太秦からの映画便り

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映写室 インタビュー「平成ジレンマ」(後編)~戸塚ヨットスクールの現在~

映写室 インタビュー「平成ジレンマ」(後編)~戸塚ヨットスクールの現在~
―戸塚ヨットスクール校長 戸塚宏氏・斉藤潤一監督・阿武野勝彦プロデューサーインタビュー―

<続き>
―でも体罰は禁止された。ヨットスクールの歴史は、教育界のそういう流れと戦い続けた30年とも言えますね。
戸塚:そうです。体罰が何故悪なのか? 体罰と暴力を一緒にするような者に論じる資格は無い。人格を尊重してと言うでしょう?人間は生まれたときから完成品であると言う誤解を持っているんです。生まれた時から人間としての自由や尊厳があるはずが無い。自分、人格は作るものであると言うのを解かっていないんです。今教育は難しい。子供をどう育てたらいいかわからず、親は必死です。僕が講演するとそんな親たちが駆けつけてくる。教育者は来ません。PTAからの講演依頼はもの凄く多いけれど、教育委員会からクレームが入って、必ず直前にキャンセルになる。

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(2月28日 大阪にて)

―う~ん。
戸塚:僕は懲役6年の実刑を受けたけれど冤罪です。傷害致死という罪状ですが、これは犯意が無いと成り立たない。外傷性ショック死と言うけれど、解剖もされてないから、死因が証明されていないんです。マスコミの後押しで罪人にされたけれど、マスコミは反権力なんだから、個人に刃を向けずに、裁判をもっとしっかりやれと後押ししてくれなくては。
斉藤:取材をしてみて、「戸塚ヨットスクール」をバッシングしながら、それに変わるものを生み出していない。プロデューサーがつけた「平成ジレンマ」という題名にも繋がるんですが、そこに私たちのジレンマがあると感じました。

戸塚:行動するには不快感が必要なんです。嫉妬と言うのは善なんです。自分が嫉妬を起こした時はその行方を追えばいい。嫉妬の目的は進歩です。もちろんそれには努力が必要ですが、怒りで行動していると進歩します。ところが今の子供は、怒りを恐怖に変えて逃げる。自分が進歩しないで人のせいにするんです。今の教育は、動物だったらとっくに死んでいる、自分では生きる力の無い人間を、助けて生かしているんです。
―自傷行為のある方を預かっていますね?
戸塚:手首に一杯リストカットの痕がありましたね。あれは本気ではなく脅しです。死ぬつもりのあるやつは、どんな事をしても止められない。だけど、面倒でそんなもん何処も預かってくれない。切羽詰った親御さんを見て、うちで引き受けざるを得なかった。うちに来るのはそんな子供ばかりです。直ぐに亡くなりますが、あれは本当に死ぬつもりではなかった。脅すつもりでやったら、間違えて本当に死んでしまったんだと思います。

―お母様が感謝しスクールでお葬式をしてますものね。ところで、古い映像が入っていますね。
斉藤:ええ、「戸塚ヨットスクール」が僕らの取材エリアの中で、当時の映像が沢山あるのも、このドキュメンタリーを作る大きな動機になりました。テレビ局なので、先輩たちの撮ってきた映像が自由に使える。組織であることの大きなメリットです。今、テレビの放送枠の中からドキュメンタリーが消えつつある。でも、悲観ばかりをしなくてもいい。テレビ局は、自分たちが持っている映像をこんな風に使えると気付いて、可能性が広がりました。
阿武野勝彦プロデューサー(以下敬称略):その映像の中に、当時は取材の仕方も知らないような、おばかな自分が現地レポートをする姿が映っていて、それもこの作品を作る大きな動機になったと思います。
―当時、撮影された方々は、このドキュメンタリーを見てどんな反応を?
阿武野:時間がたっているので、退職されたりしていますが、皆さん好意的に見てくださったようです。新聞の方が、「戸塚ヨットスクールは昔と変わってないなあ」と感慨深げに言われたのが印象的でした。そんな具合に、当時取材に関わった方は、積極的に見てくださっていますが、一般的にはこの作品、客層が若いんです。先行上映の東京・名古屋では、若い人からの反響が大きい。「戸塚ヨットスクール事件」を知っているのは、30代以降なのに、上智大の試写でも、反応がよかった。若い人からの反響に驚いています。

