太秦からの映画便り

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映写室 新NO.50 17歳の肖像

映写室 新NO.50 17歳の肖像
 -私を変えた男-

 <少女は少しずつ大人になる>わけではない。何かをきっかけに突然大人の世界に足を踏み入れて行くものだ。そんな水先案内人を、ミステリアスな年上の男性が果たしてくれたらどれほどときめく事だろう。男性の側からすると、美しい少女にそんな役目を果たすのは、永遠の夢かもしれない。ここではそんな夢物語が展開する。
 <面白いのは、少女の両親までが>、少女以上にその夢物語に魅せられて、我が子の背中を押す所だ。少女と両親の高揚感と、外から見たその危なっかしさ。まるで「マイフェアレディ」のような華麗な展開も、少し醒めた目で見ると別の側面が見える。両方に感情移入しながら、60年代のイギリスの風物詩も楽しんだ。清楚な制服姿と60年代ファッションを着こなし分けて、その初々しさでオードリー・へプバーンの再来とまで言われる新星キャリー・マリガン、彼女の魅力を堪能する作品でもあります。

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<舞台は1961年のロンドン>
 高校生のジェニーは、雨宿りをしていて、「君のチェロが心配だ。チェロだけ載せるから車の横を歩いて」と、高級車に乗る男性、デイヴィッドから声をかけられる。彼の紳士的な態度とウエットに富んだ会話に魅せられ、気がつくとジェニーは助手席に坐っていた。数日後、町で偶然デイヴィッドを見かけるジェニー、声をかけると今度は音楽会と夕食に誘われる。問題は彼女のオックスフォード進学だけを夢見る堅物の両親だった。でもデイヴィッドの巧みな話術で両親は陥落、後には1泊旅行まで承諾する。


 <こんなシチュエーションで誘われて>、ときめかない少女がいるだろうか?あの雨の日に、ジェニーは魔法にかかってしまったのだ。フランスや大人の世界に憧れながらも、堅実で知的な高校生活を送っていたジェニーが、異次元に踏み込んでいく様が、彼女のときめきと一緒に描かれる。
 <楽しいのは>、少女ファッション一辺倒だったジェニーが、背伸びして、少しずつ大人のファッションを着こなしていく過程だ。しかもスタイリッシュな60年代のそれだから嬉しい。野暮ったい制服が何より素敵と思うのは大人世代の感覚で、少女にとっては大人のドレスは憧れの世界。着る物によって見えてくる世界まで違ってくる。そこは賢いジェニーのこと、知性を忍ばせて、階段を上がるように、一歩一歩その世界をものにしていく。高価な服で新しい世界に時めく少女、高揚感が手に取るように伝わってきた。

 <と言っても、ジェニーが得意そうな分だけ>、観客の方は何とも惜しい。もう取り返せないピュアな世界を、こんな中年男に汚されてとハラハラするのは老婆心と言うもの。少女の危うさ、大人の世界への憧れ、普通だったら戸惑いながら少しずつの所を、劇的に越えてしまう少女の物語だ。
 <ファニーフェイスを気にしていた>22歳のキャリー・マリガンが16歳の少女になって、両方のファッションを素敵に着こなし、繊細な心の内を表現する。16歳の初々しさに22歳の郷愁が加わっているのが、これほどジェニーを魅力的にしている由縁かも。

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 <こんな奇跡のようなことが>起こるのだと思っていたら、現代版「マイフェアレディ」はここからが凄い。悪い叔父さんは仮面をかぶってやって来る。ありえない現実をなし崩しに受け入れる主人公にハラハラしながら、観客の目が覚まされる。ジェニー駄目よ、戻ってきてと思っても、もう少女は毒薬に口をつけてしまった。
 <デイヴィッドを演じるのは>、瞳に曲者の影が消えない、ピーター・サースガード。何とも魅力的なはずのこの中年男に、最初から観客の警戒心が芽生えるのは、彼のせいだ。でもいつもは嫌いな彼に、今回だけは感情移入してしまう。平凡な家庭を持ちながら、いつも恋愛沙汰を起こす男。それでも妻が逃げ出さず、又新しい恋人も見つける男のだらしなさとその可愛さの両方が垣間見える。デイヴィッド自体が夢を生きる男。彼に夢を託したはずのジェニーだけれど、彼が夢を託したのはジェニーだったのだ。彼もまた人生の最初で躓き、現実ではなく、夢の中で再生を繰り替えした男だと思う

 <ところで、デイヴィッドとの出会いに一番浮かれたのは>、両親だったかもしれない。ビートルズ誕生前夜のロンドン郊外、保守的ではあっても、このまま進んでは何も変化のない生活に一番苛立っていたのは、もう子供にしか未来を託せない大人世代だった。まるで、娘のロストバージンの背中を押すような両親、自分たちが見れなかった世界をオックスフォード進学と言う形で娘に託し、今度は娘をさらおうとする異次元の男に託してしまう。ハラハラするけれど、現実だってこんなものかも。

 <この物語が素晴らしいのはこの後だ> ジェニーは泣き叫んだ後で、自ら立ち直っていく。この出会いを封印して人生をやり直せる賢さがあった。夢のような出会い、奈落のそこへ突き落とされた現実、両方を自分の成長物語ととらえるシニカルな視点が素晴らしいと思ったら、この作品は、イギリスで人気の辛口ジャーナリスト、リン・バーハーが雑誌に書いた回想録が基になっている。
 この出会いが彼女を生んだのか、彼女だからこの出会いを呼び込んだのか、私は後者に思えた。(犬塚芳美)

この作品は、5月8日(土)よりTOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズ二条、
      後日シネ・リーブル神戸にて上映
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