太秦からの映画便り

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映写室 「星の国から孫ふたり~「自閉症」児の贈りもの~」槙坪夛鶴子監督インタビュー(後編)

映写室 「星の国から孫ふたり~「自閉症」児の贈りもの~」槙坪夛鶴子監督インタビュー(後編)
 ―時代に要請されながら、「共に生きる」事を訴え続ける―

<昨日の続き>
―思いの深さですねえ。
槙坪:「若人よ」、「地球っ子」と、このシリーズで結局3作作ります。2作目は1作目の監修をしてもらった広島の産婦人科の先生の本を元に作ったんです。高校1年生が主人公で、広島を舞台に、妊娠、中絶、性行為感染症、HIVも入れました。大体私は時代の要請にあわせて映画を作る。3作目は、血友病の患者が、非加熱の血液製剤のせいでHIVに感染する話です。当事大騒ぎでした。偏見で血友病という言葉さえ使えなくなっているから、この問題について、子供たちからお年寄りまで解かる映画が欲しいと言われて、小2の子を主人公に作ったんです。

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©2009 星の国から孫ふたり製作委員会, 企画制作パオ(有)

―子供たちに向けた3部作の完成ですね。
槙坪:ええ。そうこうするうちに自分の体が悪くなってきて、「わたしがSuki」からは、車椅子で仕事をするようになりました。これは援助交際の話で、自分の事をもっと好きになって欲しいというのがメッセージです。先生たちが、「援助交際をやってるのが解かっても、覚せい剤をやってるのが解かっても、止めなさいとは言えない。自分の体なのに何が悪いと言われたら言い返せない」と言うんです。エンコーだけでなく、覚せい剤、レイプ、HIVの問題も出てくるけど、これらは全部繋がっているんですよ。私の作品で一貫しているのは、「共に生きる」という事です。自分の命を大切に、人の命も大切にして、どうやって生きていくかを考えて欲しいと。自分の体を大事にしたいなら、薬物にしても止めるしかないでしょう? 私は押し付けるのは嫌だから、自分は何がしたいのか、何が出来るのか、自分で考える映画にしたい。だから、大人がこんなに真剣に自分たちのことを考えてくれる映画は初めてだと、子供たちには大評判ですよ。

―ええ。そうしてテーマは介護問題になっていきますね。
槙坪:そうこうするうちに、大阪の母の認知症が始まり、私自身に介護問題が降りかかってきたのです。「老親ろうしん」を作ったのは、まだ介護保険なんて誰も知らない頃だから、制作発表は勉強会のようでした。完成した時に丁度介護保険が出来るんです。こんなものを公開しても、誰も見に来ないだろうと思っていたのに、岩波ホールで2ヶ月のロングヒット。こんなに親の介護に困っている人がいるのかと驚きました。それまで話題にもならなかったですしね。皆自分には関係ないと思っていたし。私は何でもやることが早過ぎるんですよ。で、その門野さんに自閉症のお孫さんが出来、彼女が体験を本にしたことから今回の映画が出来るんです。
―門野さんのお孫さんが自閉症でなかったら誕生しなかった映画ですね。
槙坪:そうですね。自分が病気を持っているので、難病ものは作りたくないんです。当事者でないと辛さは解からないし、一人一人症状が違う。そういうのを現すにはドキュメンタリーもある。自分は作りたくないと思っていました。でも門野さんが電話で色々言う。アメリカと行ったり来たりの子守で大変だと。危険だから24時間目が離せないし、拘りが強くて、コミュニケーションが取りにくい。言葉がなかなか出ない。だから、行って助けてやらざるを得ないと。見た目で解からないから、この障害の事をいくら説明しても理解されない。解ってもらうには映像が一番。自閉症を扱った映画を作ってと、言うんです。それにアメリカは支援体制が充実してるけど、日本は遅れている。それも知らせて欲しいと言ってましたね。原作者に背中を押されました。

―言葉は知っているけれど、状態については、たいていの人がおぼろげにしか知らないのでは。
槙坪:色々報道はされていますけどね。親子心中、虐待等の事件の背景には、発達障害とかがあるんじゃあないかとも言われます。でも、事件は報道されるけれど、障害に対する無理解から、障害ゆえに加害者になったり被害者になったりの、根本的な問題は取り上げられない。映画の中にもあるんですが、当事者にとって何が辛いって、世間の冷たい目だと。「親のしつけがなってないんじゃあないか」と責める様な視線が怖くて、外に連れて行けない。だから親が隠し、回りにいないから、余計に世間の人は知らない。実は隠されているけれど、発達障害の境界上の人は、映画で言っているよりも、もっとたくさんいます。
―保母をしている友人が、この頃驚くほど増えていると言っていました。
槙坪:原因はまだはっきりとは解からない。でも多い。今解かっているのは、生まれながらに脳の機能の発達にばらつきがあり、障害になっているという事です。事件があると、報道が一つの方向にばかり流れて、それを解明する切り口を見つけられない。原因があって結果があるのに、報道の人は勉強不足です。例えば、事件を起こした人がアスペルガーだと、報道でアスペルガーという言葉だけが独り歩きして、アスペルガーというだけで怖がられたりする。

