太秦からの映画便り

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映写室「ビルマVJ 消された革命」インタビュー(前編)

映写室「ビルマVJ 消された革命」インタビュー(前編) 
 ―原案・脚本のヤン・クログスガードさんを迎えて―

 2007年9月、ビルマ(ミャンマー)から世界中に衝撃的な映像が届いた。大規模な反政府デモを取材していた、日本人ジャーナリストの長井健司さんが、銃弾に倒れる瞬間の映像だった。この国で何が起こっているのかと、驚愕したものだ。長井さんが死の瞬間まで回していたカメラとその映像は、未だに返されていない。民主化を求めて集まった数十万人の人々は、ビルマはあの後どうなったのだろう? そもそもあの映像はどうして映っていたのか? 喉元を過ぎて何時しか忘れがちなビルマの現状が、ドキュメンタリー映画になって届きました。アジアを拠点に取材を続ける、デンマーク人のヤン・クログスガードさんに、この作品とビルマの現状について伺います。

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(4月23日 大阪にて)

<その前に「ビルマVJ 消された革命」はこんな作品> 
 軍事政権によって外国人ジャーナリストの入国が制限される中、拷問や投獄のリスクを負いながら、情報を発信し続ける人々がいる。ビルマ民主の声のVJ(ビデオジャーナリスト)たちで、ジョシュアもその一人だ。小型ハンディカメラでこっそり撮影された映像は、密かに国外に持ち出され、無償で国際メディアに配信される。自宅軟禁中のアウンサンスーチーさんを訪ねるデモ隊、長井健司さんが撃たれて倒れる瞬間の映像もそうして世界に届いた。身の危険を感じて国外に逃れ、そこから仲間たちに指示を出すジョシュア…。


<ヤン・クログスガードさんインタビュー> 
通訳:秋元由紀さん(ビルマ情報ネットワーク)
―拝見して、大変衝撃を受けました。同じアジアにいながら何も知らないんだなあと、自分に呆れてもいます。ヤンさんはアジアでもう15年も取材をされているそうですが?
ヤン・クログスガードさん(以下敬称略):最近の5年間は確かにアジアに拠点を置いていますが、その前までは行ったり来たりでした。元々はベトナム戦争に興味があったんです。あの戦争が東南アジアの人々にどういう影響を与えてきたのかを調べたくて、アジアに来ました。「ビルマVJ」に出てくる問題は、ビルマの軍政のように、大変残虐な権力が振舞われた結果、人々が人間としての尊厳をどうやって維持していくかの問題だと思っています。私はそのことに大変興味があるのです。大変に屈辱的な状況にある中で、ある日人々がそれに気付いて、何とかしないといけないと考える。この作品にはそこからの行動が映っています。

―危険に身を晒し、知る権利を行使するのですから、確かに勇敢な行動です。カメラがぶれる度にハラハラしました。
ヤン:国民を抑圧するには色々な方法があります。メディアを統制することもその中の一つで、軍政は国民にわざと現状を知らせないという方法を使っていて、VJたちはそれに反抗して、国民に色々なことを知らせようとする活動をしています。抑圧に立ち向かうという意味で、彼らの行動はとても重要です。
―元々これの元になるような作品を、ご自身で作ろうとされたのですよね?
ヤン:ええ、「ビルマVJ」の前に「Burma Manipulated」と言う映画を作りたかったのですが、ある意味で失敗したので、あまり話したくないのです。ビルマについて、新しい語り方をすることが出来なかった。この映画を作る時、編集者にアプローチしても、「アウンサンスーチーさんが何か新しい事を言ったのでなければ、関わりたくない」と言われました。つまり、その時の私の企画には、誰も興味を持ってくれなかったんです。この失敗で、ビルマの映画を作るには、何か新しい角度から描くことが必要だと気付きました。そうした時に、ビルマ民主の声がBBCでテレビ放送を始めました。それまではラジオだったけれど、映像も流し始めたんです。BBCのテレビ放送を通じて、ビルマ国民が始めて、国の検閲を受けない、言いたい事を言い、伝えたい事を伝える映像を、国内で見ることが出来るようになりました。初めて国営テレビ以外のテレビ放送を見ることが出来たわけです。これの意義は大きくて、VJたちは、ビルマ国民に対して、現実を見る新しい窓を作ったと思っています。

