣客商売は楽しみにしていました。

お若い頃よりお年を召してからのほうが、いいお顔ですよね。それに年齢不詳というか、お年が解からなかった。
剣客商売のようなしっとりとした時代劇は今映画にならないので、テレビを楽しみにしてたのです。リアルタイムで観て、感動のあまり続けて録画したのを見て、それを2回繰り返してその度に涙にくれた回もありました。確か井上昭監督が撮った回だったと思います。

もう新作は観れないと思うと、残念で。本当にかけがえのない方でした。

犬塚 | URL | 2010年02月23日(Tue)21:54 [EDIT]


こんばんは。

以前の勤務校に、藤田さんのお孫さんが在学していて参観日に学校にこられたことがあったそうです。
すごく素敵でかっこよかった・・・と皆が話していました。
お孫さんのお迎えにこられたこともあったそうで、その頃に勤務していたら・・・と残念に思ってました。

私も・・・もう新作が観られないこと、さみしく思います。
 

kimico | URL | 2010年02月23日(Tue)22:34 [EDIT]


Re: タイトルなし

> 以前の勤務校に、藤田さんのお孫さんが在学していて参観日に学校にこられたことがあったそうです。
> すごく素敵でかっこよかった・・・と皆が話していました。

そうか、お孫さんがらみというそういうこともあるのですね!役得!
ハワイにもお孫さんがいらっしゃるらしくて、仕事がオフの時はすぐハワイ。会いに行くのを楽しみにされてたそうです。
 
スタッフにもよく気を使ってくださって、新しく撮影に入ると、たいていは藤田さんお気に入りの西院の焼肉やさんで慰労会。喜劇役者で出発したのを忘れず、腰の低い気さくな方だったと皆が口を揃えます。
実は影武者の話は、亡くなられて始めて聞きました。具合が悪くロケに出れないことが増えたとは聞いていたのですが、こんな事情があったとはと驚いて。色々なメディアで晩年は病気と借金で苦しんだと言われますが、画面で見る藤田さんはその風情さえ味方に付けて、芸域を広げていた。借金がなければ晩年あれほど露出することもなかったかも知れず、私たちには幸せだったとも思えて。もう一度小林綾子ちゃんとの掛け合いを見たいなあ。

犬塚 | URL | 2010年02月23日(Tue)23:51 [EDIT]


 

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