太秦からの映画便り

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映写室「沈黙の春を生きて」坂田雅子監督インタビュー(後編)

映写室「沈黙の春を生きて」坂田雅子監督インタビュー(後編)
   ―ベトナム帰還兵とベトナムの人々に共通する障害―

<昨日の続き>
―アメリカ政府は責任を認めていないのですか?
坂田:ベトナムの被害者で言うと、先に訴えが棄却されたと言ったように、薬品会社は責任を認めていません。あれは国策で国に命じられてやったことだから責任はないと言っています。国は国で、人間に危害を加えるつもりはなく、食物を枯らすのが目的だった。だから責任がないと、同じように認めていません。ベトナムとアメリカの関係も複雑で、ベトナム政府はアメリカと仲良くしたいので、あまり揉めるのも困るわけです。曖昧にことを勧めて、経済援助等を引き出したい。だから、解かっていてもそれ以上は言わない。ただベトナムは、枯葉剤の被害者と言うことではなく、障害者と言うくくりで、被害者に経済的な援助をしています。アメリカのほうも、国は認めないけれど、民間団体が人道的な援助と言う形で、ベトナム支援をしています。アメリカ国内の被害者については、一種類の障害に対してだけは枯葉剤の影響が認められています。それは脊髄分離症と言う、脊髄が二つに分かれる先天的な疾患で、しかも母親が従軍した場合にのみ認められています。10ヶ月間身篭ったり授乳をする母体のほうが、子供への影響が大きいと言うことのようですが、280万の男性兵士に対して、6千人の女性兵士についてだけ認めているわけです。男性兵士に広げると、膨大過ぎて収拾が付かない、保障が出来ないのでしょう。ここに登場する被害者は、皆父親が従軍したケースですが。

―酷いですね。
坂田:1965年に動物実験で奇形を生じるとわかったんですが、それを政府は70年になるまで隠してもいます。言い訳は動物で障害が認められただけで、人間で認められたわけではないと言うものでした。何かと言うと動物実験をするくせに、都合の悪い時は、動物と人間は違うと言うわけです。
―本当に酷い。
坂田:ええ。
―久しぶりに訪ねたベトナムの被害者たちはどうでしたか?以前と変わらず、家族が介護をしていましたが。
坂田:家族制度なので、皆さん家族が支えています。それはそうなんですが、子供たちはどんどん大きくなるけれど、親はどんどん老いていく。面倒を見るのがだんだん大変になってきていました。「どんどん大きくなる」と言う親の言葉に、色々な思いを感じます。見ていても痛々しいほどで。これからどうなるんだろうと思いました。

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―ベトナムやアメリカの被害者を見ると、チェルノブイリの被害者と同じですね。障害がよく似ているのに驚きます。
坂田:そうなんですよ。どちらも遺伝子、DNAが傷を受けた結果です。そう思うと、これはフクシマの事故のあった日本の問題でもあるんです。群馬県に住んでいるんですが、ホットスポットがあっても、除洗とかあまり言わない。言うと変な人扱いをされるほどです。怖いものだから、目を閉じていたらそのうち終わるだろうと、見て見ぬふりを決め込むんですが、でも声を出さないと何も変わらない。放射能の影響は目に見えず、気が付いたときには遅いと言うのを解かってない気がします。枯葉剤と一緒です。同じ視点で言うと、今は遺伝子組み換え食品が気になります。
―そうですね。こちらはわざと遺伝子を操作したわけですが。
坂田:アメリカ社会は日本とは比較にならないほど、利益追求型です。企業は後先考えず利益の為なら何でもする。薬品会社が何故、遺伝子組み換え植物を作ったかと言うと、農薬を撒いても雑草だけが枯れて、植えた物は枯れないようにしたかったわけです。でもそんな遺伝子操作をしたものが、直接だけでなく、食物連鎖で人間の口に入ると思うと、恐ろしい。これこそがレイチェル・カーソンの「沈黙の春」ですから。日本にも以前に有吉さんの「複合汚染」と言う本がありましたが、今こそもっと読まれるべきです。

―ベトナム戦争はずいぶん前の話ですが、放射能も含めた環境問題となると現在進行形ですね。
坂田:そうなんです。遺伝子組み換え食品だけでなく、中東やアフガンで枯葉剤でなくても化学兵器が使われてますし、汚染は止まっていません。目に見えない汚染、恐怖をもっと皆が知るべきですよね。
―いたずらに恐怖心をあおってはいけないけれど、フクシマの皆さんにも見て欲しいですね。
坂田:ええ。ぜひ実態を知って欲しいと思います。ヘザーさんはフクシマに行っています。自分のサイトにたくさんアクセスがあって、どこだろうと思って調べたらフクシマだったと。自分が行かなくてはと思ったそうです。
―ヘザーさんもそのように更なる被害が広がるのを食い止めようと、活動をされていますが、監督も奨学金制度を始められたんですね。
坂田:ええ。出来ることからそれぞれが始めることが大事だと、ささやかですが2010年から「希望の種 奨学金制度」を始めました。まだ20人とほんの少しですが、少しでも助けに成れればと思っています。
―監督のお母様も、30年も前から脱原発を訴えて、情報を発信し続けていたんですね。今の監督の活動も遺伝子のなせる業というか。
坂田:母は原発の危険性を訴え、手作りの新聞の発行とか、色々な事をしていました。年を取ると、誰しも親に似てくるのではないでしょうか。
―前作はご主人の死がきっかけでした。作品も2作目になって、ご主人の死は乗り越えられましたか。
坂田:そうですね。最初は夫の死を疑問に思って始めたことでしたが、それを作ったことで色々な出会いがあり、色々なことに気付かされ、こうして新しい作品も作りました。今回は個人的な思いから、更に社会全体へと視点を広げてもいます。そういう意味では乗り切ったのではないかと思います。(聞き手:犬塚芳美)

<作品の感想とインタビュー後記:犬塚> 
ヘザーさんの知性に圧倒されて、理性的な目で枯葉剤の怖さを体験できます。ベトナムの子供たちの過酷さには、思わず目を伏せたくなる。でも当人や家族は、目をそらせない。障害を引き受けて、生き続けざるをえないのです。ぜひ、散布した張本人たちに見て欲しいと思いました。
 又、これほどの困難の中でもへこたれず、人間的な魅力に溢れ、前向きなヘザーさんを見ると、人間の力の凄さにも驚かされる。まるでサイボーグのように、スチールだけの足を晒して歩くヘザーさん、でも映画が終わって思い浮かべるのは、そんな足の事ではなく、魅力溢れる彼女の表情でした。
 又、前作と続けてみると、社会に目を向けることで、一人の女性がこの間に如何に成長して行ったか、監督自身の変化を気付かせてくれる作品でもあります。


 この作品は、11月26日(土)より、第七藝術劇場(06-6302-2073)で上映
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