―そうですね。でもこの作品の、可愛い人形劇や、心の思いを吹き出しで表現する手法で、ずいぶん解かりました。
槙坪:人形劇は木島知草さんで、彼女はエイズ問題をよく上演するから、エイズおばさんと言われている方です。私の作品に出てもらうのはこれで3本目で、彼女と相談して子供たちにどうすれば解かって貰えるか工夫しました。
―馬渕晴子さんの扮した、祖母にあたる作家や子供の両親が、前向きで明るく素敵ですねえ。大変なのに大らかで、こうありたいものだと憧れます。皆がほのぼのとしてユーモラスでもありました
槙坪:映画は常に希望を持てるように作りたいんです。当事者は色々な悩みを抱え、本当はもっと暗くて大変だとは思うけれど、こういう発想が出来れば良いなあと思えるような、光が見える映画にしたいのです。可哀想、気の毒という他人事で終わって欲しくない。障害を持っていても、共に生きることは出来ます。隔離された所ではなく、地域の中で、地域のネットワークで支えあって、その人らしく暮すことが出来るはず。それには自分は何が出来るか、これを見た人に感じて欲しい。何にもしなくても良いから、障害を知り、「大変だけど、親も子も頑張ってるね。私たちも応援してるよ」と温かい目で見守ってくれるだけでいいんです。温かい眼差しが、どれほど当事者達を元気付ける事か。そんな事を、この映画を見た人は、少なくとも一人には伝えて欲しいのです。

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©2009 星の国から孫ふたり製作委員会, 企画制作パオ(有)

―ええ。所で、パニックになる寸前のシーンのスローモーションや、吹き出しの言葉ですが、事実に即しているのでしょうか?
槙坪:多分そうだと思います。色々な資料を読んで、彼らはどうもこうであるらしいと知りました。当事者の言葉から知った事もあります。彼らにはどうも私たちの見てる世界とは違う物が見えるらしい。目や耳から、私たちより情報がたくさん入ってくるらしいんです。耳を塞ぐのも色々な音が入ってくるからだし、目を合わせられないのも、見ると光としてダーッと一度に色々な情報が入ってきて処理できないから。人が歩いているのが10倍位のスピードで見え、ぶつかりそうで怖いから地面だけを見て歩くという人もいます。色にしても淡色なのに色々な色になってパーッと飛び込んでくるという人もいますね。ぴょんぴょん飛び跳ねる人は、どうも体の感覚が解からないかららしくて、飛び跳ねて確かめているらしいんです。彼らは世間に対応できないから、恐怖心で暴れるんですよ。自閉症は文字通りの閉じこもりではなく、他人をシャットアウトするんだけれど、自分の出す音は平気なんです。海外の表現“オーティズム”というのは、自分本位という意味ですしね。

―体が触れ合うとか、コミュニケーションが苦手なんですよね。
槙坪:でもそれらも慣れると平気になっていく。苦手な、人とのコミュニケーションも、信頼関係を築き緩やかに慣れて行けば克服できるんです。治育と言うんですが、長い時間をかけて、触れあいながら学んで軽くすることが出来る。予想外の事が起こるとパニックを起こすけれど、パニックを起こすことが障害なんだなあと、ゆっくり待ってあげられるのが社会のゆとり。周りがパニックにどう対処すれば良いかを学び、見守ってあげるのが大事だと思います。

―そこのあたりは、これを見るとよく解かりますよね。所で監督は、時間と共に、映画の事を話されると共に、お元気になっていかれます。さっきと比べても全然違う。お顔の色まで良くなってきました。
槙坪:有難うございます。こうしてお会いする皆さんからエネルギーを頂いているんでしょう。先日も長野の上映会なのに高熱が出て、本来なら寝てないといけないところを、ひえぴたを張って出かけました。でも講演の頃には元気になったんです。上映会に行くと、色々な皆さんが来て下さるでしょう? 「実は娘の子供が自閉症で…」とかおっしゃる方がいたりと、当事者の方が実に真剣に見て下さる。苦しくても出かけていくと、皆さんからエネルギーを頂けます。これが「共に生きる」ですよね。ありがたいことです。ぜひ大勢の方に御覧頂き、自閉症の事を知っていただきたいと思います。(聞き手:犬塚芳美)

《作品の感想と、インタビュー後記:犬塚》
 <静かに丁寧に、「共に生きる」と言う>思いに行き着くまでの半生をお話下さったので、少し長いのですがそのまま載せる事にしました。女性の生き方としても先駆的な方だと感動です。それにしても、槙坪監督のパワーには驚く。隣の中平悠里助監督に「心配でしょう?」と尋ねると、「体調が悪くても上映会となると無理をして出かける。後押しすればいいものか、病院にお連れしたほうがいいものか、迷うこともあります。でも上映会の後はいつも元気になっているのですよ」と笑いながら答えて下さいました。制作現場もこんな風に乗り切られたのでしょう。
 <2人の自閉症の孫を>、星の国から来た王子様とお姫様と、新鮮な目で例える作家。そんな母の視線に励まされ、大らかに明るく2人を受け止める若い両親。全編をゆとりとユーモアが覆い、何とも温かい作品です。こんな風に生きたいなあと憧れました。
<やっと国民皆保険に進んでいくアメリカですが>、先日の「プレシャス」といい、この作品の自閉症児へのサポート体制といい、弱者への配慮は日本よりずっと進んでいます。弱肉強食の競争社会だけれど、そこからこぼれた人には手厚いサポートをする。どちらが良いかはともかく、日本は中途半端だなあと、社会の仕組みを考えました。


 この作品は、5月22日(土)より第七藝術劇場で上映
      5月22日~28日(金) 12:35~、16:35~
      *22日と23日には監督の舞台挨拶があります。
      その詳細や29日以降の上映スケジュールは劇場まで(06-6302-2073)


*「星の国から孫ふたり~「自閉症」児の贈りもの~」を自主上映しませんか?
  詳細はパオ(03-3327-3150)まで
 
   
  星の国から孫ふたりサイト: http://hoshinokuni-autism.com
  パオ公式サイト: http://www.pao-jp.com
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映画「星の国から孫ふたり」~「自閉症」児の贈りもの~ | 2010年05月15日(Sat) 19:00


 
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