太秦からの映画便り

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映写室 「ショージとタカオ」井出洋子監督インタビュー(前編)

映写室 「ショージとタカオ」井出洋子監督インタビュー(前編)     
―無実の罪に問われた布川事件の二人―

 <「ショージとタカオ」とは>、桜井昌司さんと杉山卓男さんのこと。1967年に起きたいわゆる布川事件で、強盗殺人犯として無期懲役の刑に服したこの二人は、29年間獄中にありながら、無実を主張し続けましたが、長年認められず、再審請求が認められたのは、仮釈放された後の2009年9月です。翌年から再審公判が開始され、東北大震災の影響で、3月16日から延び延びになっていた判決が出たのが、今から約1ヶ月前の5月24日。予想通り無罪判決が言い渡されただけでなく、後日検察が控訴を断念して、二人は無罪が確定しました。重い荷物を背負ったこの間、実に43年以上になります。
 <この作品は>、そんな二人を、1996年の仮釈放のその瞬間から再審請求が通った14年後までを追ったもの。冤罪と言う重いテーマを根底に秘めながら、カメラは「フツーのおじさんになりたかった!」と言う、明るくメゲナイ二人を、時にはユーモラスにさえ捕らえていきます。企業PR等を中心に活躍する井出洋子監督が、偶然彼らを知り、日々の仕事の傍ら自主制作したもの。作品等についてお話を伺いました。

<その前に「布川事件」とは>
 1967年8月茨城県の布川で一人暮らしの大工の男性が殺された。警察は二人組みの男の犯行と推定し捜査を進める。10月に別件逮捕された桜井昌司さんと杉山卓男さんが、厳しい取り調べで自白を強要され、殺害と10万円を奪ったと自白。裁判では一転して二人とも無実を主張するが、1978年に最高裁で無期懲役が確定。83年獄中から再審請求をしたが92年に最高裁が棄却。96年に仮釈放された後も再審請求し2009年に再審が決定。2011年5月24日に無罪判決が出た。


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<井出洋子監督インタビュー>
―158分と長いのですが、ユーモラスな二人を追ってあっという間に時間が過ぎました。楽しかったです。井出監督は企業PR等、商業ペースの世界で長い経験がおありなので、観客を引っ張っていくコツをお持ちなのだなあと、思いました。
井出洋子監督(以下敬称略):ありがとうございます。ネット等を見ると監督は素人らしいとか色々言われるのですが、カメラは素人でも編集の方は長年の経験があるんだよと。(笑い)カメラも仮釈放の時は自分一人でしたが、東京高裁の時は2台体制で、私もカメラを持っていたけれど、プロのカメラマンにも撮ってもらったんです。さすがにきれいに撮ってくれたんですが、編集段階で、私の撮ったごちゃごちゃした感じの方が臨場感があって良いと思い、あえて未熟な私の映像を使ったりしています。経験があるとはいえ、あまり技を使わず、シンプルに作りました。

―そこら辺りの思い切り方がプロだなあと。切り口にしても、冤罪事件と言う重いものを、あえて正面から撮らず、冤罪に巻き込まれた二人の人間性に迫ると言う別の切り口から捉えていて、映画っぽくて良いなあと思いました。そんな視点は何時ごろから?
井出:最初から狙ったと言うより、二人を見ていて自然にそうなっていきました。二人は本当にユニークで楽しい。根底にペーソスとユーモアがあるんです。それに惹かれましたね。

―めげずに明るい、普通感覚の素敵な二人ですよね。長い間刑務所に入っていると、例え冤罪だとしても、表情が荒んでくるものです。この二人を見ているとそれがない。本当に普通のおじさんです。どれほどの精神力で鬱積する思いを跳ね除けてきたのでしょう。あっけらかんとした様子からも、無実を信じられました。
井出:それはそうなんですが、私は法の人ではないので、冤罪かどうかを判断する立場にはありません。それをするのは裁判所ですから。だからこの作品も、冤罪だと声高に叫んではいないのです。私も二人の支援組織には入っていませんしね。ただ二人を長く追っている間に、自然と無罪を訴えるビラを一緒になって配ったりはしましたが。(笑い)

―「この二人を無期懲役にしてしまった自分の責任として、ずっと二人を支援し続ける」と仰る弁護士さんがおられて、その言葉に心打たれました。弁護士としての究極の誠意ですよね。二人は支援してくださる周りの人にも恵まれたと思います。
井出:ええ、あの方が弁護団の団長です。以前は世間の関心も薄かったのですが、今は人々の関心も高まり弁護団も大きくなってきました。14年前の仮釈放の時など、報道の人は全くいなくて、支援者以外でカメラを向けていたのは私一人でした。あのシーンが二人との初対面です。出会って早速質問していますが。
―そうだったんですか。紫のネクタイをしたショージさんとダークスーツを今風に着こなしたタカオさん、二人とも久しぶりの世間を意識しておめかししていたのに…。だったら井出監督のこれが貴重な記録映像になりましたね。それにしても20歳からの29年間が獄中とは残酷です。一番楽しいはずの青春時代を奪い取られたことになる。時代の変化も早い頃でした。痛ましい限りです。出所したばかりで自動券売機が解からなかったり、テレホンカードに戸惑う姿に胸が締め付けられました。この二人だからこそのり切れたけれど、普通の人だったら潰されてしまう。司法は本当に惨い事をしましたね。
井出:あのネクタイは支援者からプレゼントされたもののようです。29年というのは本当に長いです。時代が変わってしまう。ショージさんの家は廃屋のようになってましたしね。無罪を知ることも無く亡くなったタカオさんのお父さんとか、二人以外への影響も色々あります。

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―そんな思いを根底に沈めて、二人は明るく失われた時間を取り戻していく。就職し、結婚し、子供をつくりと、どんどん普通の暮らしを取り戻しますね。驚きです。大変なことも多いだろうに、めげないバイタリティーと行動力に感動しました。そんな二人のフットワークの軽さにぴったりの「ショージとタカオ」というカタカナ表記の題名ですが、これは何時ごろ?
井出:題名は、作っている間に劇場で公開したいと思いだし、若い人に受けるにはどうしたら良いかと常に考えていたんです。で、結局こうなりましたが、元々この二人は支援者たちからそう呼ばれていたんですね。この作品は、冤罪事件を追うというより、この二人の生き方を描いた映画なので、これがいいかと。又この二人が対照的なんですよ。180センチと背が高いタカオと、小柄なショージ。ショージさんはお喋りだしタカオさんは無口。着る物に無頓着なショージさんとお洒落なタカオさん。全てがこんな調子です。性格も違うから最初は反目しあっていたのだけれど、いつの間にかお互いが支えになりだしたのでしょう。映像にも映りますがおびただしい数の往復書簡があります。(聞き手:犬塚芳美)
                  <続きは明日>

この作品は、6月25日(土)~7月15日、第七藝術劇場で上映。
          29日(水)には桜井昌司さんのトークショーあり。
          上映時間等と共に、詳細は劇場まで(06-6302-2073)

     又、7月2日(土)~7月22日、京都みなみ会館
       7月9日~7月15日、神戸アートビレッジセンターで上映
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