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©2008 Magic Hour Films

―2005年に始めて放映された時、政府はどのように対応したのでしょうか?
ヤン:開始当時から禁止されています。BBCの放送を見るのは違法なのです。見ているのが見つかると逮捕されます。ただ、衛星経由なので、軍政がそれを遮断することは出来ません。だから対抗策として、国営放送にもう1つチャンネルを増やし、中国や韓国のテレビドラマを、24時間放映し始めました。どうしても見てしまいますから、その間はBBC放送を見られないという訳です。(笑)
―ビルマ政府のやっていることがここまで酷いと思わなかったので、これを見て驚きました。映画では表現できないような、この映像以上の事も起こっているのでしょうか?
ヤン:もちろん映画に出てこない大変な事は一杯あります。情報統制がひどいと話しましたが、ビルマでは、会社とか組織ならいいのですが、個人でインターネットにアクセスする事は出来ません。インターネットカフェに行けば、使えることは使えるけれど、そこでも自由に閲覧することは出来ません。たまにインターネットカフェに、抜き打ちで捜査が入り、使っている人は止めないといけないし、何が映っているか、それまで何を閲覧していたかの履歴をチェックされます。政府に批判的な記事を見ていたり、ブログで書いていた場合は、大変なことになります。ひどいときには40~50年の禁固刑を受けたりします。「母」と言う意味のビルマ語「アウンサン」という言葉も、詩とかで使ってはいけない。と言うのも、「アウンサンスーチーさん」を連想するからです。赤ちゃんが初めて発する言葉かもしれない単語を使ってはいけないのです。それから、VJに所属する若い女性記者がお坊さんにインタビューするところを見つかって、逮捕され27年の禁固刑を受けました。

―酷いですね。もっと抗議すればいいのに、それにもかかわらず、軍政が続くのは情報統治のせいが大きいのでしょうか?
ヤン:確かに情報統治は軍政が続く理由の一つだと思います。もう一つが際限のない暴力です。国民に知らせない事が沢山ある。国民は嘘と知りながら、他に入ってくる情報がないので流されてしまうのです。国営メディアが嘘ばかりだというのは国民も知っている。じゃあ何が本当かと言えば、それも知らないのです。ビルマには、今、軍以外のエリートがいない。知識階級がほとんどいないので、変革を起こそうにも、まず知らないと始まらない。 

―知識がない状態だから続くと? 知識階級を作らないために、情報を与えないと? ビルマには大学はないのですか?
ヤン:大学はあります。でも大学に行き着くまでに、3年おきくらいに物凄く難しい試験があって、それを通らないと進級できない。それを落ちて再度受けるにも、3回までしか受けれないのです。何処かで3年のリミットを越えると、そこで学校が続けられなくなる。上に行けないよう、振り落とすシステムになっているのです。又大学も、あるにはあるけれどよく閉鎖される。抵抗勢力が出てくると、1学期丸ごととか閉鎖されてしまいます。閉鎖されなくても教育のレベルはとても低い。1学期に1冊しか本を読まないとか、その1冊も凄く古かったりです。もっともこれは一般人の大学の話で、軍の関係者には彼らだけが行く大学があるのです。だから軍関係者は知識もあるし武力も持っている。大学だけでなく、彼ら専用の病院もあるしお店もある。高官になると、病気になったらシンガポールの病院に入ったりも出来るのです。そういう風にして、軍人が国家の中の骨格を作っています。

―軍に入ることって凄いエリートですか?
ヤン:軍に入ることがエリートなのではなく、軍そのものがエリートなのです。ビルマには実業家もいますが、軍と親しくて政商のようなもの。中流階級はほとんどいません。少しはいるのですが、VJたちはたいていそこの出身です。ほん一握りの中に属し、一定の教育を受けたもので、視野の広い人たちがVJになるのです。
―国内に外国人はいますか? 取材しようにも東洋人の中でヤンさんは目立つのではと?
ヤン:多くはいませんがいることはいます。ほとんどが中国人で、中国はビルマの地下資源を狙っていて、政府をサポートしているから、その関係もあるのでしょう。私がビルマに入るときは観光客としてです。でもこの映画が出来た後は、目を付けられてもう無理ですが。

―観光客がカメラを回すのは大丈夫なのですか?
ヤン:普通の人が持っているようなカメラなら大丈夫ですが、プロが持っているような大きなものは駄目です。ただ、ものによっては撮ってはいけない。軍人とかは駄目だし、橋とかの戦略的に重要なものは駄目です。それと基本的には撮れるんですが、空港でチェックされ取り上げられる可能性もあります。撮影の他に、人と話すことも難しいのです。インタビューに答えてくれる人はなかなかいません。質問しても皆凄く怖がります。BBC以外にも、ビルマ国内向けにラジオ放送しているところは沢山ありますが、放送用に誰かにコメントを求め、答えているのが見つかって処罰されるということがありました。(聞き手:犬塚芳美)
<続きは明日>

この作品は、6月5日から第七芸術劇場、
      順次京都シネマ、神戸アートビレッジセンター にて公開
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