太秦からの映画便り

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映写室 「ショージとタカオ」井出洋子監督インタビュー(後編)

映写室 「ショージとタカオ」井出洋子監督インタビュー(後編)     
―布川事件の二人の仮釈放からの日々―

<昨日の続き>
―確かにタカオさんはお洒落ですね。ラフな格好も素敵だし、白いパンツにTシャツと代え上着のクールビス姿など、おじ世代のモデルさんのようで様になっています。
井出:それを聞いたら喜びますよ。刑務所の中で長い間お仕着せを着せられていたので、タカオさんは特に普通のスーツを嫌います。着るものくらい自由に選びたいようですね。
―服を選ぶこともシャバに出れた喜び、自由の象徴なのですね。ところで、仮釈放で出て来た時の、二人の嬉しそうな笑顔が忘れられません。作中にあるその後の映像だけでなく、24日の無罪判決の後の記者会見の映像がテレビでずいぶん流れましたが、それでもあれ以上の笑顔は見れなかった。やっぱり世間の風は冷たかったのでしょうか? 勿論年齢的なこともありますが、それが気になります。
宣伝:タカオさんは長い間仕事も決まらなかったですしね。

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井出:20歳から29年間、9年間は拘置所の中ですが、14年過ごした刑務所の中はある意味で二人の青春だったのでしょう。刑務所の中のことを聞くと二人とも生き生きと話してくれます。タカオさんは六法全書や裁判資料を取り寄せ、必死で勉強していますし、ショージさんは刑務所の中で靴を作っていたんですが、こうなったら誰にも負けない靴を作ろうと頑張ったようです。そんな風に世間と遮断されて目の前のことだけを見て過ごした刑務所の中と違い、外に出ると生活の全てが自分の肩にかかってくる。この二人は実際にあってみると凄く癖があるんですが、支援者に支えてもらわないとやっていけない。なのにあくが強くて、支援者とギクシャクしたこともありましたから。そんなストレスもあったかもしれません。あの個性だからこそ、29年間曲げないで無実を主張し続けたんですけどね。無罪が確定するまでの仮釈放の14年間は、二人とも本当に行動が慎重でした。何かあると仮釈放は取り消されますから。例えば人がほとんど通らないようなところでも、赤信号では必ず止まるとか、些細なことでも法律違反をしないように、細心の注意を払っていました。やっぱり大変なことなんですよ。

―そうなんですか、自由を奪われた日々の辛さ、又奪われることへの恐れが伺えますね。
井出:そういう事が表情にも出ているのかもしれません。ただ、ご覧になったという無罪判決が出た段階では、まだ神妙な顔をしていましたが、東京高裁が控訴を断念して、無罪が確定した時は二人とも満面の笑顔で、本当に嬉しそうでしたよ。この瞬間に初めて本当の意味で無罪になるんですから。
―なるほど。ところで映像の中でショージさんが刑務所の中で働いたお金だと言って、100万円の束をポケットに入れますが、勿論あれは貰ったお金の一部ですよね? 29年間も働いたんですから。
井出:いえ、一部と言ってもほとんど全額です。29年と言っても拘置所の中では働けなくて、刑務所に移ってからですが、それでも19年あるけれど、食費等は引かれるし本当に安いようです。あのお金が29年間の賃金のほぼ全てなんですよ。

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―酷い話ですね。貨幣価値だって変わってくるというのに。
井出:二人のキャラクターでこの作品は明るいタッチですが、根底には理不尽に奪われた29年間があります。50歳を過ぎてから人生をやり直す事の大変さ、無罪を勝ち取るまでにどれほどの事があったのか。普通のおじさんになる為にこの二人がどれほどのことをしてきたのかを皆さんに考えていただきたいのです。映像の中にもありますが40年以上経った今でも、未だに取り調べの時の記憶が拭えないのですから。警察、検察、裁判所と関わった全てが重く責任を感じて欲しいですよね。たまたま布川事件の二人はこうして無実を証明することが出来たけれど、誰もがこんな風に強いわけではない。罪を翻せないままの冤罪事件は小さいものも含めると沢山あると聞きます。今や知らない人が多いのですが、「疑わしきは罰せず」という法の原則を思い出して欲しいのです。(聞き手:犬塚芳美)


この作品は、6月25日(土)~7月15日、第七藝術劇場で上映。
      29日(水)には桜井昌司さんのトークショーあり。
      上映時間等と共に、詳細は劇場まで(06-6302-2073)

    又、7月2日(土)~7月22日、京都みなみ会館
      7月9日~7月15日、神戸アートビレッジセンターで上映
 
  
≪インタビュー後記:犬塚≫ 
 <井出監督自身のナレーションで>、わかり易く物語が進行します。さわやかな語り口に、どんな方かと想像したら、親しみやすい監督で感激しました。この人当たりのよさで「ショージとタカオ」の二人も、心を開いて色々なことを話したのでしょう。監督は支援団体には入っていないと言いますが、カメラに記録されるということが、もしかすると二人にとって何よりの支援、応援だったかもしれません。落ち込みそうなときも、カメラに励まされて、いつものめげない自分を取り戻せたのでは。
 <この後、国家損害賠償>をおこすそうですが、今まで一度も認められていないのだとか。だとしたら奪われた時間は一体誰の責任なのでしょう。謝るべきは謝って、償えるものは償って欲しいものです。又、この事件も自分が殺ったという二人の自白が無期懲役という有罪判決をもたらしたのですが、その自白がどんな状況下で行われたか、取り調べの全課程の可視化の重要性を感じます。
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| | 2011年07月29日(Fri)00:26 [EDIT]


 

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