太秦からの映画便り

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映写室「ただいま それぞれの居場所」大宮浩一監督インタビュー(前編)

映写室「ただいま それぞれの居場所」大宮浩一監督インタビュー(前編)  
 ―介護保険制度からこぼれる人々の居場所―

 介護保険制度が出来て10年、若者の流入も多く、介護の種類は増えてきました。でも一方で、介護保険の制度に合わず施設を追い出される人もいます。そうなったら何処に行けばいいのか。まだまだと思っていても、介護問題はある日突然、待ったなしでやってくる。現に私も、去年突然渦中に放り込まれました。でも悲壮になってばかりでは始まらない。新しい介護の形を模索する人々を追った、大宮浩一監督にお話を伺います。

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(3月30日 大阪にて)

<その前に、「ただいま それぞれの居場所」はこんな作品>
 京都に小さな介護施設が誕生した。28歳の青年が妻と2歳の長女と一緒に、自分のおじいちゃんを自分の手で見たいと、介護保険を使わず、普通の民家で始めた施設だ。一方、埼玉県のケアつき福祉施設「元気な亀さん」は、創立23年の老舗。20人の宿泊者とデイサービスで、障害者や学童も通ってくる。怒りっぽくてスタッフを殴る老人は元校長先生。でも、散歩し、スタッフや家族と共に流しそうめんに舌鼓を打つと、笑顔が広がる。最近、他の施設から追い出され、ここに辿り着く利用者が増えてきたという。


<大宮浩一監督インタビュー>
―「よいお年を」や「若葉のころ よいお年を2」と同じ「元気な亀さん」が出てきますね
大宮浩一監督(以下敬称略):ええ、さすがに当時の入所者はもういないんですが、スタッフは残っています。福祉の現場は離職者が多いと言われるけれど、ここはそんなことがない。皆長く続く。仕事場ではあるけれど、もう一つの生活の場になっているんでしょうねえ。99年に作った前作の時は、介護保険制度が出来る直前だったけれど、「元気な亀さん」に若い人が一杯入ってきた。(これはブームか? そのうち辞めて行くんだろうなあ)と思って、若い人を中心に撮ったんです。だけど、今度行ってみると、その時の人が結構残っている。お母さんになって子供と一緒にそのまま来てたりとかで、嬉しかったですね。
―居心地が良いのでしょうねえ。その頃と施設のスタンスは変わっていませんか?
大宮:ええ、変わっていないですね。主催者の瀧本さんは、パンチパーマが薄くなってそれを帽子で隠すようになったけれど(笑)、理念とか姿勢はぶれずに頑張っている。それがあるから若い人が付いていけるんだと思います。上にぐらぐらされたら、迷いになりますが、瀧本さんは一貫してますから。

―前作の時は大宮さんはプロデューサーですよね?
大宮:そうでした。今回もその時の監督に声をかけたんだけど、彼はその後両親の介護という家庭の事情が生じた。映画を辞めて故郷に帰り、親と一緒に暮し始めたんです。今は、ご両親が施設に入っているので、もう1回どうだと声をかけたけれど、向こうで責任のある仕事もしている。「俺はもういいから。映画を見せてもらうよ」ということで、今度は僕が監督をしました。

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(C)大宮映像製作所

―介護問題は誰にも降りかかってくるという、典型のようなお話ですね。
大宮:そうなんですよ。誰にとっても他人事ではないというか。実は僕にしても、親の介護が急に差し迫ってきました。この作品が完成したすぐ後で、それまで元気だった父が、転んだことがきっかけで要介護5まで行ってしまったんです。自分だっておぼつか無い母が介護していて、いわゆる老老介護ですよね。実際のところ、これが完成した後でよかったと、しみじみと思いました。実家は山形なんで、東京で暮している自分はどうしたら良いのかと、今考えているところです。こっちで施設を探したりしながらも、(映画では居宅が良いって言ってねえか? 矛盾してるよなあ)って自分で突っ込んだり、そんな繰り返しですね。でもこの作品で、すべてを受け入れそれを愉しむという事を教えてもらったんで、悩んで酒を飲んでも状況が変わらないのなら、おおらかに構えていようと思っています。

―確かにこの中で、入所者もスタッフも皆さんおおらか。雑然とした中で、個性豊かに生き生きとされていて、(こんな施設もあるんだなあ)と嬉しくなりました。色々介護施設を調べられたんですか?
大宮:こういう小さい所を中心に見ました。対極の、大きな特養とかは見ていません。僕は映画制作者であって、介護の専門家ではない。あまり知識を持つと、スタッフの行動についても「これはおかしい」とか口出ししたくなって、逆に作品に縛りが出るかもしれない。そう思って、あえて調べなかったところもあります。特養も必要だと思うし、大きな所には良い所も悪い所もある。逆に小さい所にもその両面があります。どちらが良いと言うのではないけれど、映画の立ち位置として、どちらかと言えば、こんな小さい所にシンパシーを持つというところでしょうか。
―シンパシー?
大宮:ええ。小さい所へのシンパシーという意味では、映画の作り方と似ています。作りたいものを作る時に、始めてエネルギーが出るでしょう? 映画を作っていても、撮影所とかで社員として仕事を与えられていると、好きな映画作りでさえ、好きでなくなってくると言うか。人生思いっきり生きれるのは、たかだか数十年。好きなように、いい加減に生きても良いと思うんですよ。好きだから頑張れるんだから。

―そういう意味では、この中でも若い人たちが、ある意味いい加減に、好きな事をしていますね。もちろん試行錯誤の時間はあったのでしょうが、こちらから見ると実に気軽に、段差や階段がある自宅を使って、介護施設を作っている。建物がどうとか、行政を動かしてどうとか、難しく構えないでも、志があれば、こんな風に出来るんだなあと目から鱗が落ちました。
大宮:介護保険を使うには申請しないといけない。行政が絡むと色々制約や規制があるらしいんですよ。彼らはそれを嫌っている。例えば夏の暑い日に散歩に行って、汗ばんだらシャワーを浴びたい。普通の感覚のそこの当たりが、対応できるかどうかです。大勢いる施設だと、(何時に食事で、お風呂は何曜日で)と規則を作らないと運営できないけれど、小さい所だと、それぞれの顔を見ながら臨機応変に出来ると。

―確かにどの施設も自宅のようだし、暮し方も自宅の延長ですよね。
大宮:散歩に行ったりの日常や、施設にしても生活臭の溢れた所で、ごちゃごちゃしてたり階段があったりですからね。これが好きな人と、きちんとしてるのが好きな人がいるわけで、誰にでも良いとまでは言えません。自分の部屋があって、規則正しい日常があってと、きちんとしながら、一人で居たい人もいるでしょうから。
―ええ。体が動きにくいのに、2階で、しかもお布団に寝て、手を貸して立ち上がらせてもらっている。こんな事を続けて介護者は腰を痛めないだろうか? ベッドを利用しても良いんじゃあないか? とも思いました。
大宮:そう思われるのも解かります。この作品は、ここが良いではなく、こういう所もあるという事です。(聞き手:犬塚芳美)
<続きは明日>

この作品は、5月1日(土)から第七芸術劇場、
      5月22日(土)から神戸アートビレッジセンター
      順次京都シネマ、にて公開
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