―色眼鏡をかけずに見れるというか。「戸塚ヨットスクール事件」を知らないからこそ、かえって新鮮な気持ちで見れるのかもしれませんね。
斉藤・阿武野:ええ。
戸塚:若い人たちは将来に不安を持っている。皆が、自分たちに未来があるのだろうかと、思っているのですよ。
―時代のせいでしょうか?
戸塚:今の若者は、チヤホヤされるばかりで、小さい頃に体罰を受けていない。小さい頃に体罰の経験があれば、大きくなってからでも、もっと小さい何かをすれば、言うことを聞くが、それが無いから言うことを聞かない。子供は驕慢なんです。実体が無いのに何者かであるかのように驕り自惚れている。驕の部分を壊してやらないといけない。すれを小さい頃にやっておけばいいけど、そんな経験の無い今の子供は、甘えん坊ですぐに人のせいにする。全部自分の責任だと言うところまで責めていかないと、解らない。進歩しようと思ったら、自分は駄目だと思わないと駄目なんです。

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©東海テレビ

―甘えん坊を鍛えてそう思わせるのは、大変な仕事です。スクールを卒業しても又舞い戻ってくる訓練生が多いですね。戸塚校長のお顔に複雑な陰が浮かんでいました。
戸塚:多いね。卒業したからと言って安心できない。何時まで見守ればいいのか、難しいです。子供の頃にやらないといけなかったことを、今頃やってもなかなか効果が出ない。
斉藤:再入所のシーンは映画化にあたり付け加えたところです。テレビでは時間の関係とかで削らざるを得なかったけれど、入れました。劇場公開に当っては、テレビの制限を広げ、映画の可能性にかけたところがあります。後、波とか雲とか、情景を映して余韻を残しました。
―日曜の午後1時といういい時間帯で放送しながら、映画化したわけは?
阿武野:もちろん反響が凄かったからですが、僕らの在籍する東海テレビは、3県で1200万人、5パーセントの視聴率でも60万人が見る計算になります。映画の現状を見ると、全国展開をするとはいっても、この作品、1万人に見てもらうのも厳しいでしょう。数字的にはそんな風ですが、数字の面だけではない、能動的なお客さんに届くのではないかと期待しています。ローカル局なので地域が限定されたのも残念。全国の映画館にかけ、多くの人に観て欲しいと思っています。
―映画化の手応えは?
阿武野:北海道や沖縄と、この作品を手渡せる場所が順調に広がっているのが嬉しいです。昨日も4館からかけるというお返事を頂きました。先行した東京の「ポレポレ中野」が入っているので、映画館の反応がいいのです。多くの世代に見て欲しいけれど、特に子育てをしている世代には見ていただきたいと思います。(聞き手:犬塚芳美)

<作品の感想とインタビュー後記>
 戸塚校長の確たる教育理念が熱く語られました。誤解を招きかねない過激な言葉も、穏やかな顔で話されます。その横で、少し戸惑い勝ちにじっと耳を傾ける斉藤潤一監督と阿武野勝彦プロデューサー。映画と同じように、戸塚校長の言葉に解説や感情移入はありませんでした。この製作者コンビ、良質な司法ドキュメンタリーをたくさん作っています。この企画の一端は、そんなところから派生したのかも。


この作品は、第七藝術劇場(06-6302-2073)で上映中。時間等は劇場へ。
   4月9日神戸アートビレッジセンター、
5月京都シネマ にて公開


又、この作品の公開にあわせ、「東海テレビドキュメンタリー傑作選」と題して、4月2日(土)より8日(金)の間、第七藝術劇場(06-6302-2073)で毎日11:55分より12:50分まで、上映があります。料金は当日のみ1000円均一。

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